WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

元気印のソニー・スティット

2007年01月04日 | 今日の一枚(S-T)

●今日の一枚 110●

Sonny Stitt    

Plays Arrangements From The Pen Of Quincy Jones

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 ソニー・スティットの1955年録音盤『ペン・オブ・クインシー』。全編クインシー・ジョーンズの編曲で、11人の小編成オーケストラをバックにスティットが吹きまくるという趣向である。

 スティットはチャーリー・パーカーのそっくりさんといわれ、パーカー存命中はもっぱらテナーを吹いたりしていたようだ。

 彼のプレイを聴いていていつも感じるのは、元気がいい音だということだ。スウィンギーな曲はもちろん、バラードプレイにおいても圧倒的に元気がいい。われわれ日本人は、バラードというと「陰影感」とか「情感」などというものを求めるのだが、まったく異なる次元のバラードだ。スティットのプレイに情感がないというのではない。われわれ日本人が求めるような陰影に富んだ情感はないということだ。スティットはどこまでもストレートに音を出してゆく。音は概して強く、しっかりとしている。それは原色の油絵を思わせ、日本的な墨絵のような趣は一切ない。

 ① My Funny valentine 、私が知っているこの曲の演奏の中で、最も印象的なものといっても過言ではない。一音目から張りのある、強い、元気な音である。もちろん彼なりの情感をこめた演奏ではあるが、むしろ感じられるのは曖昧さを許さないようなはっきりとした意志だ。論理的な音といってもいい。スムーズなアドリブにすべてをかける彼にとって、もちろん褒め言葉である。

 ソニー・スティット……、元気なバラード……。