おはようヘミングウェイ

インターネット時代の暗夜行路。一灯の前に道はない。足音の後に道ができる。

カポーティとの対話

2007-05-15 | Weblog
トルーマン・カポーティは1984年8月、ロサンゼルスの知人女性宅で死んだ。あと1カ月で60歳の誕生日だった。

「私はアル中である。私はヤク中である。私はホモセクシュアルである。私は天才である」と言い放った米国版破滅型作家だ。6年間を費やし、新しい文学形式を創った長編「冷血」を以前読んだ。その構成と描写、独自の語り口に魅了され、気になる作家の1人となった。

「カポーティとの対話」はロングインタビュー本。急死した年に英語版が刊行され、文藝春秋が1988年に第1刷を出した。92年の第2刷を手にしてここ数日間読んだ。

実に面白い。カポーティ自身が実は最高の作品だと分かる。小説の読み手としての明晰さが同時代作家らへのこき下ろしとなり、自分への批判者への意趣返しとしての子供じみた毒舌が際立つ。へミングウェイもアップダイクも、カミュもサルトルもボーボワールも「自分以下の作家」となる。名声、天才、愛、セックス、書くこと、作家、ハリウッド、ドラッグ、酒、憂鬱について語り、話の中身と口調は読む者を引き付けて離さない。

語る言葉の妙なる面白味を生みだす力こそ、カポーティが一流どころの作家である証となっている。

「私は他の作家と競い合っているとは思ったこともない。なぜなら、私は私の知っているいかなる他の作家とも同じものを書いていないからだ」

―あなたがおっしゃったことは、文学でしょうか?

いや、あれは芸術だよ。

自負に満ち満ちた言葉の小片でさえ、カポーティは読む気にさせてくれる。
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1 コメント

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冷血 (すすむてつろう)
2007-05-15 22:23:22
「冷血」はロバート・ブレイク主演で見ました。「懺悔しなさい」と言われて「なにを懺悔したら良いのかわからない!!」と言ったラストの絞首刑になる前の場面が印象的でした。

「わたし、石塚さんのエッチ好き!! まったりとして乱暴でなくて……」と淫売は言った。(俺、なにやってんだろうな?)と石塚の心が言ったが見てみぬふりをした。(目標を見失ったのだろうか? なにか足りない。うまくやっているほうだと思う。しかし、ほうけてしまったようだ。自分を見失っている? そうかもしれない。地道に暮らせ? そんなこと最初からできない。えぇかっこしぃ? そうかもしれない。キザなやつ? そのとおりだ。べつに悪いことじゃないだろう。自分は自分、なかなかそう思えない。いつも言い訳している。自分に。ま、いっか、まっ、いぃかって。自分に甘く、人には完璧をもとめる。いつか天罰がくだるぞ、王様は裸だ。???)石塚は今夜もひとり。ひとりごちる。「なにかに懺悔したい。でも、なにを? 俺にはわからない」
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