おはようヘミングウェイ

インターネット時代の暗夜行路。一灯の前に道はない。足音の後に道ができる。

下鴨神社 逍遥する春 質

2014-04-01 | Weblog
緑豊かな糺の森の中を南北に走る表参道を北へ歩き進むと、森が途切れて明るい空間が広がる。鳥居が目に入り、背後に神社があることを示している。下鴨神社は正式には賀茂御祖(かもみおや)神社と言う。京都市左京区下鴨泉川町59が所在地である。ちなみに郵便番号は606-0807。数字の並びに秘密めいたものはない。空間の明るさの度合いで言えば、糺の森が陰とすれば、下鴨神社は陽である。その極みは朱塗りの楼門となる。目立ち具合や鮮やかさはひと際なものがあり、大げさに言えば周囲にある社殿もろもろの存在がすっ飛んでしまうぐらいだ。屋根が重厚すぎて頭でっかちの門でなんだか落ち着かない。この第一印象が下鴨神社の最終的な印象ともなる。時を経て、こんな言葉で思い起こすことになるだろう。「たしか朱塗りの頭でっかちの門があった神社だったな」

楼門が派手な分、境内の他の社殿は色合い、大きさともに実に地味である。楼門意外、色合いなんかはっきりと思い起こせない。「木が経年変化した色だったかな」。こんな具合である。本殿は2つ並んでいる。西本殿は賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)を祀っている。古代の京都を拓き、京都の守護神である。東本殿は玉依媛命(たまよりひめのみこと)を祀り、縁結びや安産、子育ての神さまである。両殿とも国宝であるため近くで参拝はできない。少しばかり離れた場所から拝むことになる。近寄りがたいということで有難味も少しばかり離れ気味である。

境内がそれほど広くないために社殿がいくつも詰まっているような印象である。十二支のえとの守護神を祀る干支のお社、神さまの台所である大炊殿、舞殿、細殿、橋殿、参集殿、直会殿、神服殿、供御所、比良木社、みたらし社、古札所、印納社、三井社、葵生殿など、もうなにがどれ殿で、どれがなに殿なのかとなる次第。ちなみに葵生殿は結婚式場である。参拝予定者に言えることは、あちこちで賽銭を上げるためにポケットには小銭をたんまりと詰め込んでおくことだ。

 
境内の社殿巡りにひと区切りをつけて、派手な楼門を再びくぐって外へ出る。糺の森のはずれを歩いていると、河合神社に辿り着いた。下鴨神社の摂社である。鴨長明ゆかりの神社だ。下鴨神社が出している「下鴨神社あれこれ」という案内紙に3行ほどで簡単に触れている。「河合神社の神官にうまれた『方丈記』の著者である鴨長明は、さまざまな事情によりこの重職を継ぐことができませんでした。このことから強い厭世感を抱くようになり、やがて『方丈記』を書くにいたったといわれています」。境内には長明が晩年に過ごしたという4畳半の方丈庵が再現されて公開してある。組み立て式で移動可能の建物である。ほとんど屋台に近い。室内に囲炉裏がある。4畳半の中の囲炉裏。これだけで侘びしくなり、方丈記を書く動機ともなろう。こんな方丈庵に住み続けたら厭世感がぶり返し方丈記の続編、続々編、新編、新々編と何冊も上梓することになるだろう。

糺の森で歩き疲れることはなかったが、下鴨神社では陽ざしを浴び続けていたこともあって歩き疲れてしまった。河合神社境内の休息所でかりん美人水を注文する。下鴨神社で栽培している花梨を使っている。花梨水に蜂蜜かシロップを入れて少し甘くしてある。冷えているので喉越しがいい。長明よ、すまんな。今の気分は方丈記よりかりん美人水の方が最高なんだわ。


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