精神科 医療保護入院  病院任せの強制入院 問題(解説) /読売新聞

2013-06-13 21:43:44 | 社会
2013/06/13 読売(全国) 朝刊 解説面

精神科の強制入院の大半を占める「医療保護入院」の要件を変える精神保健福祉法改正案が13日に国会で成立する見込みだ。
しかし厚生労働省の検討チームがまとめた提言とかけ離れた内容で、安易な強制入院の増加や親族間のトラブルが懸念される。



 精神病や認知症と思われる身内を抱えて困った家族が、本人をなだめすかして病院へ連れていく。
その病院で精神保健指定医の資格を持つ医師が「入院が必要です」と診断し、家族が同意書にサインすれば、本人がいやがっても強制入院になる。
それが医療保護入院の一般的なパターンだ。
 精神科の入院患者は約30万人にのぼる。
その4割強、13万人余りが医療保護入院だ。
しかも近年、認知症の増加を背景に、この方式の入院が増え続けている。
 医療保護入院には多くの問題点が指摘されてきた。
 まず、医師の診断と家族の同意で、公的機関の関与なしに人身の自由を奪う点だ。
病院は入院届と1年ごとの報告を出せばよく、行政は通常、書面審査しか行わない。
 次に、患者の権利擁護の不十分さ。積極的に退院請求の手続きを取らないと第三者の診察・審査はない。
家族が同意を撤回しなければ、なかなか退院できず、長期入院になりがちだ。
 さらに家族の負担。家族の意向で入院を強いることから、本人とあつれきが生じ、治療や社会復帰にマイナスをもたらす。
また入院に同意する家族は法律上の「保護者」になり、治療を受けさせる義務、医師に協力する義務などを負う。

 そこで精神医療福祉の関係者を集めた厚労省の検討チームは、昨年6月、〈1〉保護者の同意を要件としない入院制度にする〈2〉患者本人が、家族や患者仲間、福祉関係者などを「代弁者」に選べるようにする、という方向を打ち出した。

 ところが厚労省が作った改正案は、義務を伴う保護者制度をなくすものの、入院手続きについては「保護者の同意」を「家族等の同意」に変えるだけだ。

 現行法で保護者になるのは、成年後見制度を使っていない場合、配偶者、親権者、民法上の扶養義務者の順で、扶養義務者が複数いる時は家庭裁判所が選任する。
改正案は、その順序をなくし、同じ範囲の誰かが同意すればよいとする。
 強制入院のハードルは今より下がる。配偶者や子が反対しても、きょうだいの同意で可能になる。
親族間の不和や相続が絡むケースが増えるおそれもある。
 一方、患者に「味方」をつける代弁者制度の創設はすっぽり外された。

 検討チームの座長だった町野朔・上智大教授(刑法)ら11人の委員は「私たちのまとめと全く違う」と異例の意見書を出した。
 厚労省は「誰の同意も得ずに入院させてよいのかを検討し、今回の案にした。
代弁者は性格や権限がはっきりしない」と説明する。

 迷走が生じる根本的な原因は、強制入院という人権制限を病院にゆだねているからではないか。
日本精神神経学会は「行政の責任で行うべきだ」とする。
 国連拷問禁止委員会は5月末、強制入院の法手続きの改善、地域サービスの充実で入院患者を減らすことなどを日本に勧告した。
 衆参両院の厚生労働委員会は付帯決議で代弁者、公的責任を含む制度のあり方の早急な検討を求めた。見直しを急がねばならない。


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