ビルマ:不当判決を受けた活動家たちを釈放せよ/ヒューマン・ライツ・ウォッチ

2008-11-14 23:14:23 | 世界
ヒューマン・ライツ・ウォッチのプレスリリースを紹介します。

英語原文は以下の通りです。
Burma: Free Activists Sentenced by Unfair Courts Draconian Laws Invoked Against September 2007 Protestors http://hrw.org/english/docs/2008/11/11/burma20181.htm

ビルマ情報ネットワーク (http://www.burmainfo.org)
箱田徹
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報道発表 ヒューマン・ライツ・ウォッチ www.hrw.org
For Immediate Release/即時解禁

[土井【ヒューマン・ライツ・ウォッチ 東京ディレクター】コメント:14名に
65年の刑に声もない。ビルマの政治囚は約2100名。昨年の弾圧時の2倍だ。2010
年の選挙に向けて活動家一掃をはかる軍政。日本など影響力あるアジアの国々は
特に声をあげるべきだ。]

ビルマ:不当判決を受けた活動家たちを釈放せよ
2007年9月の抗議運動参加者に相次ぐ厳刑

(ニューヨーク、2008年11月11日) - 「ビルマ軍事政権は、2007年9月の抗議デモ
に平和的に参加したことを理由にして、不当な審理を受けている約70人の活動家
への訴追を取下げ、釈放すべきである。」ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日
このように述べた。ラングーンの悪名高いインセイン刑務所内にある法廷は、本
日、このうち14人に65年の刑を宣告した。

ビルマ政府はこの2週間で、反対政党・国民民主連盟(NLD)の党員と、88世代学生
グループ(88GS)所属の反体制活動家に対する裁判手続を進行させた。2007年8月~
9月の反政府運動に参加した政治活動家、僧侶、尼僧(女性修行者)、ジャーナリ
ストなど70人以上に対し、一部には刑務所内の秘密法廷で非公開裁判が進行中で
あり、残りの人びとにはきわめて短期間のうちにこうした審理が行われ、すでに
有罪判決が下された。

「ビルマ軍政幹部が法を尊重しないのは誰でも知っていることだが、ここ数週間
は、国民全体を脅すという明らかな意図のもとで、より集中度の高い弾圧が行わ
れている。裁判にかけられている非暴力活動家たちは、そもそも訴追されるべき
ではないが、不当な裁判によって長期刑を宣告されるべきでないのは言うまでも
ない。」 ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理エレーン・ピアソン
はこのように述べた。

被告人の家族は裁判を傍聴することができないことが多い。また弁護士を立てる
こと自体を却下されるケースもある。また政治活動家の弁護についた弁護士4人
は、依頼人の要求に従って代理人を辞任したり、不当な審理に抗議したりしたた
めに、法廷を侮辱したとして有罪判決を受けている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「政治活動家の訴追が増えていることは、ビ
ルマ軍政指導部が、2010年の複数政党制に基づく総選挙の準備をにらんで、基本
的権利の侵害をこれまで以上に強めていることをはっきりと示すものだ。」と述
べた。反政府政党の党員や政治活動家たちは、表現の自由や平和的なデモ行進、
組織の結成、無許可の外貨所持を犯罪行為とする時代遅れの法律によって刑を宣
告されている。

「軍政指導部は、見せかけの政治改革を次の段階に進める前に、活動家を一掃し
ようとしている。活動家の代理人を務める弁護士を訴追することからうかがえる
のは、裁判ではあらゆる不確定要素を排除しておこうという軍政指導部の意図で
ある。」 ピアソンはこのように述べた。

今回の一連の裁判では少なくとも3人のジャーナリストが有罪判決を受けた。う
ち1人は著名なブロガーのネーポンラッで、2007年9月の抗議運動の模様を報じた
として2008年11月10日に20年の刑を宣告された。残りの2人は汚職事件を報道し
た記者で、共に3カ月の刑を宣告された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはアジア地域(特に中国、インド、東南アジア諸
国連合(ASEAN))に対し、ビルマ政府に対して、政治活動家や弁護士、その他の
表現・結社・平和的な集会の自由という国際的に保護された権利を行使したこと
を理由に拘束されている人びとの裁判の中止又は取下げを求めるよう要求した。

「ネーポンラッとジャーナリスト2人の逮捕には、ビルマの独立(非政府)系メディ
アに今回の一連の裁判を報道させないためのあからさまな恫喝である。ビルマ軍
政に影響を与えることのできる国々は、今回の事態を傍観・放置してはならない。」
 ピアソンはこのように述べた。

背景情報

2007年9月の大規模な反政府運動の後、ビルマ軍事政権は、大量の政治活動家や
デモ参加者を逮捕した(http://hrw.org/reports/2007/burma1207/)。ビルマ政治
囚支援協会(AAPPB、本部:タイ・メーソット)によると、現時点で2,100人以上の
政治活動家が投獄されており、その数は2007年9月以前の2倍を超えている。

2008年10月後半以降の活動家や弁護士の裁判については次の事例がある。

10月23日、北オカラッパ(ラングーン(ヤンゴン)市)裁判所は、7人の仏教僧と7人
の尼僧に対し、「礼拝場所の毀損または冒とく」(刑法第295条)と「口頭または
文書による…他宗教の…侮辱」(同295条A項)により重労働4年を宣告した。この
14人は2007年9月にラングーンの2つの学校で逮捕されており、うち2人はウー・
イェワダ僧院長(65)とドー・ポンナミ師(80)である。家族は裁判の傍聴を許可さ
れず、弁護団は審理に出席することをたびたび阻止された。

10月24日、マンダレーの国民民主連盟(NLD)の党員6人(ウィンミャミャ、ティン
ココ、タンリィン、カントゥン、ウィンシュエ、ミントゥ)は、「暴動教唆の意
図」(刑法第153条)と「公衆に恐怖あるいは警戒心を生じさせうる…公序への危
害をおよぼす声明」(同505条B項)という罪状で、2007年9月の反政府運動に参加
したとして2年から13年の刑を宣告された。

10月後半には、ラングーン市フラインタヤー区のNLD青年部のメンバー11人が同
区の裁判所で、騒乱教唆の容疑で訴追された。11人は2007年にいったん逮捕され
ており、その後2008年9月に平和的なデモを行ったとして再逮捕された。弁護団
は10月30日に、不当な司法手続(下記参照)に抗議したとして逮捕された。

10月29日、「88世代学生」のメンバー9人(ミンコーナイン、コーコージー、フラ
ミョーナウン、テーチュエ、ミャーエイ、ニャンリン、ポンチョー、アウントゥー、
アウンナイン)の裁判がインセイン刑務所内で行われた。この9人は2007年8月に
逮捕された活動家34人の一部で、合計22の罪状で起訴されている。具体的には憲
法制定国民会議への批判(1996年の法律5/96)、反政府プロパガンダへの従事、騒
乱の教唆などで、それぞれの活動家には推計で懲役150年が宣告される可能性が
ある。

9人の被告人全員がインセイン刑務所内で行われているこの秘密裁判に抗議した
ところ、同日中に全員に対して、法廷侮辱罪で6カ月の刑が宣告された。次に9人
はイラワディ(エーヤワディー管区)のへき地にあるモービン刑務所に移送された。
家族や支援者が訪問できない状態で裁判を続けるためだ。10月30日にはNLDに属
する被告人の代理人を務める弁護士4人が法廷侮辱罪で有罪判決を受けた。ニー
ニートゥエ弁護士とソーチョーチョーミン弁護士は、反軍政デモを行った活動家
2人に対する裁判で、政府の高級官僚を証人申請したとして、法廷侮辱罪(刑法第
228条)で6カ月の刑を宣告された。またアウンテイン弁護士とキンマウンセイン
弁護士には、法廷侮辱法第3条違反で4カ月の刑が宣告された。これは2人が、依
頼人から、重要証人の申請が行えず、被告人の家族が裁判を傍聴できないなど、
裁判中の様々な制限措置に抗議するために代理人を辞任するよう依頼されてのこ
とだった。これら4人の弁護士のうち3人はすでに拘束されたが、1人はまだ当局
の手を逃れている。

11月2日、労働運動家5人(トゥーレインアウン、チョーミン、チョーチョー、ウェ
イリン、ニーゾー)の身柄が、ラングーン市内の刑務所からビルマ西部と北部に
移された。2007年9月の抗議運動への関与について秘密裁判を開始するためだ。

11月3日、新しく結成された国内団体「正義」(正義のための新世代運動)と「最
良肥料」の活動家8人について、非合法に結社を行った容疑で裁判が始まった。8
人は2008年9月に逮捕されていた。

11月5日、2007年9月の弾圧の際にラングーンのングェーチャーヤン僧院で逮捕さ
れた仏教僧5人に対し、ラングーンの南オカラッパ裁判所で裁判が開かれた。容
疑は「礼拝場所の毀損または冒とく」(刑法第295条)と「公衆に恐怖あるいは警
戒心を生じさる意図」(同505条B項)である。5人は法廷外での読経という短時間
の抗議行動により、同日中に審理妨害(同353条)で追起訴された。さらに2年の刑
が追加される可能性がある。

11月5日、2人のジャーナリスト(ニュース・ウォッチ・ジャーナル誌のキンマウ
ンエイとトゥントゥンテイン)は、同誌の7月号に地元での汚職事件を扱った記事
を掲載したとして逮捕され、直ちに3カ月の刑を宣告された。

11月10日、ブロガーのネーポンラッは2007年9月の抗議デモの期間中にブログに
記事を書き、行動の様子を伝えたとして20年の刑を宣告された。氏は2008年1月
に逮捕されていた。

11月11日、2007年8月のデモで逮捕された活動家14人に対し、インセイン刑務所
内の法廷は、外貨の無許可所持や、様々な一般的な機材の所有に関して許可を受
けていなかったとして各65年の刑を宣告した。さらに、著名な労働運動家のスー
スーヌウェは、2007年8月と11月に行った平和的な反政府運動を理由に、12年6カ
月の刑を宣告された。氏は、反逆罪(刑法第124条)と「公衆に恐怖あるいは警戒
心を生じさる意図」(同505条B項)で訴追されていた。

報道発表「5人の活動家にヒューマン・ライツ・ウォッチが授賞」
http://hrw.org/english/docs/2008/09/15/global19810.htm

報告書『投票しようのない国民投票:ビルマ 2008年5月の国民投票』(英語のみ)
http://hrw.org/reports/2008/burma0508/

報告書『弾圧の実態:ビルマ2007年民主化蜂起を封じ込める軍事政権』(日本語版要約)
http://hrw.org/reports/2007/burma1207/burma1207/burma1207jasum.pdf

ヒューマン・ライツ・ウォッチのビルマ関係情報は次を参照
http://www.hrw.org/doc?t=asia&c=burma



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今週のビルマのニュース Eメール版
2008年11月14日号【0835号】
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【今週の主なニュース】
民主化活動家らに一斉判決

・この1週間で40人以上の活動家や僧侶が長期の禁固刑判決を
受けた。判決を受けたのはアウンサンスーチー氏が書記長を務める
国民民主連盟(NLD)党員13人、「88世代学生グループ」の14人、
ラングーンのヌウェチャーヤン僧院の僧侶5人、労働活動家スースーヌウェ氏
など。軍政が2010年に予定している総選挙を前に、
反対意見を許さない姿勢を打ち出したとみられる
(13日付AP、12日付AFPほか)。

・一連の長期禁固判決の言い渡しについて英国、米国、カナダ、
ドイツなどの政府が非難の声明を発表。14日正午現在、
日本政府から声明などは出ていない。

・国連事務総長は12日、深い懸念を表明し、全政治囚の
解放を改めて呼びかけた。

・国連人権特別報告者のキンタナ氏は、ビルマ民主化系
メディア「ミジマ」とのインタビューの中で、「(ビルマに)
独立した公平な司法制度は存在しない」と述べた。また、
今回活動家が受けた裁判は公平だとは言えず、
軍政は判決を見直すべきだと加えた(13日付ミジマ)。

【その他】
マイケル・グリーン氏が特使に? ほか

・ブッシュ米大統領は前国家安全保障会議(NSC)アジア
上級部長で戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問兼
日本部長のマイケル・グリーン氏をビルマへの特使として
指名した。実際に就任するには米議会上院によって承認
される必要があるが、指名公聴会の時期は未定(11日付APほか)。
本来なら就任してもブッシュ大統領の退任時に辞任するが、
グリーン氏の場合は、指名承認のかぎとなる上院外交委員会の
委員長がバイデン次期副大統領である関係から、就任すれば
オバマ政権の下でも特使であり続ける可能性も。
特使の設置は、ビルマ産宝石の輸入を禁止する法律
(今年7月に制定)で定められている。

・EUは10日、アウンサンスーチー氏ら全政治囚を解放し、
民主化勢力や少数民族との三者対話を始めなければ2010年
の総選挙は信用性を持たない、とする結論を発表した。

・ビルマとバングラデシュとが領海線をめぐって争っている
ベンガル湾海域で、ビルマ側が天然ガスの探鉱の機材を
撤退させた。しかし陸の国境ではビルマ軍が部隊を増強
するなどして緊張状態が続く(10日付イラワディ誌ほか)。

【ビルマへの政府開発援助(ODA)約束状況など】

新たな発表はなし 


【イベントなど】

・宇田有三写真展「アウンサンスーチーとビルマ」
(岐阜県 瑞浪芸術館、10月25日~11月24日)

・日本ビルマ救援センター 月例ビルマ問題学習会
「ビルマ語講座入門」
(大阪ボランティアセンター地下1階ボランティアルーム、14日19時~)

・第24回世界仏教徒会議日本大会
シンポジウムにビルマ僧侶アシン・ナヤカ師出席
(浅草ビューホテル、11月15日12時~)

・連続セミナー「外国籍の家族と子どもの今」第5回
日本の難民・移民の現在と未来 トークショー第2部
『難民の家族』にビルマ難民Mさん家族
(日本キリスト教会館4F、23日14時~)

・神戸松蔭女子学院大学 2008年秋季特別講座シリーズ
「ミャンマー(ビルマ)の現状」
講師:日本ビルマ救援センター代表 中尾恵子氏
(神戸松蔭女子学院大学、26日14時40分~)

・アジアと日本のつながりを考える国際セミナー
「100人の村 あなたもここに生きています」
ヒューライツ大阪ほか主催
秋元由紀がパネリストとして参加
(大阪市阿倍野区民ホール・小ホール、12月5日14時~)

・ビルマ市民フォーラム例会
「初めての方のための『ビルマ入門講座』
-ビデオ上映と講演-根本敬」
(文京シビックセンター、12月6日18時半~)

★いとうせいこう+沢知恵+ダブマスターX
「ミャンマー軍事政権に抗議するポエトリー・リーディング QUIET」
YouTubeで動画配信中

★ジェーン・バーキン最新アルバム『冬の子供たち』が
11月26日に発売予定。アウンサンスーチー氏に捧げる
楽曲「アウンサンスーチー」を収録。

☆インターネット放送局「アワープラネットTV」がビルマ
でのダム開発問題を取り上げた。
ビルマ情報ネットワークの秋元由紀が解説(映像、16分)。
http://www.ourplanet-tv.org/video/contact/2008/20081008_10.html

★特定非営利活動法人メコン・ウォッチの
季刊誌「フォーラムMekong」、最新号はビルマ特集。
-ビルマ~サイクロン後の人々、軍政-
http://www.mekongwatch.org/resource/forum/FM_vol9_2_01.html


【もっと詳しい情報は】

きょうのビルマのニュース(平日毎日更新)
http://d.hatena.ne.jp/burmainfo/

ビルマ情報ネットワーク
http://www.burmainfo.org/


【お問い合わせ】
ビルマ情報ネットワーク 秋元由紀

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今週のビルマのニュース Eメール版
2008年11月14日号【0835号】

作成: ビルマ情報ネットワーク
協力: ビルマ市民フォーラム
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