橋下支持の中心は富裕層。湯浅誠は「反橋下」を鮮明にせよ/きまぐれな日々 から

2012-04-22 12:10:53 | 社会
4月13日付朝日新聞に掲載された湯浅誠インタビューに対する言及がネットで少ないのを意外に思った。この記事を朝日新聞は無料配信していないが、ひところなら湯浅誠の一挙一動は大きく注目されたものだ。ネットでもよく「リアルで湯浅誠に会った」と自慢している人たちがいた。その湯浅誠が朝日新聞のオピニオン面に大々的に登場したのだから、いくら朝日が無料配信していないといってももう少し話題になると思ったが、そうはならなかった。「反貧困」は一過性のブームに過ぎなかったのかと毒づきたくもなった。

ところが、意外な人間がこの湯浅誠インタビューの記事に食いついた。橋下徹である。『kojitakenの日記』に取り上げたのだが、橋下はこんなふうにつぶやいた(Twitter3件。URLは上記『kojitakenの日記』の記事に示した)。


 政策は中身より、実現するプロセスの方が重要。しかし日本の識者は中身しか語らない。実現プロセスを度外視した政策論。グロービスの堀氏、消える魔球論やエビ投げハイジャンプはもう良い。一度でも良いので、実際のボールを投げてみてはどうか?

 それを痛切に感じたのが反貧困ネットワークの湯浅さんだろう。言うこととやることは違うと。先日の朝日のオピニオンで朝日の記者が、湯浅さんは取り込まれたのでは?と盛んに聞いていた。湯浅さんからはもっと激しい政府批判や消える魔球的な提言を聞きたかったのであろう。

 しかし湯浅さんは、政策を実現するプロセスの凄まじさを知った。ちょっと本で読み知ったアイデアを言うぐらいではダメだと。朝日の記者はそこに気付いていないのであろう。池田氏も、堀氏も、政策を実現するプロセスの凄まじさを少しでも知れば、いい加減な論が少なくなるであろう。

(橋下徹のTwitterより)


ここで橋下がいう「池田氏」とは池田信夫(ノビー)、「堀氏」とは堀義人のこと。ともに新自由主義者。このうち堀氏のいかなる言説に橋下が切れたかは知らないが、ノビーに対して切れた理由ははっきりしている。ノビーが書いたブログ記事「『橋下=小沢政権』の運命」に痛いところを突かれたためだ。

ノビーは新自由主義者であり、自らと思想信条の近い橋下及び小沢一郎に対して親和的なスタンスをとっている。だが、それは別としてブログ記事中で橋下のTwitterの論理矛盾を指摘した上、こんなことを書いている。


彼の話が支離滅裂になるのは、「小沢先生」を擁護するという結論が先に決まっていて、それに合わせて消費税に反対する理由をさがしているからだ。さすがに橋下氏も、今の財政状況で「増税に完全反対」できないことは認めるが、「今回の増税案には反対」だという。今回は反対なら、いつどういう増税ならいいのかという代案はない。財政をどうやって再建するのかという計画もない。

かつて消費税増税の急先鋒だった小沢氏が、今それに反対する理由は明白だ。現在の「反小沢」執行部を倒すためである。政治とはそういうものであり、彼の主張に論理整合性を求めるのは無理である。それを意味不明な論理で擁護する橋下氏も「政局の人」になったのだろう。

ただ私は、この政局的な勘は悪くないと思う。小沢氏が離党し、彼の資金力・組織力と橋下氏の人気を組み合わせれば、次の総選挙で第一党になる可能性もある。自民の一部が組めば「橋下首相・小沢幹事長」という細川内閣のようなパターンもありうる。

しかし問題は、何をするかだ。橋下氏の政策は組合たたきや原発反対など思いつきのポピュリズムで、このまま国政に進出しても霞ヶ関に一蹴されて終わりだろう。小沢氏の力もかつての面影はないので、細川内閣のように短い命で終わるおそれが強い。次の次に期待するしかない。

(池田信夫「『橋下=小沢政権』の運命」より)


消費税増税や原発問題に関してはもちろん私はノビーの主張に与するものではないが、橋下と小沢一郎に関するノビーの指摘は正鵠を射ている。橋下の「脱原発」はノビーも喝破する通り、単なる人気取りに過ぎない。未だに「脱原発で頑張る橋下市長を応援しよう」と繰り返す左翼人士や橋下に取り込まれてしまった「脱原発」論者もいるが、近い将来、彼らは誤りを自己批判せざるを得ない羽目に陥るだろう。

それはともかく、橋下が切れたのは「まず『小沢先生』擁護ありき」という本音をノビーに暴露されたからだ。橋下が切れるのはいつもこのパターンだ。朝日新聞大阪の丑田滋記者も、北大教授の山口二郎も、曲がりなりにも橋下の痛点を突いたから橋下は切れた。一方、香山リカは橋下の痛点を全く突けなかったから、橋下の対応は余裕綽々だった。

逆に、橋下は「使える」と見るや、論敵の籠絡にかかる。その対象が今回は湯浅誠だった。ところが、橋下が言及した朝日新聞(4/13)掲載の湯浅誠インタビュー記事で、湯浅氏は「橋下流」を痛烈に批判していた。これについても『kojitakenの日記』に書いたので、当記事では詳しく繰り返さない。

ここでは、上記『kojitakenの日記』の記事にTwitterからリンクを張っていただいた宇城輝人さん(新刊本のジャック・ドンズロ『都市が壊れるとき』の訳者)による昨年11月の大阪市長選の分析を紹介したTogetter「今大阪で何が起こっているのか、『都市が壊れるとき』の訳者が語る」(下記URL)が興味深かったので、これを紹介したい。
http://togetter.com/li/288471

よく、橋下徹を支持しているのは、橋下の政策によって不利益を蒙る低所得層だと言われることが多いが、そうではなく、富裕層ほど橋下を支持していることを示すグラフを宇城さんは示している。

中でも、平均世帯年収と「橋下率」(橋下の得票の当日有権者数に対する比率)は一目瞭然、驚くほど鮮やかな相関を示している。大阪市24区の中でも飛び抜けて平均世帯年収の低い西成区は「橋下率」も際立って低い。

また、完全失業率と「橋下率」には負の相関があり、転入率と「橋下率」には正の相関がある。

つまり、貧乏人ほど橋下を支持しているわけでもなければ、橋下のような人間を支持するのは「大阪人の特性」でも何でもない。むしろ、よその土地から来た「転勤族」の高所得層や、ずっと大阪にいた人間でも昔からの「土豪」が特に熱心に橋下を応援しているとイメージすべきだろう。

大阪で橋下をもっとも熱心に持ち上げているのはテレビ局(民放の在阪準キー局)だが、テレビ局の正社員たちは大阪人の中でも際立った高収入層だし、よその土地から大阪に出てきた人間が多い。彼らと大阪の「土豪」が橋下と結託して大阪を支配しようとしているといったところだろうか。

大阪準キー局や東京キー局などのテレビ局は、橋下をあたかも「既得権益の破壊者」であるかのように喧伝しているが、実は橋下こそ「既得権益の守護神」なのではないか。

そう思うと、昨日当ブログにいただいた下記のコメントがいかに的外れであるかがわかる。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1244.html#comment14205


橋下を批判するならもっと分かりやすくやらなきゃ意味がないよ
分かってる人なら言われなくても橋下には否定的なわけで、だまされてるのは馬鹿の目をなんとかして冷まさなければならない
そういう馬鹿には小難しいことを書いても伝わらないでしょ

2012.04.14 09:56 橋下を批判するなら


コメント主は「B層理論」の信奉者かもしれないが、全くトンチンカンなコメントである。事実は「インテリ(ぶった人間)ほど橋下を支持している」ということなのだ。それは、私の周囲を見ていても実感として了解できるところだし、「環境ディスコース」がどうのこうのと言っていた飯田哲也がいとも易々と橋下に籠絡されてしまったことなどもその例に加えて良いだろう。そして、そんなインテリたちが大衆を「橋下支持」の死地へと誘導するのである。まさに「ハーメルンの笛吹き」。

昨日たまたま目撃した、朝日新聞のインタビュー記事で自らを批判している湯浅誠を持ち上げるTwitterを連発するのも、湯浅を取り込もうとする橋下一流の手練手管かもしれない。

もちろん湯浅誠は(飯田哲也とは違って)そんな橋下の思惑に易々と引っかかることはないとは思うが、単にそれにとどまらず、上記のように「よそから来た富裕層と大阪の『土豪』」の利益代弁者にして「既得権益の守護神」たる橋下徹を徹底的に批判する言説を、湯浅誠に期待したいと強く念じる次第である。

http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1250.html
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