村上春樹とエルサレム賞 「壁」の国がたたえる自由・由里幸子/朝日新聞

2009-02-10 11:27:08 | 世界
作家村上春樹さん(60)がイスラエル最高の文学賞・エルサレム賞に決まった。63年に始まった隔年の賞は、エルサレムの国際ブックフェアで「社会における個人の自由」に貢献した文学者に贈られる。

 受賞者には、バートランド・ラッセルやボルヘス、オクタビオ・パス、J・M・クッツェー、アーサー・ミラーら著名な名前が連なる。日本の作家として初めての受賞は、めでたいはずだが、思い浮かんだのは「壁」である。

 村上さんの長編小説「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」には、「高さは七メートル、街のぐるりをとり囲んでいる」壁が出てくる。越せるのは鳥だけで、門しか出入り口がなく、外の世界へ行く自由がない。

 いま、イスラエルは、パレスチナ自治区の周囲に、もっと高い、それこそ鳥しか越せない壁を築いている。今回のガザ攻撃では、逃げ場のない多くの子どもを巻き込んで、1300人以上の死者が出た。

 15日の授与式ではエルサレム市長から賞は贈られる。エルサレムにも壁がある。ユダヤ人の苦難を象徴する「嘆きの壁」だけではない。67年の第3次中東戦争でイスラエルが占領・併合した東エルサレム地域の周囲にも、高い壁が築かれているのだ。自由をはばむ「壁」と「個人の自由」という言葉の落差に目がくらむ。

 いま、ウェブ上では「パレスチナの平和を考える会」(役重善洋事務局長)などから、ガザ攻撃直後に受賞する「社会的・政治的意味」を考えてほしいと、再考を求める意見や署名運動がある。逆に現地をじっくり見てレポートするように求める声もある。01年に受賞した米国の故スーザン・ソンタグさんは、受賞講演でイスラエルのパレスチナ政策を批判した。

 最近の村上さんは、共同体の記憶、社会の闇をみつめる大事さを強調し、日本のナショナリズムの高まりを警戒していた。世界のムラカミとしてどんな受賞講演をするのか気になるが、関係者によれば「現地の政情の問題もあり、最終的には参加できるかどうか未定」という。(由里幸子)
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200902100087.html

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村上春樹氏に文学賞辞退を要求 エルサレム賞でNGO
 イスラエルの文学賞、エルサレム賞の受賞が決まった作家の村上春樹氏に対し、大阪市に拠点を置く非政府組織(NGO)「パレスチナの平和を考える会」がウェブサイトに掲載した公開書簡で「受賞はイスラエルの対パレスチナ政策を擁護することになる」として受賞辞退を求め、賛同者を集めている。

 同賞は「社会における個人の自由の理念を表現した著作の筆者」に与えられる。

 書簡は、イスラエルがパレスチナ自治区ガザで行った「虐殺や封鎖政策などはパレスチナ人の自由を抹殺する行為」だと指摘。村上氏の受賞により「イスラエルがあたかも自由を尊重している国であるかのようなイメージが流布される」と懸念を示している。

 書簡への賛同を示す署名は欧米諸国を中心に800件に達した。主催者のウェブサイトによると、村上氏は15日にエルサレムで開かれる授賞式に出席する意向を示した。

 同会の役重善洋事務局長は「受賞はイスラエルの人道犯罪に加担することになる」と主張。村上氏の事務所はコメントしていない。(共同)
http://www.47news.jp/CN/200902/CN2009021001000486.html

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