福田、小沢会談の結末とクリンチ内閣の姑息/JCJフラッシュ

2007-11-05 06:56:55 | 社会

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      ┃Y・記・者・の・「・ニ・ュ・ー・ス・の・検・証・」┃
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□■福田、小沢会談の結末とクリンチ内閣の姑息

 2日の福田、小沢会談2回目は、福田首相が与党と民主党による連立政権樹立に向
けた政策協議を始める「新体制」を提案した。小沢氏はそれを党にもちかえり役員会
で協議、民主党は最終的に全員一致で提案を拒否する方針を確認したため、小沢氏が
福田氏に電話し、「連立はのめない。誠意ある対応を頂いたが、結果として(連立は)
できません」(朝日新聞)と正式に伝えた。

 この段階で、民主党は次の政権与党としての度量を固めつつあるというのが私の印
象だった。福田首相の提案をもちかえった段階で、これは米国を相手にした外交交渉
の「練習試合」のように映っていた。体制翼賛会的な『新体制』を民主党役員会は拒
否したわけで、いいかたちだ。そして、野党がしっかりと日本の平和主義を貫くよう
厳しく求めるかたちとセットになることで、米国との交渉の新たなかたちができる―。

 私はパウエル前米国務長官が04年8月、日本の憲法改定について憲法9条につい
て、「日本の人々にとっての重要性は理解している」としつつ、「修正すべきかどう
かは日本国民が決めることだ。米国は意見を述べる立場にはない」と語ったことを思
い出していた。「日本国民が決めること」という発言は米政府関係からときどき出て
くる言葉だが、このときのパウエル発言が特に印象に残ったのは、おそらく同年11
月に辞意を表明したからだと思う。米政府関係者は、ブッシュのやり方、イラク戦争
に懐疑的・消極的といわれる人でも、「日本国民が決めること」といいつつ、戦争へ
の参加を求めるのである。

 その戦争体質にどっぷりつかり、そこから抜け出せない米国の戦争と一線を画して、
平和主義日本を貫くには、米国への単独依存ではなく、国際的に多面的な関係を構築
していかねばならない。いわゆる単独講和か、全面講和か、という戦後の日本の針路
を分けた大論争が、いま再び重要に必要になっている。

 小沢氏がインド洋の給油継続を憲法違反として反対し、ISAFに言及した岩波
「世界」11月号の公開書簡は、日本国憲法は世界の平和を希求し、国際社会で名誉
ある地位を占めたいと平和原則を高らかに謳っているのだから、(1)日本の自衛隊
を特定の国の軍事作戦のために派遣するような無原則をやめるべきであり、(2)自
分が政権をとって外交・安全保障を決定する立場になれば、それにかわってISAF
への参加を実現したい、だが(3)テロとの戦いにおいては、どんなに困難であって
も貧困を克服し、生活を安定させることが最も有効な方法であり、銃剣をもって人を
治めることはできない、と提起している。

 つまりそこでの小沢氏のISAF論は、特定の国の軍事作戦に日本は協力すべきで
はないとの立場から主張されており、対米追従から脱すべきとの主張に「政治的」意
味と幅をもたせるために持ち出されたものとも考えられ、民生支援をイメージしたも
のとの受け取れるが、そこに自衛隊がどのように絡むのかについてのイメージは、や
はりこれも「政治的」な意味と幅、つまり自民党や米国との交渉の余地を残したもの
となっているように、私には感じられた。そして小沢流で行けば、そこは、それこそ
「日本国民が決めること」ということにもなるのだろう。そこにイラク戦争に反対し
た民主党が、野党連携の軸として勢力を伸ばし、政権交代を目指すだけの力を集めて
きた力の源泉があるが、半面、そこに自衛隊を海外に派遣したがる自民党と野合する
隙間も確保されていたともいえる。

 つまり、米依存症の自民党がずるずるとブッシュの戦争路線に引きずり込まれる体
質をもっている、いわゆる単独講和路の脆さ、狭量を引き継いでいるのに対して、小
沢氏の国連中心主義路線は外交的な側面からみれば全面講和を提唱するに近い。ただ
国連を安易に平和の砦のようにみなすことはできない実態、そしてISAFへの参加
への提唱は、よほど戦争に反対する国民の声を背景にした野党の力が強くない限り、
国連の名の下により戦争に巻き込まれやすい状況に陥る危険が高い。そうした流動性
を伴った「構想」であるがゆえに、今度の衆院選では、民主党を与党に押し上げて自
民党を極小化すること、そして野党が相対的に極大化することが不可欠という状況に
立っている。

 民主が勝っても、自民党の敗北の度合いがそう大きくない場合、野党は共産・社民
・国民新・日本新党と自公とに二分することになり、そうなると小沢ISAF路線は、
自民党によってより危険な戦争路線へと変質してしまう可能性がある。そうした意味
から、新テロ特措法をめぐる国会の審議内容が注目されたわけであるが、福田・小沢
会談の結末は、民主が連立を断って終わりではなく、小沢氏の代表辞意表明というお
まけがつくことになった。

 4日夕の小沢氏の代表辞意表明記者会見では、福田・小沢会談をめぐる新たな事実
がわかった。
 最大は、福田首相の決断である。
(1)国際平和協力に関する自衛隊の海外派遣は国連安保理、もしくは国連総会の決
議によって設立、あるいは認められた国連の活動に参加することに限る、したがって
特定の国の軍事作戦については、我が国は支援活動をしない。
→つまり対米追従から国連中心主義への移行である。
(2)新テロ特措法案はできれば通してほしいが、両党が連立し、新しい協力体制を
確立することを最優先と考えているので、あえてこの法案の成立にこだわることはし
ない。
→新テロ特措法案をあきらめる可能性、である。

 小沢氏は、上記2点を福田氏から提示され、また国民の生活が第一の政策を標榜し
て参院選に勝利した以上、民主党の年金改革、子育て支援、農業再生など国民生活に
かかわる法案の成立を急ぐべき、との立場から、福田氏の連立政権樹立に向けた政策
協議を前向きに受け止め、党の役員会にかけた。小沢氏は上記(1)(2)は日本の
政治の大転換であると認識したが、役員会では拒否の結論が出たため、それは自分へ
の不信任と同様であるというのが、辞任表明の最大理由の一つのようだ。

 そして辞任表明の理由としては、そのほかに(1)衆院選での勝利を確実にするに
は、野党色を脱皮して政権政党としての力量をつけ、それを国民にみせていく必要が
あると小沢氏は考え、さらに(2)参院第一党と衆院第一党とのにらみ合いのままで
政治の停滞を招くと、与党よりのメディアによって「野党」民主党の責任が問われる
ことにつながりかねないこと、また(3)福田・小沢会談をめぐる報道が、一部の社
(朝日新聞と日本経済新聞)を除いて自民党の情報を垂れ流し、世論操作の一翼を担
っているとしか考えられないようなイメージダウンを引き起こそうとしている、こと
も、福田・小沢会談をめぐって混乱を引き起こしたとして辞任を表明する理由の一つ
になっているようである。

 この(3)については、
「このようなマスメディアのあり方は、明らかに報道機関の役割を逸脱しており、民
主主義の危機であると思う。報道機関が政府与党の宣伝機関と化したときの恐ろしさ
は、亡国の戦争に突き進んだ昭和前半の歴史を見れば明らかだ。また、自己の権力維
持のため、報道機関に対し、私や民主党に対する中傷の情報を流し続けている人たち
は、良心に恥じるところがないか、自分自身に問うてもらいたい。報道機関には、冷
静で公正な報道に戻られるよう切望する」
 としている。A)連立を持ちかけたのは小沢氏との報道や、B)会談で小沢氏が、
自衛隊海外派遣を随時可能にする「恒久法」を政府が検討するなら新テロ対策特別措
置法案に協力する意向を示したとする報道などは、事実無根と明言した。

 あたかも書きドクと化そうとした会談ネタ。新聞社の政治への関与・暗躍も取りざ
たされるなど、日本政治のドロドロした部分が一気に噴出、トップ2者だけの会談に
ひそむ落とし穴の存在をまじまじと見せ付け始めたところだった。小沢氏が記者会見
でそれを明言したことで、疑心暗鬼を誘発した魑魅魍魎の報道合戦は多少おさまるに
しても、同時に、小沢氏の代表辞任表明が「福田さんが得点を挙げた」(国民新・亀
井静香代表代行)という状況を生み出そうともしている。福田氏は小沢氏の代表辞任
表明についてコメントを控えている。

 党首会談における福田氏の「大連立」提案が、情勢を一気に、与党の資格をめぐる
情報戦と神経戦に引きずり込んだ格好だが、小沢氏が「大転換」として評価した福田
氏の決断は、どうなのか。国連中心主義への政策転換について、福田氏は「それだけ
でいいんですか?」と答えたとの報道もある。小沢氏が「大転換」と認識したにして
も、福田氏の認識とは依然かなりの溝があると受け止めるべきだったのではないか、
との疑問もある。そして福田氏の「大転換」は、小沢氏との交渉のツボとして練られ
ただけにとどまるのか。福田氏はその「大転換」について国会で説明する義務がある
のではないか。

 それを拒否すれば、福田・小沢会談は、まさに密談、密室の談合にほかならなくな
る。それを仕掛け、会談をリードした福田氏の責任が厳しく問われるのはいうまでも
ない。

 それにしても小沢氏のテロ特措法反対、国連中心主義と民生支援への転換の提言が、
なぜ自民・民主「大連立」へとつながってしまったのか。小沢氏の指摘したマスメデ
ィアの報道姿勢の件も含めて、検証すべき点は多々あるものと思うが、福田・小沢会
談から小沢氏の代表辞任表明までの経過をざっとふりかえると、やはりそこには米国
の影がちらつく。米国を「知っている」政治家であるがゆえに、日本の政権与党を担
う資格、首相の人物像や政策のありようのなかに、どうしても米国の影は色濃く残っ
ているのか。

 小沢氏のISAF言及が、たとえ、米国との新たな付き合い方を模索する上でのシ
ナリオの一環であり、話を詰めていく過程で、9条の存在、国民・野党の強い反対を
理由に、実質的に自衛隊の海外派兵はできないことを米国も含めて国際的に納得させ
ていくプロセスとして筋だてられたものだったのだとしても、福田自公政権はまだ下
野したわけでもなく衆院選に敗北したわけでもない。

 今回の出来事は、小沢シナリオが、米国の前に、米追従自公政権でためされたかっ
こうでもある。福田政権は、背水の陣・話し合い路線をとっているだけで、イラク戦
争の間違いさえ認めないままである。福田氏は小沢氏に披露した「大転換」を、国連
中心主義と民生支援への転換として、国民の前で堂々と表明できるだろうか。福田氏
の「大転換」には、小沢氏に話した段階でもすでに裏もあり、言い逃れすら用意され
ていたのではないか。自民党筋が流している「恒久法」関連の話をみるかぎり、そう
思わざるをえない。自民党のいう「恒久法」論議は、自衛隊の海外派遣に歯止めをか
けようとするものではなく、自衛隊の海外派遣を容易にするための一括論議をさして
いるのである。

 党首会談で小沢氏が、自衛隊海外派遣を随時可能にする「恒久法」を政府が検討す
るなら、新テロ対策特別措置法案に協力する意向を示したとする報道などは、まさに
小沢氏に示した「大転換」を即座に覆すための情報装置として、準備されていたので
はないかと疑いたくなるほどよくできた「情報」である。会談をネタに、野党をかく
乱するに十分なパワーを発揮したように思う。

 とにかく、新テロ特措法成立に生き残りをかける自公政権が、根本からこれまでの
戦争路線を反省し、平和主義日本へと大転換することを決意したようには到底思えな
い。民主党の役員会が出した「大連立拒否」の結論はもちろん、そして小沢氏の代表
辞任表明会見も2者だけの党首会談のカラクリを小沢氏の側から明らかにしたという
意味で、福田氏の「背水の陣・話し合い路線」の本質をみごとに暴き出した可能性も
ある(うろおぼえだが、田中真紀子氏が「クリンチしながら蹴りかかる」ような人と
コメントしていたような気がする)。

 小沢氏の代表辞任表明をうけて、町村官房長官は「まさかという事態がきのう、き
ょう起きている」と笑みをかみ殺すように語ったが、まさに今後も「なにがおこるか
わらない」緊迫した攻防が続いている。会談から会談をめぐる騒動は、衆院選突入の
時が近づいていることの兆しなのかもしれない。少なくとも政権交代のかかったバト
ルを前に、すでに前哨戦がはじまっていることは確かである。

 政党、政治家のバトルもさることながら、国の主人公も選挙の主人公も国民である。
民意が政治の流れを決めることは少しも揺るがない。揺らぐ必要もない。

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2 コメント

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9・11陰謀説を信じざるを得なくさせたのは (東急キャピタルの米時合同やらせテロの噂。)
2007-11-05 13:33:44
今回も、国際金融ロックフェラー憎しの気持ちを持たざるを得なくさせられた。
米中西部エスタブリシュメントは敵を作る天才だね!!!
飽く事無き貪欲は、こうやって沢山沢山敵を作って行くんだね!コレまでもこうして来たように。
ついでに (クリンチ自爆まで試みてる模様。)
2007-11-06 16:15:52
クリンチしたまま、双方に死傷者が出る工作も怪情報の形で始まってるみたい。
って、「小沢が橋龍内閣時代にCIA助成金を貰ってた」ってヤツ。
橋龍は死んだが、まだ幹事長より行為の役職についてて、しかも生きてる奴も居るのに。
もしも、CIA助成金が従来伝えられていたように’70年代に廃止されて郵政選挙こと日本の9・11で復活したのではなく、仮に、先行して橋龍の時に(「米国債を余程売りたいと思った」発言に反して)復活していたのだとしても尚、幹事長だった小沢より高額を橋龍以外も受け取っている筈だから、だ。
貧すれば鈍するとは言うが…。

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