子供たちを「聖戦士」にするイエスのキャンプという米国で上映されたドキュメンタリー・フィルムが論争の的になっている。9月29日付のイスラム・オンラインが報じた。
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「ここは古くて病んだ世界だ。さあ子供たちよ、世界を変えるのだ。つまり戦争を起こすことだ。君たちも加わるか?」。この言葉は子供向けのアニメ映画の台詞ではなく、米国ノース・カロライナ州デビル・レイクで開かれた7歳から12歳までの子供用夏季キャンプ「Kids on Fire Summer Camp」での演説の一節だ。
この場面は記録映画「イエスのキャンプ」で見られる。そこでは「嘘つき」「偽善者」といった言葉を浴びせられた子供たちが涙をこぼす。キャンプ主催者に言わせると、パレスチナの「ムジャーヒディーン(聖戦士)」のように、聖書を防衛する「戦争」の準備として、「悪魔を追い出す」ために子供たちは手を洗わなければならない。別の場面では、参加した子供たちが涙を流しながら「敬虔なる支配者たち」を合唱した後に、体を揺さぶり手を突き上げ目を閉じてブッシュ大統領のために祈っている。
映画は夏季キャンプに参加した3人の子供を追う。その一人トーリーちゃん(10)は寝室近くでふらつきながらカメラの前で、ブリトニー・スピアーズ(米国の著名女性歌手)より何故ヘヴィー・メタルが好きかを、「私がこうして踊っている時、神様のために踊っていると強く意識しなければばならないからなの。単に踊るために踊っていると人には分かるのよ」と説明した。
映画が米国中西部で二週間前に公開されて以来、敬虔なキリスト教徒や無神論者の間で、さらにはキリスト教福音派内部でも賛否両論を巻き起こしてきた。 米国のテレビがこの記録映画に関するレポートを報じると、映画のウェブ・サイト(http://www.jesuscampthemovie.com) へのアクセスが急増し、米国中のメディアの関心を集めた。
子供たちに「戦争」の準備をさせることは恐ろしいことだと、キャンプの出資者のフィッシャー女史を非難する声がある一方、同女史が伝えたいメッセージを歪めていると製作者を批判する人々もいる。
『「イエスのキャンプ」の狙い』
フィッシャー女史はキャンプの狙いについて、「イスラム教徒の若者がパキスタンやイスラエル、パレスチナでイスラムの大儀のために命を捧げているように、キリスト教徒の若者がイエス・キリストや聖書のために命を捧げてもらいたい」と9月22日付の英ガーディアン紙で語っている。
女史は「このキャンプの行事を恥ずかしいとは思わない」と強調するが、観客には「キャンプで行なわれていることに趣旨を与えなければ、あなた方が画面上で見るもの(映画の内容)を弁護するのは本当に容易ではない」と語った。
映画製作者らは、「この記録映画の意図は、国内に明らかにある対立する二つの文化を経験するこだ。一方の数千万の敬虔なキリスト教信者の保守路線は、他方の非宗教的で倫理的価値に重きをおかない自由主義者と闘争している。我々は両路線の見解の一方を否定的に描いたり、一方に組することは無い」と自社のウェブ・サイトで説明している。
『人々の反応』
レイチェル・グレイディー助監督は「映画鑑賞後に子供をキャンプに送り出す人々がいる一方、警察に通報するという相反する反応があると我々は予想していた」と語る。実際、上映直後から観客の反応が続いた。その一部はキリスト教福音派の集団による否定的反応だ。
3千万人の信者を擁す福音派国民連盟を率い映画にも登場するテッド・ハガード牧師は会員に、「この映画は一言一句フィッシャー女史の見解を反映しており、無視するよう」求め、「敬虔なキリスト教信者に焼き付けられた否定的イメージを増幅するよう、左翼がこの映画を悪用することを危惧する。戦争の話は比喩的なもので、宗教政権を打ち立て、我々が神の法だと信じるものを人々に強制する意図は無い」と語った。
だがグレイディー女史は、「ハガード牧師のように格別の影響力を持つ人がこの映画を拒絶するとはがっかり。ご自分の描かれ方が気に入らなかったのでしょう。私たちは政治と神が実際に合体しているのに仰天した。11月7日の議会の中間選挙が近づき、それが眼前に展開されている。今回激戦議席は多い」と語った。
オルブライト元国務長官は、9月20日にジョージ・ブッシュを「宗教的信条を外交政策に反映させた」と痛烈に批判した。9.11事件以来ブッシュは「テロとの戦いは十字軍戦争」という例えをはじめとし、イスラム教徒に敵対的な用語を使用、最近では「米国は、自由を愛する人々を攻撃するために手段を選ばない『イスラム・ファシスト』に立ち向かう戦争を行なっている」と発言しイスラム世界を激怒させた。
http://www.islamonline.net/Arabic/news/2006-09/29/07.shtml
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