「基準緩和より脱被ばく」 荒木田岳・福島大准教授に聞く(東京新聞:特報 14 日)

2013-03-14 10:45:02 | 社会
2013年3月14日 東京新聞 朝刊 こちら特報部
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013031402000144.html
「基準緩和より脱被ばく」 荒木田岳・福島大准教授に聞く

「年間の被ばく線量1ミリシーベルト以下」という目標値を掲げた福島の除染。
結果は予想通り、難航している。
その影響で帰還が進まないとみた国や県は、事実上の安全基準の緩和に向けて動き始めた。
原発事故直後から繰り返された現実迎合の措置だ。
住民たちの多くは、被ばくの不安と安全を信じたい気持ちの間で揺れている。新たな緩和の動きにどう対応すべきなのか。
(荒井六貴、林啓太)

ーーーここより文字起こし--- 阿修羅 播磨さん

「基準緩和より脱被ばく」 荒木田岳・福島大准教授に聞く(東京新聞:特報)
http://www.asyura2.com/13/genpatu30/msg/700.html
投稿者 播磨 日時 2013 年 3 月 14 日 07:57:11: UcrUjejUJLEik

「自宅の線量を年間1ミリシーベルト以下にするか、それとも損害を賠償するか。目標の緩和をたくらんでいるなら筋違いだ」。福島県伊達市の建設業、菅野政貴さん(43)はそう吐き捨てるように言った。

自宅の居間の線量は年間7ミリシーベルト。業者が除染しても3.5ミリシーベルトにしか下がらない。現在は、約13キロ北の市内のマンションに避難している。

自宅は住居単位で避難を促される特定避難勧奨地点に指定されたが、昨年12月に解除された。小学3年生の長男(9つ)が使う通学用タクシーの補助も、今月末までだ。

菅野さんが「筋違い」と憤った動きは先月17日、福島市内で開かれた県と福島第一原発周辺12市町村と政府の意見交換会で顕在化した。

非公開だったが、復興庁によると、遠藤勝也富岡町長が「年間1ミリシーベルトという除染の目標は達成できるか疑問。現実的な範囲で科学的、医学的な安全基準を国に示してほしい」と発言。菅野典雄飯舘村長は「同じ地域であっても、住人の年代や性別ごとに適切な数値を示すべきだ」と求めた。

佐藤雄平知事も「風評被害の観点からも、新たな放射線の安全基準などを政府の責任で示してほしい」と要望した。

こうした声に応えるかのように、安倍首相は11日、避難した住民の帰還について、今夏をめどに見通しを示す意向を示した。これを受け、国の原子力災害対策本部が近く新たな安全指針づくりの準備を始める。

■緩めたい意図 復興庁は否定

復興庁の星野岳穂参事官は「国としては従来の基準を緩和する意図はない」と話す。だが、同時に「(緊急措置である年間被ばく線量)20ミリシーベルトという基準でも、心配がないという説明に力を入れたい」と強調する。

除染目標の年間1ミリシーベルトを事実上、ないがしろにし、「地元の要望」を錦の御旗に「20ミリシーベルト以下は安全」という緊急措置の恒常化を図るのでは、との懸念は消えない。

飯舘村では、独自除染の「当面」の目標を年間5ミリシーベルトと定める。20ミリシーベルト以下なら安全になるとすれば、目標から「当面」の2字が取り去られても不思議はない。

安全基準の緩和には「前科」がある。事故収束作業員の緊急時の被ばく限度は事故後の9カ月間にわたり、100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げられた。県内の校庭利用を制限する放射線量も、一時期は年間20ミリシーベルトまで基準が緩和された。

ただ、自治体側にも地域の復興が進まない現実への危機感がある。

避難区域の住民を対象にした復興庁による帰還意向の調査では「戻りたいと思わない」
「戻らないと決めている」という答えが双葉町で30%、飯舘村で27%に上った。

被災者の間でも、目標値の緩和はやむを得ないという空気がある。

飯舘村の佐藤長平村議(62)は「除染成果をみると、1ミリシーベルトは無理だ。現実論として5ミリシーベルトぐらいだろう。5ミリシーベルトぐらいなら、福島市や避難した川俣町もそうだった。生まれ育った場所だから戻りたい。土のセシウム濃度を落とせば、農業も始められる」と訴える。

浪江町の吉田数博町議(66)は「子どもを持つ人たちは反発するだろう。ただ、中高年の人からは『早く帰りたい』という声を聞く」と語る。

同じ被災者でも感情がもつれる。そうした状況を見つめてきた福島大の荒木田岳准教授(地方行政)は、被災住民の立場を端的にこう表す。

「福島では、健康に不安を抱えながら生活する地獄と、県外で預金を切り崩して生活する地獄がある。避難者が福島に戻るのは、経済的に追い込まれたケースが多い」

荒木田さん自身も被災者だ。福島市に永住しようと土地を買った。家を購入する契約当日に震災が起き、白紙に。妻の実家がある新潟市に8歳と4歳の子ども2人を連れて避難した。

残ったのは土地のローン。妻子は新潟市のアパート、荒木田さんは官舎住まいという二重生活を続けている。

福島に残った人から、避難者に対して「神経質だ」
「利己的だ」と批判する声を聞いた。「残る人も避難者も被災者同士なのに、内輪もめをする構図。事故の責任の所在がどこにあるのか、分からなくしている」

■「賠償減額など 東電・国に狙い」

事実上の基準緩和は被災住民の亀裂をより広げるだろうと危ぶむ。「福島に住み続けたい人は、国に大丈夫だと代弁してもらいたいし、行政の復興スローガンとも一体となれる。しかし、それは避難者の肩身をますます狭くし、『福島に帰れ』という圧力になる」

その背景をこう読む。「緩和は避難者を福島に戻す圧力だとしか思えない。避難する権利が奪われている。住めない地区が広がれば、東電の賠償も増える。だから、我慢して住めということになる。加えて、国にとっては原発の再稼働や輸出をするため、原発事故の過小評価をしたいという意図もあるのだろう」

荒木田さんは除染目標の緩和ではなく、被ばくを少しでも抑えることに集中すべきだと考える。

「居住を前提にすれば、基準を変えようという発想になるが、本当は安全か否かが肝心だ。基準を現実に合わせるのはおかしい。受け入れたくない福島の現実を直視しなくては。放射線は浴びない方がいいに決まっている。食でも、がれきでも一緒に被ばくすることを絆とは呼べない」

ただ、「脱被ばく」第一の行動が困難を伴うことも経験している。

勤務先でも、学生の被ばくを少しでも減らそうと、新潟県で集中授業をしていくことなどを提案した。だが、同僚から「お金はどうするのか」
「集中授業では身に付かない」と否定的な声が相次いで提案は頓挫した。

それでも「福島に残っている人に対し、後ろめたさを感じる避難者もいるが、被ばくする人が減るのは喜ばしいこと。みんなで被ばくしても救われない」と断言する。

いまは被災者同士の分裂を克服することがなにより重要と力説する。

「人びとは疑心暗鬼や人間不信から何も語らなくなりがちだ。ただ、孤立しても問題は解決しない。そうではなく、福島にある人権無視の状況を理解し、みんなで『脱ひばく』の原則を共有すること。そこに分裂を克服する原点がある」


[デスクメモ]
「取り戻す」が好きな政権である。その中には原発もある。被ばく基準の緩和は「足を靴に合わせる」ことにほかならない。いまある危機をないものとする。その延長線上に福島原発事故はあったのだが、その流儀も取り戻したいらしい。「喉元過ぎれば、熱さ忘れる」。私たちの喉はそう短くはない。(牧)

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参考
「100ミリ・シーベルトまで安全」は本当か?
「帰還基準緩和」で注視すべきポイント /DIAMONDonline

http://diamond.jp/articles/-/33291
環境省の基準では、年間1mSv(ミリ・シーベルト)を公衆被曝の上限とし、時間当たりに換算した0.23μSv/h(マイクロ・シーベルト) 以上の市町村を除染対象地域としている。
比較的高い濃度の0.4μSv/h(毎時マイクロ・シーベルト)前後の空間放射線量を観測していた東日本の各地域は、かなりの地域で0.23μSv/h以下へ下がったと思われる。
福島原発事故から2年経過し、除染の進捗とともに半減期2.06年のセシウム134が減少しているからだ。・・・

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参考
緊急!時事通信「死者いないはうそ=福島大教授、原発事故の影響訴え」 は誤解を招くトンデモ記事/ブログ・福島 信夫山ネコの憂うつ

http://shinobuyamaneko.blog81.fc2.com/blog-entry-132.html
昨日からツイッター、ネットで「連中」によって誤解を招くトンデモ記事が「拡散」されているようなので、注意しよう。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130311-00000177-jij-soci
「死者いないはうそ」=福島大教授、原発事故の影響訴え―東京【震災2年】時事通信 3月11日(月)22時25分配信

 東京電力福島第1原発事故から2年となった11日、東京都内で脱原発を訴える講演会が開かれ、福島大の清水修二教授(地方財政論)が「原発事故で1人も死んでいないというのはうそ。大変な人的被害だ」と影響の大きさを訴えた。
 清水教授は「福島県では15万人近い人が今も避難している。震災関連死は1300人を超えた」と指摘。「避難は犠牲を伴うが、多くは原発事故の放射能によるものだ」と述べ、事故を過小評価しないよう呼び掛けた。
 また、県内では避難するかしないかで住民の間に対立が生まれたとした上で、「これからは帰還するかしないかで対立が持ち上がる」と懸念した。
・・・
*清水修二・福島大学教授からのコメントもあります


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