被告席に立つ!道警不正支出問題報道裁判に「補助参加」”乱入”/東京新聞

2006-08-09 22:16:02 | 社会
新聞協会賞にも輝いた北海道新聞(道新)による道警不正支出問題報道。その取材記者らが執筆した本について、当時の道警幹部が「ねつ造だ」と訴えた。が、共著者で作家の宮崎学氏ら2人はなぜか訴えの対象外。そこで「補助参加」という形で被告側に割り込みを図った。彼らが「火中のクリ」を拾いに出た理由とは─。


被告席に立つ!
          「不正支出」で元道警幹部が記者ら提訴
          「補助参加」で訴訟に”乱入”
               マスコミと警察の問題点「全国に発信できる」

名誉を傷つけられたとして慰謝料を求め、5月末に出版社と道新、さらに同社の取材記者二人らを訴えたのは道警の元総務部長の佐々木友善氏(現在、独立行政法人自動車安全運転センター北海道事務所役員)。
 一方、共著者でありながら被告から外されたため、今月初め、訴訟への補助参加を札幌地裁に申し出たのは宮崎氏とジャーナリストの大谷昭宏氏だ。
 訴訟でやり玉に挙がったのは、両氏と道新記者2人が対談する形式で書かれた「警察幹部を逮捕せよ!泥沼の裏金作り」(旬報社)という本。この中に佐々木氏が裏金問題に揺れつつ、本部長から「よくもこんな下手をうってくれたな」と対応のまずさを叱られたとの記述があり、同氏は「そんな事実はまったくなく、いわゆるねつ造記事」(訴状)と提訴した。
 しかし、この訴訟で自分たちが蚊帳の外に置かれていることに気づいた宮崎氏らは、裁判当事者として乗り込むことを決めた。
 その手段はあまり聞き慣れない「補助参加」という方法。訴訟の行方に利害関係のある第三者の利益を守ることを趣旨に、民事訴訟法42条で定められている権利だ。裁判所が参加を認めると、原告、被告と同じように法廷に書面提出などができる。ちなみに最高裁によると「件数についての統計はないが、珍しいものではない」という。
 一般的には、関係者が入り組んだ債券債務の争いや、株主代表訴訟などのケースで使われている。最終処分場の建設不許可をめぐる岡山県知事と第三セクターとの行政訴訟では、最高裁小法廷が2003年1月、「第三者」だった住民の参加をこの方法で認めた。
 とはいえ、わざわざ訴えられる側に立とうとする今回の宮崎、大谷両氏の場合はやはり異例。単なる「義きょう心」とも思いにくい。狙いは何なのか。
 「だれを被告にするのかは原告の自由だが、共同執筆者の言い分も聞かずに裁判をやるのはおかしい。それに、あれだけ裏金を暴いた道新が、最近では道警がらみの誤報もあってか、おとなしい印象を受ける」
 宮崎氏は理由をこう説明する。さらに大谷氏は「口うるさいわれわれは敬遠されたのだろう」と原告側の思惑を推測しつつ、目的をズバリこう語る。
 「自分たちが訴訟当事者となれば、今回の訴訟は一地方ではなく、日本中にマスコミと警察の問題点を発信できる。もちろん一人のジャーナリストとして、自分の著作がインチキ呼ばわりされたのに一言も発しないなんて考えられない」
 二人の「割り込み」が認められるかは、まだ不透明だ。今月21日には第1回の口頭弁論が開かれる。両氏はそれまでに原告と被告の話し合いで訴訟が取り下げられたり、和解になる可能性も警戒する。その場合、原告の佐々木氏を名誉毀損で逆提訴することもありうるという。
 その佐々木氏側は「担当弁護士は出張中で、この件についての取材は受けないことにしている」(弁護士事務所)としている。
 一方、北海道新聞社は「今後の進行を注目していく」(経営企画室)と言葉少な。それを尻目に宮崎氏はこう快気炎をあげる。
 「この訴訟には新聞社を黙らせようとの意図を感じる。言論の自由が脅かされているんだよ」

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北海道警察不正支出問題  道警旭川中央署で2003年11月、情報提供者らへの謝礼となる捜査用報道費を悪用した裏金つくりが発覚。これを機に、元幹部が実名で手口を告白するなど恒常的な流用の実態が明らかになった。道警の内部調査では、6年間で疑義のあった総額は11億円に上り、道警はうち不正が確認された9億6000万円(利子分含む)を国と道に返還、謝罪した。


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