シリア:今も続く、武装勢力による人道に対する罪/アムネスティ国際事務局発表ニュース

2012-06-17 21:27:17 | 世界

シリアにおいて、違法な殺人や拷問、恣意的な拘禁、理不尽な家屋の破壊が驚くほど進行している。この状況は、政府軍と民兵が民間人へ攻撃してもその責任がまったく問われない中、彼らの激化する広範な攻撃を食い止めるには、国際社会の断固たる行動がいかに緊急に必要かを、物語っている。

アムネスティ・インターナショナルは6月14日、シリアに関する最新の報告書を発表した。70ページの本報告書は、反対派を支持しているとされる地域に対する報復を強要し、人びとを服従させるために脅迫するような国家政策の一環として実行されてきた人道に対する罪や戦争犯罪など、広範かつ組織的な違法行為の新たな証拠を提示している。

「重大な侵害行為が組織的な形で行われていることを示す、不穏な新証拠が出てきたこと。これは、政府軍や民兵がまったく責任を問われずに行なっている、人道に対する罪や戦争犯罪など民間人への広範な攻撃の激化する勢いを食い止めるため、国際社会に断固たる行動を取る必要性を迫っていることを、明確に示しています」とアムネスティの危機管理上級顧問のドナテラ・ロベラは述べた。彼女は最近、シリア北部で人権侵害についての調査を数週間にかけて行なった。

「1年余り、国連安全保障理事会はぐずぐずするばかりで、シリアでの人権の危機は拡がっています。今こそ難局を打開し、これらの侵害行為をやめさせ、責任者を裁くために具体的な行動を取らなければなりません」

虐殺される市民

シリア当局からの入国の公的認可は得られなかったが、アムネスティはシリア北部での状況を調査することができた。そして、「シリア政府軍と民兵は、重大な人権侵害および人道に対する罪と戦争犯罪に相当する重大な国際人道法違反に責任がある」と、結論づけた。

アムネスティは、アレッポとイドリブ県にある23の町村を訪問した。また、3月と4月に出された国連とアラブ連盟による6項目の停戦協定の実施に向け交渉している最中に、シリア政府軍は大規模な攻撃をしかけたが、その地域も訪問した。

訪問したどの町や村でも、嘆き悲しむ家族たちは、若者や老人、子どもたちを含む彼らの親族がどのように引き離され、兵士たちによって銃殺されたかを、アムネスティに説明した。兵士たちが犠牲者の身体に火をつけるケースもあった。

兵士たちと民兵組織シャビハは家屋や財産を焼き払い、住宅地域に無差別に発砲し、そこに居合わせた民間人たちを殺傷した。病人や老人を含めて逮捕された人びとは日常的に拷問され、ときには死に至った。多くの人びとが強制失そうとなり、行方はわからないままである。

「行く先々で、なぜ世界は傍観して何もしないのか、とひどく取り乱して問うてくる人たちに出会いました」とドナテラ・ロベラは述べた。

「国際社会のこのような怠惰な姿勢が、さらなる侵害行為を助長しています。状況が悪化し続け、民間の死亡者数が毎日増えている中、国際社会は増大する暴力を止めるために行動しなければなりません」とも述べた。

政府は反対勢力の拠点と見なした町や村を標的としてきた。それが自由シリア軍(FSA)との衝突場所であろうと、平和的に反対勢力の居場所であろうと問わず、である。

シリア最大の都市であるアレッポでは5月最終週に何度か、制服姿の治安部隊と平服の民兵のシャビハが、平和的にデモを行なっている人びとに対して実弾を発砲し、子どもたちを含む抗議者や通行人たちを殺傷するのを、アムネスティは目撃した。

これらの地域での侵害行為は、当該地域だけのことではなく、5月25日のホウラでのシリア軍による攻撃など他の地域でも広く報じられている。国連によると、49名の子どもたちと34名の女性を含む108名がホウラで殺された。

2011年2月に改革派の抗議が勃発して以来、アムネスティは動乱の中で殺害された1万人余りの人びとの名前を把握しているが、実際の数字はそれよりかなり多いかもしれない。

命をうばわれる子供たち

この報告書は、子どもたちと武装紛争についての国連事務総長の報告書を含むシリアの状況についての他の調査結果を補強している。事務総長の報告書は昨年、政府軍が9歳の子どもたちを「殺したり、傷つけたり、恣意的に逮捕したり、勾留、拷問、虐待した」ことに責任があることを強調した。

報告書の中でアムネスティ・インターナショナルは安保理に対し、改めてシリアの状況について国際刑事裁判所(ICC)検察官に付託し、シリア政府への武器流入を止めるためにシリアに対する武器禁輸措置をなすよう要請している。
アムネスティはとくにロシアと中国政府に対して、シリア政府へのすべての武器、弾薬、軍事・治安・警察についての装備・訓練・人員の供給を直ちに中止するよう求めている。

アムネスティはまた安保理に対し、国際法の下での犯罪の命令もしくは実行に関わっているかもしれないバシャール・アル・アサド大統領たちの資産凍結を実行するよう要請している。

アムネスティはシリア当局に対して数多くの勧告をしてきた。もしそれらが実行されるなら、現在起きている人道に対する罪もしくは戦争犯罪に相当する広範な違反行為を減らすことができるだろう。

しかし、シリア政府は、調査はもちろん、これらの犯罪を終わらせる意向が全くない様子である。

「アムネスティや他の人権監視団体、国際メディアが近づかないようにするシリア政府の企ても監視から免れることはできませんでした。この報告書は、シリア当局が民間人たちに対して執拗かつ広範で残忍な攻撃に携わっていることを示す、さらに詳細な証拠を提供しています」とドナテラ・ロベラは述べた。

▼報告書『致命的な復仇 DEADLY REPRISALS』(英文)
http://www.amnesty.org/en/library/asset/MDE24/041/2012/en/30416985-883b-4e67-b386-0df14a79f694/mde240412012en.pdf

アムネスティ国際ニュース
2012年6月14日

http://www.amnesty.or.jp/news/2012/0614_3141.html?mm=1


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9 コメント

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精神科医 (宮地達夫)
2012-06-18 05:28:28
シリアは内戦状態にあると国連高官は認め、監視団は行動を中止した、国連の仲介は失敗した。4歳の子供が生きながら焼かれ、民兵は子供や女性を盾にしている。レバノンやトルコに逃れた難民は重火器、衣料品、食料を、ほムズへ届けている。ロシアは、海と空からミサイルと戦闘用ヘリを供給して、米国に避難されると「修理用で,合法的だ」と弁明する。いいニュースは、アサド政権内部で亀裂が起こったということだ、Alawites部族が分裂し始めた。現在の虐殺は、シリアの大部分を反体制派が握った事への最後の反応である。
NATO,英国、フランスは武力介入を示唆しているが,簡単なことではない.リビアと違い、シリアは中東全体の要である。インディペンデントのハミルトンの言うように「大衆的武装蜂起」しか選択肢はないだろう
http://www.nytimes.com/2012/06/10/world/middleeast/syrian-alawites-divided-by-assads-response-to-unrest.html?ref=middleeast&pagewanted=all&pagewanted=print

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精神科医 (宮地達夫)
2012-06-18 19:59:11
「アムネスティ・インターナショナルは安保理に対し、改めてシリアの状況について国際刑事裁判所(ICC)検察官に付託し、シリア政府への武器流入を止めるためにシリアに対する武器禁輸措置をなすよう要請している」これは理解できるけど、ロシア外相は既に答えを用意していて、クリントンに「反体制派を武装化させるのは止めろ」という。もう、あらゆる国が反体制派を武装化させるのに援助しているに、どういうべきですか・アムネスティ・インターナショナルさん?
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精神科医 (宮地達夫)
2012-06-18 21:22:27
国際社会の断固たる行動 て何ですか?具体的に挙げて下さい
今はシリアの反体制派につくか、アサドにつくか、どちらかの「味方」になるより選択肢はない。「断固たる行動」、結構な言葉です。しかし、この1年あらゆる会議で「断固たる行動:をとる決議はあったけど、断固たる行動がなかったからここまで来たという事です。どちらかの味方になるということは合法・非合法を問わず、どちらかの武装化と統一に援助するという事しかない。それだけの覚悟ありますか
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精神科医 (宮地達夫)
2012-06-19 06:32:01
ロシアの軍艦がシリアのTartusに着いた。表面上の目的はロシア国民の保護とロシア基地の防御であるがアサド政権存続に関する懸念がロシア政府に増大しているという事である。見限る前兆だろう
薔薇さんへ。アムネスティーの事務局ニュースに対しては'情報提供」と見なして直接の批判はしない方がいいのか、そうではなくて、アピールととって批判してもいいのかよくわかりません
http://www.guardian.co.uk/world/2012/jun/18/russian-navy-sail-syria-tartus/print
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Unknown (薔薇、または陽だまりの猫)
2012-06-19 10:36:17
該当の国際事務局発表ニュースは、明らかにアピール性濃厚なものですね。
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精神科医 (宮地達夫)
2012-06-20 09:09:48
米国の圧力で、シリアに向かっていたロシアの軍艦に英国の保険会社が船舶保険を与えることを拒否したために、ロシアに引き返したとのことです
http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/william-hague-halts-ship-carrying-russian-helicopters-to-syrian-forces-7866613.html
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精神科医 (宮地達夫)
2012-06-21 08:56:02
国際的交渉が難航する中で、G20の機会をとらえ、米国と英国は、ロシアのプチンと個別に交渉し、シリアのアサドが、平和交渉に参加するならば、アサドに恩赦を与えてもいい、という新しいメッセージをアサドに送ったようです。ロシア側も、軍艦が英国の保険会社に保険を止められてこれ以上の援助ができないという事情があり、一方、国連の監視団は依然、シリア国内にとどまる事を決めたものの、内戦を止められないという差し迫った状況にあり、この新しい二国イニシアティブが提案されましたがおそらくアサドはAlawiteの代表者として'死ぬまで戦わないと。自部族が全滅する」という恐怖があるので、簡単に交渉のテーブルには載らないでしょう。
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精神科医 (宮地達夫)
2012-06-21 20:43:05
今日、武装ヘリを載せてシリアに向かったロシア軍艦に対し、禁輸阻止の権限をもった英国の唯一の軍事ユニットー武装ボートSBSが、英国首相にたいし、乗船して船舶を確保し、英国海峡に曳航していいかの答えを求めてきた。キャメロンはemergency Cobra committee を開催し「あらゆる選択肢」があると結論、武装ボートが軍艦に乗船し軍艦を確保することもあり得ると。その後、彼はデンマークとオランダに相談したが、その後 急にロシア軍艦は向きを変えて、黒海に戻ったという事である。英国は、EUに圧力をかけて、シリアへの武器禁輸を、保険会社も含めて拡大しようとしているが、これは制裁の範囲を超えるかもしれないが、シリア市民を虐殺する手段は減る。それでも既にシリアはロシア製の武装ヘリを3機もっており、仮に、ロシア軍艦ーAleadーが
補給していれば、10%ヘリが増加すると英国高官はいう.更に Aleadは、防空ミサイルも補給しようとした
http://www.independent.co.uk/news/world/politics/tensions-between-uk-and-russia-soared-over-syriabound-helicopters-7869850.html?printService=print


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精神科医 (宮地達夫)
2012-06-21 21:18:03
readersupportednewsに、アムネスティー= 米国戦争のさくらというレポートが載った。Amnesty International USA – Suzanne Nossel は以前、クリントン政権の元でAmbassador Richard Holbrookeに任命された。又国務省で補佐官を勤め、人権とか、女性問題を扱った。Nosselは、Hillary Clinton, Madeleine Albright, Samantha Power and Susan Riceとも働いた。アムネスティーはCIA Red Cellに“Smart Powerと呼ばれており、米国の「進歩的外交」の一翼を担わされている。NATO:のアフガン戦争には、NATO: Keep the Progress Goingとオンラインで宣伝し、シカゴのバス停留所にも同じ宣伝をしている。こういうアムネスティーの偽善にたいしHuffington Postは、Afghanistan: The First Feminist War?という反応をした。要するにCIA のプロパガンダ部門に組み込まれてしまったわけだ。
 このことから、NGOは人権問題で信頼を得たいのなら、如何なる政府からも独立しているべきだという事になる
http://readersupportednews.org/opinion2/266-32/12020-amnestys-shilling-for-us-wars

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