吉見義明さんの公開質問に対して、橋下が回答。第 二次公開質問が提出されました

2013-08-01 10:33:53 | 社会
2013年7月29日
橋下市長への第二次公開質問状
中央大学 吉 見 義 明

私は、本年6月4日に、貴殿に公開質問状(以下、「第一次公開質問状」という)を差し上げ、7月5日までにご回答くださるよう要望いたしました。
しかるに、貴殿からは期日を過ぎても何らのご回答もありませんでした。
ところが、第二次公開質問状を提出するために大阪市役所に7月29日に参りますとお伝えしたところ、7月26日に貴殿のご回答(「7月26日付回答」という)が送付されてきました。
しかしながら、この7月26日付回答は、貴殿が「慰安婦」問題に関する「基本的な考え方」を述べられたもので、第一次公開質問状に対する回答になつておりません。
そこで、下記のとおり、第二次公開質問状を提出いたします。
第一次公開質問状および今回の第二次公開質問状について、2013年8月30日までにご回答ください。

第1 2013年6月4日付の第一次公開質問状について

第一次公開質問状に対して、貴殿はなぜきちんと回答されないのですか。
軍・官憲による暴行・脅迫を用いた連行の証拠はないと言い続けておられましたが、第一次公開質問状の第5項「軍・官憲による暴行・脅迫を用いた連行」で証拠が提示されたから回答できないのですか。

第2 最近の政府答弁書について

2013年6月10日、赤嶺政賢衆議院議員は、質問第102号「強制連行の裏付けがなかつたとする二〇〇七年答弁書に関する質問主意書」において、1993年8月4日に公表された「いわゆる従軍慰安婦問題の調査結果について」という文書は、法務省関係として、「ジャワ島セラマン所在の慰安所関係事件」にふれ、「判決事実の概要」として「〔元陸軍少佐Cは〕一九四四年二月末ころから同年四月までの間、部下の軍人や民間人が上記女性(「ジャワ島セラ手レほかの抑留所に収容中であつたオランダ人女性」)らに対し、売春をさせる目的で上記慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどしたような戦争犯罪行為を知り又は知り得たにもかかわらずこれを黙認した」と記述しているが、これは「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述」にあたることは明白で、答弁書は誤りである、と指摘しています。
これに対して、安倍内閣は、6月18日付の内閣衆質183第102号の答弁書において、「ご指摘のような記述がされている」と、記述の存在を認めています。
この事実を貴殿は認めますか。
これは「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような」証拠はなかつた、という日本政府や貴殿のこれまでの主張があやまりだつたことを示していますが、貴殿はこの誤りを認めますか。

第3 国家の意思としての泣致・人身売買という新しい論点について

1 貴殿は、本年5月27日の日本外国特派員協会での会見において、「2007年の閣議決定、日本政府の見解では、国家の意思としての粒致、国家の意思としての人身売買を裏付ける証拠はなかったという日本政府の見解が出ております」と述べておられます。
また、7月26日付回答では、「もし、日本だけが非難される理由が、戦時中、国家の意思として女性を粒致した、国家の意思として女性を売買したということがあるのであれば、それは事実と異なります」と述べておられます。
ここで言われている「国家の意思としての粒致、国家の意思としての人身売買」とはどういう意味ですか。
また、「国家の意思としての社致、国家の意思としての人身売買を裏付ける証拠はなかつたという日本政府の見解」が出ているというのは、間違いではないですか。
同年3月16日の政府答弁書(内閣衆質166第110号)では、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである」と述べているだけではありませんか。

2 同じく、 日本外国特派員協会での会見で、貴殿は、「国家の意思として組織的に女性を位致した、国家の意思として組織的に女性を入身売買した、この点を裏付ける証拠はありませんし、この事実について認めていないというのが日本の立場だと考えております」と述べておられますが、国家の意思としての組織的粒致、国家の意思としての組織的人身売買とは、どのようなことですか。
また、日本政府は、いつこのような見解を述べていますか。
貴殿はこれまで、「慰安婦という人たちが軍に暴行・脅迫を受けて連れて来られたという、その証拠がない」(2012年8月21日の記者会見)と主張しておられたのではありませんか。
いつから、また、なぜ、あなたはこのように見解を変えたのですか。

3 上記に関連して、日本軍は、居住の自由、外出の自由、廃業の自由、拒否する自由のなしや性奴隷制度としての「慰安婦」制度を組織的につくり、維持し、拡大したのではありませんか。
また、その下で、略取または誘拐または人身売買または権力乱用(半強待1)により、女性たちは慰安所に連れてこられて拘束され、軍人・軍属の性の相手
をさせられたのではありませんか。
貴殿はこれを認めますか。

第4 日本軍・日本政府の責任について

1 貴殿は、外国特派員協会で配布した「私の認識と見解」(2007年5月27日)の中で、また、7月26日付回答で「第二次世界大戦前から大戦中にかけて、日本兵が「慰安婦」を利用したことは、女性の尊厳と人権を蹂躙する、決して許されないものであることはいうまでもありません」と述べておられます。
これは、女性の名誉と尊厳を侵害し人権を蹂躙した主体は日本軍ではなく、慰安所に通つた個々の日本兵であるとするもので、性奴隷制としての「慰安婦」制度を組織的につくつた日本軍の責任を免責し、個々の兵士に責任を押し付けるものではありませんか。

2 貴殿は、7月26日付回答で、「日本兵が女性の人権を蹂躙したことについては痛切に反省し、慰安婦の方々には謝罪しなければなりません」と述べ、さらに「第二次世界大戦中のアメリカ軍、イギリス軍、フランス軍、 ドイツ軍、十日ソ連軍その他の軍においても、そして朝鮮戦争やベトナム戦争における韓国軍においても、この問題は存在しました」と述べておられます。
これは、各国軍の個々の兵士の責任を問う議論ではありませんか。
また、第二次世界大戦中のドイツ軍を別にすれば、慰安所を軍の施設として組織的かつ大規模に設置し、中央がそれを公認し、女性たちを自らまたは業者を使って集めた軍はないのではありませんか。
貴殿のこのような見解は、日本軍と日本政府の責任を否定ないしあいまいにすることになるのではありませんか。

3 貴殿は、外国特派員協会で、「韓国の方は、この河野談話をもつて、日本が拉致、人身売買したと理解をしています。しかし、日本の多くの歴史学者や多くの政治家は、これは日本国家がやった訳ではなく、民間業者だという主張、このような主張をする歴史学者や政治家も多いのです」と述べていますが、多くの歴史学者とは、だれのことですか。
そのような歴史学者の名前を数多くあげることができますか。
戦地・占領地で軍が略取や誘拐等を行った事実は明らかになつているのではありませんか。
植民地では業者が誘拐・人身売買等により女性たちを連行したことも明らかになっているのではありませんか。
この業者は、軍・官憲によつて選定された者であり、身分的には無給軍属または軍従属者であって、純粋の民間人とはいえないのではありませんか。
また、誘拐・人身売買等で連れて来られた女性たちは軍の施設である慰安所で被告にあつたのではありませんか。

4 中国やフィリピンやインドネシアで、軍・官憲による暴行・脅迫を用いた連行があったことは、第一次公開質問状で明らかですが、このような連行は例外的ではなく、また、責任者は日本軍によつて処罰されていないのではありませんか。
従って、暴行・脅迫を用いた連行を行つた旧々の軍人・官憲にだけ責任があり、日本軍には責任がない、とはとうてい言えないのではありませんか。

5 貴殿は、「日本は過去の過ちを真摯に反省し、慰安婦の方々には誠実な謝罪とお詫びを行うとともに、未来においてこのような悲劇を三度と繰り返さない決意をしなければなりません」「日本人は、旧日本兵が慰安婦を利用したことを直視し、真摯に反省、謝罪すべき立場にある」と述べておられますが、問題を起こした主体は日本軍であり、反省と謝罪をすべき主体は日本政府である、となぜ明言しないのですか。

第5 日本は世界からレイプ国家だと非難されているか

貴殿は、本年5月13日午前の記者会見で、「日本はレイプ国家だと、無理やり国をあげて、強制的に、意に反して慰安婦を粒致してそういう職業につかせたと、レイプ国家だというところで世界は非難している」と述べておられますが、どの国のだれが日本はレイプ国家だといっているのですか。
日本軍「慰安婦」問題に関する2007年のアメリカ議会下院の決議は、「世界に「慰安婦」として知られるようになった若い女性たちに対し日本軍が性奴隷制を強制した」と述べていますが、日本はレイプ国家だとはいっていません。
欧州議会決議・カナダ議会下院決議・オランダ議会下院決議も、それぞれ、日本軍が「若い女性を強制的に性奴隷状態においた」、「日本帝国軍のための「慰安婦」の性奴隷化や人身売買」が存在した、日本は「強制性奴隷制度」を運営した、と述べていますが、 日本はレイプ国家だとはいっていません。
2008年の韓国国会決議も「アジア・太平洋地域の女性を日本帝国主義の軍隊の性奴隷化した」と述べていますが、日本はレイプ国家だとはいっていません。
貴殿は、日本はレイプ国家だと世界が非難しているという証拠を示すことができますか。

第6 貴殿の回答する責任について

貴殿は、第一次公開質問状における私の質問について、「ご指摘の個々の歴史事実の認定については、歴史家が明確な証拠・論拠を示しながら、しつかりと議論しなければいけない事項です」と述べ、「意見を異にする歴史家同士で十分議論して、結論を出だしていただきたいと考えています」として、応答すべき責任を回連しようとしておられます。
しかしながら、貴殿は「個々の歴史事実」等について、かなり多くの断定をしておられますので、それらについて論拠を提示した上で私が反論し質問した公開質問状の各項目について、きちんと回答すべき責任があるのではありませんか。

第7 私に対する名誉毀損について

貴殿は、2012年8月24日に「吉見さんという方ですか、あの方が強制連行という事実というところまでは認められないという発言があつたりとか……」と述べられたことについて、7月26日付回答では、「朝鮮半島で」という限定と、「権力による」という限定をつけずに発言したことは「言葉足らずでありました」とお認めになりました。
しかしながら、上記の二つの限定をつけたとしても、軍慰安所で強制があったこと、未成年者を連行したこと、中国・東南アジアなどでは軍・官憲による暴行・脅迫を用いた連行があつたことが確認できること、朝鮮半島で誘拐や人身売買による強制的連行があつたことを指摘し続けてきた私の見解を紹介せず、ご自身の説の補強のために、そこだけを取り出して紹介するのは、不当だとは思われませんか。
また、2012年8月24日の上記ご発言を「言葉たらずでありました」と述べられるだけではなくで、貴殿が本年5月27日の外国特派員協会での会見でアメリカ政府とアメリカ国民に謝罪されたように、いさぎよく上記発言を撤回し、謝罪するご意思はないのでしょうか。

以上

「質問第一〇二号」(2013年6月10日)・「内閣衆質一人三第一〇二号」(2013年6月18日)〔資料1〕、『東京新聞』2013年6月25日記事〔資料2〕、「いわゆる従軍慰安婦問題の調査結果について」(1993年8月4日)の「法務省関係」〔資料3〕。
「慰安婦」の身分について、厚生省の実本博次援護局長は、「戦地におつて施設、宿舎等の便宜を与えるためには、何か身分がなければなりませんので、無給の軍属というふうな身分を与えて宿舎その他の便宜を供与していた、こういう実態でございます」と答弁している(「第五十人国会衆議院社会労働委員会議録」第21号、1968年4月26日)〔資料4〕。
「慰安婦」カミ無給の軍属であれば、業者も当然無給の軍属ということになるであろう。また、1943年前後には、業者は「軍従属者」という身分であり、軍発給の証明書をもつていた(在ハノイ栗山茂事務総長「軍従属者二対スル旅行許可ノ件」1943年3月10日、外務省資料)〔資料5〕。
 アメリカ議会下院決議・オランダ議会下院決議・カナダ議会下院決議・欧州議会決議・韓国国会決議〔資料6〕。

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橋下徹市長よりの回答 2013年7月26日








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Fight for Justice!日本軍「慰安婦」忘却への抵抗・未来の責任 ウェブサイトがオープンしました


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橋下徹市長への公開質問状 2013年6月4日 など、日本の戦争責任資料センターHPで読めます
http://space.geocities.jp/japanwarres/
*桜内文城衆議院議員名誉棄損事件訴状 2013年7月26日もあります

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24 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2013-08-03 22:44:18
旧日本軍の従軍慰安婦を巡る橋下徹大阪市長(日本維新の会共同代表)の発言で名誉を傷つけられたとして、吉見義明・中央大教授が4日、発言の撤回と謝罪を求め、橋下氏への公開質問状を市に提出した。十分な回答がない場合は、提訴も検討するという。

との事らしいが、吉見さんはなんで第二次公開質問を提出したのでしょうか?十分な回答がない場合は提訴も検討するということなら第二次公開質問をしないで提訴したらいいと思います。ブログで自己の主張を展開するより司法の判断に委ねた方がよほど公平で明確な結果が出ると思いますよ。是非、提訴して司法の場で主張の展開をしてください。期待していますよ。
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Unknown (Unknown)
2013-09-02 07:26:34
>今回の第二次公開質問状について、2013年8月30日までにご回答ください。

吉見さんへの回答はありましたでしょうか。ありましたらその内容を公開してください。
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ありません (薔薇、または陽だまりの猫)
2013-09-02 09:22:34
8月末まででは、回答があったと言う情報はありません
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Unknown (Unknown)
2013-09-03 08:35:58
薔薇、または陽だまりの猫さん、ご連絡いただきありがとうございます。
では、進展がありましたらお知らせください。私としては当初、十分な回答がない場合は訴訟も検討するとの事でしたから初志貫徹でいいのではないかと思っています。
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Unknown (Unknown)
2013-09-23 00:44:34
http://www.news-us.jp/article/375443394.html
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Unknown (Unknown)
2013-09-23 11:53:55
韓国が問題にしている慰安婦は「洋公主」と言われている朝鮮戦争時の韓国人慰安婦と第二次世界大戦時の慰安婦と混同していないか?強制連行とか性奴隷とかの表現は「洋公主」のことを言っているのだろう。
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Unknown (Unknown)
2013-09-25 00:25:43
吉見さんこれをきっかけに洋公主についても正確に研究してください。
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Unknown (Unknown)
2013-10-02 09:55:42
吉見さん第二次公開質問の回答はありましたでしょうか?教えてください。

これを見ると慰安婦問題は朝日新聞が捏造したものらしいですが、それに吉見さんも加担していたようですね。

http://www.ianfu.net/opinion/nisioka.html
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Unknown (Unknown)
2013-10-08 13:39:10
承認って、気にいらんものは拒否

左翼新聞らしいですね
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Unknown (Unknown)
2013-10-09 09:09:03
韓国政府自体がこの問題を解決したがっていない。人道を全面に出すなら、韓国政府がまず彼女たちを救済して、後に日本政府と議論なり裁判なりすればいい。
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