弁護士安田好弘を擁護する/宮崎学

2006-03-15 22:01:06 | 社会
 さて、昨日の報道であるが、ワシの友人の安田好弘弁護士が自身が関わる裁判に出廷しなかったとして批判されている。

 
まずはその裁判の事件と経緯について簡単であるが書いておく。

光市事件
1999年山口県光市の会社員宅で妻(当時23歳)と長女(同11か月)が殺害された事件。
当時18歳の少年の被告(現在24歳)は殺人罪等に問われ、1、2審で無期懲役の判決を受けたが、死刑を求刑していた検察が最高裁に上告。
今月、被告の弁護人2名が辞任し、安田弁護士と足立弁護士が新たな弁護人となった。上告審が14日に行われる予定だったが、安田、足立の両弁護士が欠席し口頭弁論が開けなかった。

最高裁第3小法廷(浜田邦夫裁判長)
「正当な理由に基づかない不出頭で、極めて遺憾」
検察
「欠席は裁判を遅らせるのが明らか。弁護人不在のまま弁論を行い、結審すべき」
被害者の家族
「これほどの屈辱を受けたのは初めてだ」

 以上のように一斉に批判の声が出ているが、安田弁護士達は以下の主旨で弁論期日の6月への延期申請をしていた。

・当日は日弁連が開催する裁判員制度の模擬裁判リハーサルへの出席予定がある。
・先月、被告と接見したところ事件について新たな申立があった。
・今月、前弁護人から引継ぎをしたばかりであり、記録を精査する必要がある。被告人からも更に事情聴取して事実究明する必要がある。そのための期間として3ヶ月は必要。
・弁護人は、裁判を長引かせる意図は全くない。裁判を誤りないものにするためには、被告からの聴取、記録の精査が不可欠。

 この申請は今月7日付けで出され、翌日却下されている。そして昨日の事態に至ったわけであるが、裁判所の「正当な理由のない欠席」とは一体なんや?「正当な理由」は出しとるやないか。日弁連の会合、聴取や記録の精査をしたい、今月から弁護人となったばかりで時間が足りないというのはどう考えてもどれも真っ当な理由である。

 この事件は、最高裁で「死刑」判決が出る可能性があると言われている。そのような裁判で、前任者からの引継ぎを半月で済ませて出てこいというのは無茶な話しである。裁判所と検察がいまから同じ結果を想定しているのかは知らんが、「理由などどうでもいいからさっさと終わらせたい」と言わんばかりのこの強引な態度は、インテリジェンスのかけらもない反応といわざるを得ない。

 また、メディアは、「極めて異例」などという相変わらずの表現を使って、安田弁護士が死刑廃止運動のリーダー的存在であるために、死刑判決が出る可能性のあるこの裁判を遅らせているかのような印象を抱かせる報道をしているようである。しかし批判すべきは裁判所・検察などの安田弁護士へのヒステリックな反応である。そのような感情に流されることなく、事件の真相が一体何であるかを冷静に分析し報道するのがメディアの役割である。

 ワシは自分の愛する女房や子供が殺された時、お上に犯人を殺してもらう(死刑)という思想そのものを良しとしない。毎度言うのもアホらしいが、大きな刑事裁判のたびに巻き起こる「早く終わらせろ、早く吊るせ」的な世論にまたも迎合する司法官僚とメディアの姿が露呈したと指摘しておく。


http://www.miyazakimanabu.com/judicial/000170.php


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3 コメント

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同じ女性として、 (淑子)
2006-03-16 18:51:56
ただ一言だけ、私の思うところを述べさせて頂けませんか?

所詮、宮崎氏にとって、つまらない感傷なのかも知れませんが・・・。この被害者の女性は、いわゆる「死姦」を犯されている訳ですよね。彼女は殺された後も、なお人権を蹂躙されています。果たして彼女にとって、人権とは何だったのでしょうか?
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私は男性ですが (harumi-s)
2006-03-16 21:25:11
淑子さんのコメントに深く共感します。

宮崎学が、そのようなことに思いを致すことが出来ない感性の持ち主であるとは思いたくないのですが。
返信する
Unknown (私も男性ですが)
2006-03-28 10:47:08
同じく淑子さんのコメントに深く共感します。



> 被害者の家族

>「これほどの屈辱を受けたのは初めてだ」



という発言があるにも関わらず、書かれている最後の4行、非常に残念です。



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