「食卓にあがる放射能」チェルノブイリ救援・中部 :河田昌東さん質疑応答内容/NoNukeML

2011-06-11 12:38:24 | 社会
とーちです。(NoNukeML)


「食卓にあがる放射能」食べ物と水と空気の汚染をどう考えいかに行動するか
の質疑応答部分要約をテキストで作成してくださったので、下記に公開しました。
http://japan.NoNukesAsiaForum.org/japanese/20110529/

関西に避難された質問者の方が、避難しても放射能が野菜の姿になって追いかけ
てくる、という言葉に胸がつまります。

下記にマイクロソフトワード形式のファイルでも上げています。
http://japan.NoNukesAsiaForum.org/japanese/20110529/20110529_osaka.doc

以上です。
さて、それでは出かけましょう。神戸はちょうど雨が止んでいます。0.11uSv。

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「食卓にあがる放射能」質疑応答内容
2011年5月29日にエルおおさかでチェルノブイリ救援・中部 理事:河田昌東さんを迎えて行われた集会の質疑応答内容です。
講演本体は下記より動画でご覧下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=5D_-_3l6c-U

「食卓にあがる放射能」チェルノブイリ救援・中部 理事:河田昌東さん HD


本ページのマイクロソフトワード形式のファイルはこちらからダウンロードください。
http://japan.NoNukesAsiaForum.org/japanese/20110529/20110529_osaka.doc

ノーニュークス・アジアフォーラムジャパン


■質問:
関東に娘夫婦が住んでいて、幼い孫がいます。娘は放射性物質を呼吸で取り込むことを心配して、孫にマスクをさせています。しかし地域の人はマスクをしていない。本人たちはその中でもマスクを子どもたちにさせなければならないとか、空気を取り込みたくないという気持ちが非常に強い。このことをどのように考えたらよいかご教示ください。
河田先生:
そういう心配をしている人はたくさんいます。住んでいるところの土壌の汚染レベルがわかりませんが、マスクはした方がいいと思います。福島と比べれば汚染のレベルは低いので、それほど神経質にならずに暮らす必要があると思います。しかし、水や食べ物については、小さいお子さんがいるなら産地を選ぶしかありません。健康に気をつけている人は玄米を好みますが、産地によって玄米は危ない可能性があるので白米にしていただきたい。セシウムはほとんどが表面の皮のところにたまりますから。このように、自分のできる対策をしていく必要があります。
これから問題になるのは、こういう汚染環境の中でどう生きていくかです。今も福島原発からだらだらと蒸気が出ていますが、放射能のほとんどは10キロ、20キロ圏内に落ちています。50キロ、100キロの遠くまでは飛んでいっていない。もちろん高感度の測定器を使って測れば出ます。ですが空間線量率で測って、大きな影響が出るという状況ではない。これは実際に福島に行ってわかったことですが、測定器で測りながら県内を走り回ると、あの山がついたてになったんだな、この谷を放射能が通ったんだな、というのがよくわかります。もうひとつ発見したことは、トンネルです。トンネルに1メートルも入れば、線量計がピタッと止む。飯舘村でもそうです。つまり、トンネルは核シェルターになっています。今後も爆発があれば別ですが、このまま終息するなら、水や土壌の汚染に気をつけていけばいいと思います。
私たちがこれからやろうとしているのは、次のようなことです。これを仮に「生活被ばく線量」と名付けたいと思います。私たちはある空間線量率で暮らしていますが、幼稚園の子どもとか主婦、サラリーマン、農家の人など、いろいろなライフスタイルがある。それによって被曝線量は大幅に違うのです。地面からの距離も違います。どういうところで何時間過ごすかも違います。そういうことを測定しようと思っています。積算線量という、たとえば朝7時~翌朝7時までの合計の被曝線量を測定して、1週間くらい日記をつけていただいたら、どういうライフスタイルの方が被曝しやすいか、どういう所ならいてもいいか、いてはいけないか、わかるはずです。それを家族単位で調べて、ライフスタイル毎の典型的な被曝線量を出していきたいと思います。
それから、ある障害者の関係の保育所に頼まれて行ったのですが、近くの測定地点があって、非常に空間線量が高く、みなさん、非常に心配している。しかし土地問題があって表土剥離ができない。借地なのです。相談を受けて実際に測ってみると、同じ敷地の中でも値が違うのです。子どもたちの遊ぶ園庭は3~4マイクロシーベルトと線量が高い。雨どいの下も8マイクロシーベルトとかなり高い。雨が集まるところだからです。ところが、部屋の中は意外に少ない。その縁側から1メートル入ると少ないのです。ということで、子どもたちをどこで遊ばせれば相対的に安全かということもわかります。たまたま園庭はプラスチックの人工芝を敷いていましたので、直感的に、どうせ表面しか汚染していないからと思って人工芝をとってみたら、線量が大幅に下がりました。ちょうどいい機会だから、人工芝を取り換えたらどうかと助言しました。そんなふうに、これから汚染の中で生きるについては、非常に具体的に、きめ細かく対応していかなければならない。
食べ物についてもそうです。たとえばセシウムについては、皆さんご存知のペクチンという物質があります。ジャムなどに使われています。これが、非常に強くセシウムと結合して、体外に排出する働きをすることがわかっています。ベラルーシの研究者が盛んに研究して本も書いています。もちろんゼロにはなりません。しかし食べ物が体内で分解した際にセシウムと結合して体外に排出されるので、吸収量は3分の1くらいになる。放射線の影響で発生するフリーラジカルについては、簡単にいえば、抗酸化作用のある食品を摂取することでもかなり対応できることがわかっています。あるいは、トマト、キュウリ、ナスなど、汚染が起こりにくい野菜を食べる。もちろん産地を選ぶことも大事です。しかし、日本中が汚染されているという事態ですから、できれば赤ちゃん、子どもたちにはきれいなものを食べてほしい。50歳を過ぎて、これから黙っていてもがんになる可能性のある人は、頑張って食べましょう。でもなかなかそれを実行に移してくれる人は少ない。しかし否応なしにそうならざるをえなくなると思います。そうしないと、未来を守っていけないと思います。
■質問:
私は大阪に住んでいて、空気からの被曝が気になっています。今の話ですと、食品からの被曝に気をつけるべきで、大阪府内では空気による被曝はあまり心配しなくていいのでしょうか。
河田先生:
そうですね。それは断言できます。福島県内では粉塵が舞ったりするので危ないのです。高感度の測定器で測ればもちろん大阪でも出ますが、それが健康に影響を与えるかどうかといえば、大丈夫だと思います。それは名古屋でも同じです。群馬県あたりだと、微妙になってきます。土壌汚染のレベルが高いということは、粉塵が舞っているということになるからです。
■質問:
ICRPによって発がん率が0.5パーセント上昇するとされている100ミリシーベルトという値は、自然界の放射能から受ける被ばく量を含んだ値ですか?また、あくまで累積の被曝量でということですか?
河田先生:
よく1ミリシーベルトと言われるのは、プラス1と言う意味です。我々は黙っていても自然界から被曝しています。これはもう、地球上に生きている限り避けようがない。その値に加えて人為的に1ミリシーベルトの被曝を増やすことを避けよう、プラスされる被曝は1ミリ以下に抑えよう、ということです。また、さきほどの100ミリと言うのは、あくまでも広島、長崎の被害から計算された外部被曝のみの値です。しかも、この値はがん、白血病のみについてそう言っているのです。原発事故の際に問題になるのは、ほとんどが内部被曝です。チェルノブイリでも、ガン、白血病は数パーセントしか起こっていません。それを基準にするということは、他の病気を全部切り捨てるということになります。あれは間違っていると思います。
余談ですが、福島に行って本当にとても驚いたのは、長崎大学の山下さんという教授が福島県のアドバイザーとしてこう言っているというのです。「広島と長崎は福島に負けた」と。意味がわかりますか?広島、長崎よりも福島の方が悪いよ、という意味です。これは、広島や長崎の被爆者への冒涜だと思います。被曝者たちは60年間裁判をやって、やっと勝ったのです。それを全く無視しています。
■質問:
食糧の問題にかかわってきたので食品に関心があります。生産地のことも気になっていました。東北、福島での農業について、そこの農産物を食べて応援しようという動き、有機農業を応援してきたグループが頑張っていることについて、とても複雑な思いがしています。どうお考えになりますか?
河田先生:
その問題については、私も非常に悩みます。たとえば生協は、安全な食品を産直して生産者も消費者も守るという活動をしてきました。しかし生産者の作物の中から、どんどん国の基準を超えるものがでてきている。それを切れば生産者は困るし、それを受け入れれば消費者が被曝する。大変なジレンマです。この問題は、ほんとうに簡単ではないと思います。この問題をどうしたら解決できるかを話し合うため、6月25日に名古屋でシンポジウムを行います。生産者や消費者、専門家などが一堂に会して、どうしたらいいのか考えます。本来であればこれは、国や東京電力が、基準値を超えた作物をすべて買い上げるべきです。しかし国は今、基準値以上のものはどこかに置いておきなさいと言っているだけです。置いておいて、その後どうやって処分するのか、方針は全くない。農家は困っています。隅において腐らせているだけです。しかも基準が500ベクレルですから、499なら出荷してもよいということになります。
今、そういう問題に対して、自分たちの力で自分たちの身を守るための自主測定グループがあちこちで立ち上がりつつあります。自分たちで食品の測定をしようというのです。しかし基準以上のものが出たらどうするか?これはとても悩ましい問題です。冷静に考えれば、政府の暫定基準は危険です。この基準値は下げるべきだと思います。そうしなければ子どもの未来は守れません。しかしそうすれば今の生産者が困ります。どうしたらいいかみなさんも考えてください。私にはわかりません。
■質問:
私は、3月の13日に東京から大阪に避難してきました。大阪に移動してきたけれど、結局は白菜やキャベツの姿になって放射能が追いかけてくるんだなあという感想をもっています。
大阪のスーパーでも、確実に向こうの野菜を売っています。しかも、これまで書かれていた産地がだんだん書かれなくなっていると感じます。偽装という問題もあります。それでも子どもはやっぱり守りたいので、汚染されているのかどうか、どの程度の汚染なのかをしっかりと書くのがいいのではないかと思います。汚染されていても基準値以下なら市場に出回ります。今日の話を聞いて、基準値以下でもたくさん食べれば蓄積されるとわかりました。40代以上の人はこれまで原発を許してきて、良心的な人々の警告を無視してきたのです。汚染の高いものはお父ちゃん、お母ちゃんが食べて、安全なものは子どもに食べさせるべきです。だから関西の安全な食材はどんどん福島の給食などに回してもらったらいい。そして安いけど基準値を超えているものは大人が食べる、というようにしっかり選択できるようになれば余計な不安もなくなるし、食べられるものなのに福島産だから食べないというようなこともなくなるのではないかと思います。
放射能汚染の測定はしているか、どこの産地のものか、というふうに聞くだけで、非国民であるかのように思われるようになっていくのが怖いと思います。福島の人たちも、マスクをしているだけで「不安をあおるのか」と白い目で見られる。そのあたりをみなさんが意識して、文化を変えていけたらと思います。玄米は好きで食べていましたが、土壌が汚染されていてそこで米ができると、皮をはいでもダメですか?
河田先生:
玄米は産地によります。植える前に5センチ表土を剥離すれば大丈夫です。私たちが知り合いになった果樹園で実験をやりました。桃の畑です。そこは3~4マイクロシーベルトです。表土に雑草がたくさん生えていて、その雑草をとりますと、放射線量は大幅に減り、五分の一から六分の一になりました。ですからそこで働く人の被曝はもちろん減りました。地面もきれいになりましたから、そこでとれる桃もきれいなものが取れると思います。ですから、今のうちに土壌対策をするべきだと思います。
しかし農水省は何を勘違いしたのか、飯舘村にひまわりを植えると言っています。今たった表面5センチしか汚染していない畑をわざわざ耕して、30センチまで汚染を拡大してしまう。そこにひまわりや菜種を植えたとしても、何十年もかかります。これは我々の経験です。セシウムは土壌にがっちりくっつきます。ウクライナの例で言うと、セシウムは表面から20センチくらいまであります。ストロンチウムは40センチくらいまで拡散している。そのような状況では、表面を剥離することは出来ないのです。我々は菜種を植えて、時間はかかるけれどもゆっくり浄化しようという作戦をとっています。しかし今の福島であれば、表土を剥離すれば下はきれいですから、すぐに対策ができるのです。にもかかわらず、あえて何十年もかかるような状況を作ってしまっている。農水省の副大臣らは大名行列のようにして、我々のウクライナの畑を視察しにいきました。にもかかわらず、帰ってきたらまだそういうことをやる。要するに、ちゃんと考えていないとしか思えません。しかも来年の3月までに結論を出すというのですから、まじめにやる気はないのだろう、おそらく何もできないだろうと思います。
■質問:
関西のスーパーにも東日本産の生産物が入ってきます。政府の基準値があまりにも高いので、基準値以下ではあるけれど汚染されている野菜が店頭に並んでいます。その状況を見て思うのですが、自分自身で測定する方法はないのでしょうか。ガイガーカウンターでは、食べ物の表面に当てただけでは測れないと聞きました。自分自身でできる方法があるのかどうかを教えてください。また、これからどんどん海の汚染が進んでいきますが、日本海側の海産物についてはどうでしょうか。
河田先生:
結論から言うと、自分で測るのは難しいです。あくまでも空間線量や土壌がかなり汚染されているときはガイガーカウンターで測れますが、野菜の汚染が何ベクレルかを測ろうとしたら、数百万円の機器が必要です。それも分厚い鉛の入れ物で自然放射能をシャットアウトして測らなければなりませんし、個人でやるのは難しい。仮に野菜の汚染が何万ベクレルと高ければガイガーカウンターで測れることもありますが、500ベクレルの基準を2~3倍越したくらいの値であれば、無理だと思います。
ただ、今まではなかった機械なのですが、最近では核種まではわからないけれど数十ベクレル程度なら検出できるという装置も開発されました。実は今日、福島市内でその機械の実演をしているはずです。市民がいろんな野菜を持ってきて、それを測る。車に乗せて運べる移動型の装置です。我々のスタッフがその実演を見るために、福島に行っています。その程度の精度であれば、100万円出せば購入できます。それでも、個人では難しいですね。生協単位などでないと難しいでしょう。日本海の魚は、長期的に見れば汚染は拡散していくと思いますが、当分は大丈夫だと思います。
■質問:
今日は食べ物のことなので興味を持って参加しました。小さな子どもがいるので、大阪からでさえ逃げ出したいような気持になります。京都などへ行って、道の駅で産地の分かる野菜を買ったりしています。最近のニュースで、放射性のがれきを京都で受け入れるとか、飯舘村の牛を引き受けるとか、そういうことを聞いてショックを受けています。いろいろな意味での温度差を感じます。関東でも普通に暮らしている人もいるし、テレビものんきなバラエティなどやっているし、お茶は測定するかどうかは自由で拒否している人もいるとか。私から見ると、首都圏など周辺の人たちがどうしてもっと声を上げないのかなあと思ったりします。ネットを見ていればいろいろな情報がありますが、新聞を見るだけだと安全だと思うようになってしまうかもしれません。どうすれば近郊の関東の方たちや関西の人たちがもっと声を上げるようになるのでしょうか。
河田先生:
私に聞かれても困ってしまいます。でも、人というのは事実を知らないと行動できないものです。今はマスコミも政府も、いかにして事実を隠すかというスタンスで行動していますね。あなたも言ったように、クールに、冷静に、事実は事実としてまず見よう、そのために測定はしよう、結果は公表しよう、その結果を見てどうするかは自分で決める、政府は決めるな。そのように言いたいのですね。そのためには、いろいろなきっかけを作る必要があります。
私の知人がやっている母乳ネットでは、母乳を集めて測定しています。もちろん基準以下ですが、9検体から放射性物質が検出されています。これは非常にインパクトがあります。赤ちゃんに飲ませているわけですから。最近、福島、茨木、宮城など市町村を回って、母子手帳を持っている方には市町村が無料で母乳の測定をするべきだと説得をして回っています。かなりの市町村では好意的に受け止めているので、そのうちにデータが出てくるかもしれません。また、セシウムを食べていれば、必ず尿に出てきます。汚染されたものを食べた後、きれいなものを食べ続けていれば、セシウムは2ヶ月くらいで体外にでてきます。出るというのは、便や尿になってでてくるのです。だから尿を調べて計算式を使えば、現在どの程度体の中にセシウムがあるかを推定することができます。おしっこ測定運動もこれから始まると思います。そのようにして、みんなが現実を知ろうとするのも一つのやり方かと思います。知りたくないことも知らないといけないということですね。
■質問:
汚染地域は福島全域と言うべきでしょうか。表土をはがすのは、どれくらいの範囲をやれば汚染を減らせますか?内部被曝を明らかにするために、ウサギの検査をするのはどうでしょうか。
河田先生:
居住禁止区域をどう設定するかは難しい問題です。理想的には、10ミリシーベルトを超えるところでの居住はやめた方がよい。しかしそうすると福島市も郡山市も含まれてしまいます。みなさんは、あくまでも基準というのは、安全性を基にしてきめられていると思っておられるかもしれませんが、それは違います。科学的に、健康にとっての安全性を考えれば、限りなく1ミリ以下でなくてはいけません。ところがICRPが1ミリから20ミリという幅を持たせているのは、社会的なインパクトとの兼ね合いで決めればいいと言っているからなのです。できるなら、5ミリ以下でしょうか。理想的にはそう思いますが、今の状態ではそれは非現実的なのです。福島の場合、それは無理なのです。今の政府の決め方は、不十分としか言いようがありません。
 土壌は、剥離すればよいことはわかっています。実際に、剥離したら大幅に減りました。福島県内の果樹園農家に、組合単位などで取り組むよう勧めるつもりですが、問題は剥離した土をどうするかです。とりあえず私たちは農園の隅に深い穴を掘って埋めてもらいます。そうするより仕方がないのです。校庭もそうです。そして、将来的には東京電力に持って行ってもらおうと考えています。それしかないのです。政府がうんといえば霞が関に運んで国会の周りに置いてレンガで囲むとか。それが責任というものでしょう。
理想的には表土を剥離すればいいのですが、膨大な面積です。果樹園は比較的楽ですが、水田や畑はでこぼこしていますから5センチきっちり剥ぐのは大変です。これをどうするか。内部被曝は、ホールボディカウンターで調べれば一目瞭然です。そうすれば周りの人も気がつくでしょう。でも測定器の台数が少ない。国では、どうも文科省が3台くらい持っているらしいですが、原発に使っているので、住民を測るつもりはないと言っているようです。我々も実は最初に90年に代表2人を汚染地域に送った時、非常に心配しました。1週間くらいの旅の後、浜松医大にホールボディカウンターがあるので念のために測ってもらいました。
■質問:
二本松市は市民20人を抽出してホールボディカウンターで内部被曝を調べるそうですが。
河田先生:
二本松市は今、非常にいい対応を始めています。郡山市は最初に校庭の表土剥離をしたのですが、我々の意見を聞かずに、とにかく剥いで産廃処分場に持っていこうとしたんです。処分場付近の住民が起こるのは当然ですよ。それであわてて持って帰ってきて、校庭の真ん中に捨ててあるのです。これは非常に危険ですよ。なぜなら一番汚染のひどいところばかりを集めてあるのですから。別の幼稚園でも、園庭の表面は下がっているけれど、剥離した表土が積んである近くは10マイクロシーベルトを超えています。そんなところで幼児が遊んでいるんですよ。これでは全く駄目です。地下3メートルくらいに掘って、そこに埋めて、その上に30センチか50センチのきれいな土を覆土すれば、遮蔽されますからその上でもなんとか過ごせる。そういう方式を提案し、二本松市はそれを採用しました。
■質問:
神戸市から来ました。私は保育園で給食を作っています。0歳から5歳までの子どもを預かっていますので、家庭とはまた違いますが、子どもたちに安全なものを提供したいと思っています。年齢が上の者は汚染されたものも食べるということは重々心に留めながらも、どのあたりの産地のものまでが大丈夫なのでしょうか。ものすごく身勝手な問いだとは思うのですが…。
河田先生:
個別の地名を上げることはしませんが、今の汚染パターンを見ると、奥羽山脈が大きな屏風となっているようです。山形の南の方は汚染が見られますが、秋田、青森はほとんどありません。岩手は一部で牧草の汚染が出ていますが、大半は大丈夫です。宮城は牛乳から出たりしています。おおざっぱにいえば、関東以西または東北の日本海側、北海道は大丈夫です。しかし、そのようにして国内でお互いに拒絶しあわなければならないことの方が、本当は大きな問題だと思います。
■質問:
うちは和歌山で畑をしているのですが、遅れて出てきた菜の花の実がこぶのようになって通常の形と違うものが増えています。今回の事故と関連があるのではないかと思っています。表土を5センチ剥離すればよいとのことですが、これを取り除いても再び堆積することはないのでしょうか。
河田先生:
原発からは今もだらだらと放射性物質が出ているのですが、大体10キロ、20キロの範囲に落ちています。あからさまな土壌汚染としては来ていません。もう1回爆発が起こればその限りではありませんから、そうならないことを祈っています。また、台風の季節がきますと、今は近場を汚染しているものが、台風で遠くまで飛んで、その分だけ汚染が広がる可能性があります。だからとにかく一刻も早く出ないようにする、それが課題だと思います。
■質問:
プルトニウムによる汚染についてあまり情報がありませんがどうなっているのでしょうか。
河田先生:
プルトニウムについては、原発の近くでは測定すれば出てきます。しかし30キロ、50キロ、100キロと離れたところでは、おそらく出てきません。検出されるとしても、何千立方メートルの空気の中で1ベクレルとかその程度ですから、確率的にそれを恐れることはないと思います。ただプルトニウムは固有の毒性が強いのでマスコミなどで騒がれますが、私自身はプルトニウムによる実際的な被害は起こらないと思います。しかし、敷地内で働いている作業員の方たちにとっては問題となります。防護服やマスクは付けていても、微量に吸い込んでいる可能性はあるので、将来的に肺がんなどの健康被害が出る可能性はあります。
■質問:
原発の影響の恐ろしさをひしひしと感じています。新たなエネルギーとして、先生が具体的にイメージされているものを教えてください。
河田先生:
最近では首相がもっぱら自然エネルギーと言っていますが、日本でいう自然エネルギーは太陽光発電や風力発電が中心です。それはそれでよいのですが、潜在的な能力としてはバイオエネルギーの方がはるかに高いのです。最近、国連の科学委員会の報告も出ましたが、将来20年を見たときに、太陽エネルギーよりも何倍かバイオエネルギーの方が採用される見込みであるとのことです。実際にヨーロッパでは太陽光も風力もやっていますが、いま急速に浸透しているのはバイオガスエネルギーです。
私たちが関わっているウクライナでも、昨年からミルクの工場に大掛かりなバイオガス発電所を作りました。そこで飼っている牛4000頭ぶんの糞尿を燃料にしています。コジェネレーションで電気も熱もつくり、使いきれない電気は送電線で政府に売っています。そういう時代になっています。ドイツやスウェーデンでは高速道路にバイオガススタンドが建てられていて、天然ガス車がそこでバイオガスを注入して走るのです。スウェーデンの空港でもバイオガススタンドが稼働しています。スウェーデンではまた、実験的ですがバイオガスによる電車が2008年から走っています。
私たちもウクライナでバイオガスの生産も始めていますが、私個人としては、そういう汚染したところで食用作物を作れないなら、荒れ地にするくらいなら、時間はかかるかもしれないけれど、浄化しながらバイオエネルギーを作って、原発に代わるエネルギーを作ることも必要ではないかと思います。でも、日本政府についてはバイオガスエネルギーに全く関心がないようです。
しかしヨーロッパ、とくにスウェーデンはバイオガスに非常に強い関心を持っています。バイオガスというのは、従来は東南アジアなどで、各家庭レベルで小規模にやるのが常識になっていました。しかし、ヨーロッパではバイオガスの大規模化が進んでいます。
ドイツのある村では、1000人くらいの小さな村ですが、家畜の糞尿と農作物のバイオガスだけで発電をしていて、100%の電気とコジェネレーションによるお湯を各家庭に供給しています。80℃のお湯が1年中使えます。借金をして建設しましたが、数年後には元が取れる。あとはただです。しかも原料はいつでも必ずある。完全にコンピューター化されていますから、オペレーターは一人だけです。バクテリアの栄養になる窒素分がいくらあるか、リン酸が足りない、などをコンピューターで見てタッチパネルを押すだけです。これはドイツでも最先端なので観光バスで見に来ています。訪問者リストを見たら日本のJTBも見に来ていましたから、これから観光ルートになるかもしれません。ドイツは脱原発を宣言しましたが、それはこれだけのベースがあるからです。やればできるという自信があるからです。
これは政策の問題です。いつまでも政府が原発に背中を引っ張られていたのでは実現できないのだと思います。



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