平和憲法に真っ向背反 石破幹事長の「軍法会議設置」発言/東京新聞・特報(動画・追記あり)

2013-07-17 00:21:28 | 社会
自民党は同党の改憲草案で、憲法9条を変更して自衛隊を「国防軍」にすることを掲げた。
それに伴い、国防軍に「審判所」という現行憲法では禁じられている軍法会議(軍事法廷)の設置を盛り込んでいる。
防衛相の経験もある同党の石破茂幹事長は4月に出演したテレビ番組で、審判所設置に強い意気込みを見せた。
「死刑」「懲役300年」など不穏な単語も飛び出した石破氏の発言とは-。 
(小倉貞俊記者)

 「軍事法廷とは何か。すべて軍の規律を維持するためのものです」。
4月21日放映の「週刊BS-TBS報道部」。
憲法改正を問うというテーマで招かれた石破氏は持論を展開した。

 国防軍になると、具体的に何が変わるのかと問われた石破氏はまず、「(改憲草案に)軍事裁判所的なものを創設する規定がある」と述べた。

 改憲案9条2の5項には「軍人その他の公務員が職務の実施に伴う罪か国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、国防軍に審判所を置く」とある。

 続けて石破氏は、現在の自衛隊で隊員が上官の命令に従わない場合は、自衛隊法で最高でも懲役7年が上限であることを説明し、こう語った。

 「『これは国家の独立を守るためだ。出動せよ』と言われたときに、いや行くと死ぬかもしれないし、行きたくないなと思う人がいないという保証はどこにもない。
だから(国防軍になったとき)それに従えと。それに従わなければ、その国における最高刑に死刑がある国なら死刑。無期懲役なら無期懲役。懲役300年なら300年。そんな目に遭うくらいなら、出動命令に従おうっていう。
人を信じないのかと言われるけれど、やっぱり人間性の本質から目を背けちゃいけない」


 こうした重罰を科すために審判所は必要で、石破氏は「公開の法廷ではない」と付け加えた。

 自民党のホームページある「日本国憲法改正草案Q&A」でも、国防軍審判所を「いわゆる軍法会議のこと」と説明、設置理由を「軍事秘密を保護する必要があり、迅速な裁判の実施が望まれるため」と解説する。
裁判官や検察、弁護側を軍人から選ぶことを想定。審判所が一審制か二審制なのかは「立法政策による」と記され、上訴ができるか否かは不透明だ。

 この発言について、山口大の纐纈厚教授(歴史学)は
「戦前の軍隊の在り方自体を否定すすることから戦後日本は出発し、現行憲法がつくられた。石破発言は平和国家日本のありようを根底から覆して、戦前と同様の軍事組織の立ち上げを意図している。歴史の教訓を反故にするもの」
と話す。

 早稲田大の水島朝穂教授(憲法学)も「戦争体験世代の政治家にあった抑制は皆無。戦前の反省はどこへいったのか」と批判し、「審判所」という表現に注目する。

 「現行憲法も自民改憲草案も、76条2項で『特別裁判所』の設置を禁じている。
軍法会議はこの特別裁判所にあたるため、通常の行政機関を装った『審判所』という名にしたのではないか」

 軍法会議は現在も米英はじめ、多くの国で制度が存在する。
自国の軍人や軍属を裁くのが目的だが、戒厳下などでは民間人も対象になる。

 旧日本軍では陸海軍にそれぞれ置かれ、一審の場合には5人の裁判官のうち軍人4人、法曹資格を持つ文官1人(後に全員が軍人)で構成されていた。
平時では公開されて被告の上訴権もあり、弁護人も付いたが、戦地や戒厳下で開かれる特設の軍法会議では、それらが認められなかった。

 「二・二六事件(1936年発生のクーデター未遂事件)では一審、非公開、弁護人なしの過酷な密室審理のもと、青年将校や民間人が密室審理のまま、銃殺刑になった」(纐纈教授)

 「戦場の軍法会議」の共著がる大阪経済法科大の北博昭客員教授(日本近代史)は「軍法会議の目的は軍隊を団結させ、組織を維持することにある。
だから軍から裁判に干渉が入り、不当判決が起こるケースは少なくなかった」と語る。

 北教授が法曹資格を持つ当事者の裁判官から聞き取った不当判決の事例がある。
フィリピンで1945年2月に開かれた軍法会議で、食料調達のため、部隊を抜け出した海軍の兵士が死刑になった。
海軍刑法では交戦中の敵前逃亡罪は最高で死刑だが、このケースは戦闘中ではなかった。

 「この兵は英語が上手だったので、もし敵に捕まった際に軍の内情が知られないよう、見せしめに処刑されたようだ。
裁判官は軍上層部から圧力を受けていたとみられ、『(兵には)かわいそうなことをした』と言っていた。(北教授)

 ちなみに自衛隊の内部問題への対処は、現状でも危うさがちらつく。

 航空自衛隊小松基地に所属していた池田久夫一等空尉(50)は2009年5月、「基地の情報が入ったUSBメモリーを盗んだ」という窃盗の容疑で、20日間にわたり刑務隊から取り調べを受け、自白を強要された。

 池田氏にはアリバイがあった。
だが、それは黙殺され、刑務隊は自白以外にも証拠もないまま、金沢地検に書類送検。2010年10月に不起訴に不起訴の決定が出たものの、いまだ名誉回復はされていない。

 池田氏の支援団体は「当時の上司に意見したことで煙たがられており、濡れ衣を着せられたのでは」と推測する。

 自衛隊員の裁判に取り組んできた佐藤博文弁護士は「警務隊員も身分は自衛官で、上司の指示に従う立場。
公平性、客観性が担保されていない」と言う。
佐藤氏が担当した女性自衛官の事件では、強姦未遂に匹敵する被害だったのに、それより軽微な強制わいせつで処理された。
捜査に当たった警務隊員は女性に「上司の命令には逆らえない」と弁明したという。

 佐藤弁護士は「国防軍審判所ができれば、組織防衛のために原告の訴え自体が認められなかったり、人身御供にされたりする危険も生まれる」と案じる。
「自衛隊員やその家族こそ9条によって人権を守られている」

 纐纈教授は「国防軍審判所ができたら、すでにある有事法制に加え、戦前の『国防保安法』『軍機保護法』のような法律が整備される可能性が出てくる」と指摘する。

 水島教授もこう訴えた。
「法に基づいて判断する普通裁判所と違い、絶対的な上意下達のシステムの下、機密保持や軍の閉鎖的な論理が優先されかねない。
戦前の恐怖支配の足音が聞こえる」

※デスクメモ 
遠い昔、銃を手にしたら警官らが街をうろつく光景にファシズムを重ねた。
でも、想像力を欠いていたと確信する。
お笑い番組と監視カメラ、好戦的な政治家の暴言と無関心にあふれた日常。
もうすでに一線を越えていないか。
そういえば、故田中清玄氏は軍国主義は些細な弾みで戻ると警告していた。(牧デスク)



***********

「週刊BS-TBS報道部」での発言

「『これは国家の独立の為だ、出動せよ』と言われた時に、いや行くと死ぬかも知れないし、行きたくないという人がいないという保証はどこにもない。
だから国防軍になったらそれに従えと。
それに従わなければその国にある最高刑がある国なら死刑。
無期懲役なら無期懲役。
懲役300年なら懲役300年。
そんな目に逢うなら出動しようかと。
人を信じないのか、と言われるけど、やっぱり人間性の本質から目を背けちゃいけない」


石破幹事長 憲法改正について語る PART3

*2分30秒くらいから
***********

出動命令に従わない隊員は死刑/Blog of SAKATE“燐光群”主宰・坂手洋二さんのブログ
http://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/d6981686ecea0fe42848a18df833680a
参院選公示後、改憲の具体的な内容について言及するのは遠慮していたらしい安倍首相だが、テレビ番組のインタビューで、将来的な憲法9条改訂に意欲を示し「われわれは9条を改正し、その(自衛隊の)存在と役割を明記していく。これがむしろ正しい姿だろう」と述べたという。
自衛隊を軍隊として位置づける自民党の動きである。自民党石破幹事長も現憲法下での集団的自衛権について「行使可能」と発言。
歴代政権は集団的自衛権に関し「国際法上の権利として保有しているが、行使はできない」という立場だった。
自民党は参院選公約で、集団的自衛権行使を可能とする「国家安全保障基本法」制定を訴えている。
どっちにせよ、やってしまうぞ、ということだ。
日本の法律は全てザルではないか。
報道によれば、9条改悪・国防軍創設後、「出動命令に従わない隊員は死刑、懲役300年も必要」「そんな目に合うくらいなら命令に従うだろう」とも、石破は言っているらしい。
現行の自衛隊法では命令違反は最高懲役7年という。
山田勝仁さんが言うように「憲法9条は自衛隊員を守るための役割を果たしている」わけで、これがなくなると、平和的良心的軍務拒否ができなくなる。
最近「戦場の軍法会議」という本の書評を書いたばかりということもあるが、まったく世界の常識とかけ離れていると思う。
こうした軍国的言説により既に日本という国は外向的に孤立しているではないか。
与党政治家たちは歴史に何も学ぶ気もないし、生命の重さを感じてもいない。
とにかく世界的視野と現実感覚が圧倒的に欠けている。
さいきん一般の人から「「民主主義」って言葉は普通の国民には違和感あるのよね-」という言説を聞いて度肝を抜かれたことがあるのだが、民主主義や平和憲法を差別するという「洗脳」がここまで進んだということだし、国民じたいも飼い慣らされてとことん鈍感になっているということか。
ところで猪瀬東京都知事は昨年のツイッターで、「戦争のない日本人にはピンとこないところだが、福島は現在「戦時中」で東電の下請けの人たちが「傭兵」として雇われています。しかしフクシマには日本人が国民として向き合い解決に関わらなければいけないのです」と言っている。
自民党・東電の尻拭いを、国民は命と引き替えに強要される、そんなSFのような世界が現実に起きている。
もう結果は見えているような論調で参院選とぼんやり向き合っている場合じゃない。・・・


よろしければ、下のマークをクリックして!


よろしければ、もう一回!
人気<strong></strong>ブログランキングへ


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2013-07-18 22:10:56
自民党はまずいまずいと思っていたが、この発言で決定的になった。
恐ろしい
返信する
びっくり (N.O.)
2013-07-18 23:06:33
国の独立を守るのは軍隊だと決め付けているのも変だと思いますが、「死刑にするぞ」と脅かして無理やり戦地に送り込んだ人たちが戦力になるものでしょうか?福島の事故の際に見られたように、「日本を守るためなら命をかける」という人々が大勢出てくるのも社会的動物の本能ではないですか。これが他国を侵略しに行くとなれば「行かなければ殺すぞ」と強制しなければならなくなるのでは。
それに石破さん、やっぱり目つきがおかしすぎですよ。右翼の人たちは大体人間不信なのですが、日頃から悪い人たちと付き合いすぎなのでは。
返信する
ウィキペディアで「敵前逃亡」を検索してみました (N.O.)
2013-07-21 19:01:05
この機会にウィキペディアで「敵前逃亡」を検索してみました。
日本軍でも懲役7年以下だったところ、敗戦前に軍規が乱れたので銃殺するようになったのですね。でも、高級将校たちの敵前逃亡は、軍法会議にもかけられず、左遷程度の処分だったそうです。だから将校の敵前逃亡が多かったそうですよ。
石破さんは自衛隊員はどうせ貧乏人の子供だから死刑でも差し支えないと思っているかもしれないけど、自分の後援会長の息子や親戚の子供でも死刑にできるのかと思いますね。昔の高級将校たちのように見て見ぬふりをするのではないですか。
返信する
Unknown ( 晴れ男)
2013-07-24 01:16:20
はじめまして

自民党に票を入れないで正解でした。
憲法改正はやめるべきだ。
日本がアメリカと共同でどこかの国と戦争したら
攻撃されるのは目に見えている。 
北朝鮮、韓国、中国と戦争はするべきではない。
なぜ国防軍なのか。
自衛隊強化でいまはとくに災害対策などを目指す
で、いいじゃないですか。 
集団的自衛権行使なんてやれば
日本に未来はない。 
たちまち日本はダメになります。
日本は攻撃されますよ。
東京だって攻撃の標的になりますよ。 
それでもいいのか。
どこかでいやいまからでも
警鐘ならさなければならないことですよ。
そういう問題ですよ。
石破さん、目を覚ましてください。  
どうしても憲法改正したいのであればせめて
大政翼賛会的な憲法改正はやめるべきだ。
どうしても憲法改正というなら長い時間、長い期間
かけてでも他の政党と真剣に改憲の是非を真剣に
考えた議論をしてください。
でも、戦争と原発はもうたくさんです。
御免です。御免こうむるです。 
広島、長崎、福島のことを真剣に考えてください。
 
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。