『世界ブランド企業黒書 ―人と地球を食い物にする多国籍企業』明石書店

2005-07-30 18:23:52 | 新刊・新譜情報
悪者はどの企業か。賢い消費者必携の書!2人のジャーナリストが覆面取材を敢行し、最大級の成功を収めている多国籍企業の悪行を暴く。そして、グローバルな経済と政治の密接な関係をあぶりだすとともに、腐敗した企業を変えるために個人に備わっている力をも証明する。

内容構成

序文
1 厚顔無恥株式会社 ―― ブランド力と人権
 付論 別のやり方でもできる――行動のヒント
2 タンタロスの飢えに悩む携帯電話 ―― 電子機器産業
3 人間モルモット ―― 医薬品
 付論 医学専門誌に見られる非倫理的臨床試験
4 汚い仕事 ―― 石油
 付論1 石油を巡る戦争とアンゴラ
 付論2 その他の危険な石油プロジェクト
5 食いつ食われつ ―― 食料品
6 パンと遊び ―― 玩具
7 僅かなドルのために ―― スポーツと衣料
 付論 衣料品取引のための社会憲章
8 輸出された問題 ―― 輸出および金融業
9 民主主義を犠牲にして得られた儲け ―― 買収とロビー活動
 付論 国際ロビー団体による権力の乱用
コラム
 児童労働/WTO/IMF/世界銀行/奴隷制と強制労働/タンタル/アフリカのHIV
企業ポートレート
 アディダス・サロモンAG/アジップ(エニグループ)/アルディ/ホーファー/アベン
ティス/バイエルAG/ベーリンガーインゲルハイムGmbH/ブリティッシュ・ペトロリアム
plc/ブリストル・マイヤーズ スクイブカンパニー/C&A/キッコ(アルツァーナSpA)
/チキータ・ブランズ・インターナショナル社/コカ・コーラカンパニー/ダイムラー・
クライスラーAG/ハインリッヒ・ダイヒマン・シューエ社/フレッシュ・デルモンテ・プ
ロデュース社/ドイツ銀行AG/ウォルト・ディズニー・カンパニー/ドール・フードカン
パニー社/ダナ・キャラン・インターナショナル社(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン
SA)/ドレスナー銀行(アリアンツグループ)/エクソンモービルコーポレーション/
フォード・モーターカンパニー/ギャップ社/ゼネラルモーターズコーポレーション/グ
ラクソ・スミスクライン/ヘネス・アンド・モーリッツAB/HVBグループ/カールシュ
タット・クベレAG/クノルGmbH(アボット・ラボラトリーズ)/クラフト・フーズ・イン
ターナショナル社(アルトリアグループ)/リーバイ・ストラウス社/マイスト(メイ・
チョン・トイ・プロダクツ・ファクトリー社)/マテル/マクドナルドコーポレーション
/三菱商事/モンサント/ネスレSA/ナイキ社/ノバルティス/OMV AG/オットー・ハン
デルス・グループ/ファイザー社/プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー/リー
ボック・インターナショナル社/サムスングループ/シェーリングAG/ロイヤル・ダッチ
/シェルグループ/シーメンスAG/トミー・ヒルフィガー・コーポレーション/トタルSA
/トリンプ・インターナショナル/ユニリーバグループ/ウォルマート・ストアーズ社
解説(寺島 隆吉)

文献リスト
企業および製品索引

クラウス・ベルナー(Klaus Werner)
1967年、ザルツブルク生まれ。フリーのジャーナリストおよび作家としてウィーンとベルリンで活動中。ウィーン大学においてロマン文学およびゲルマン文学専攻後、1996年から1998年までウィーンの新聞『ファルター(Falter)』の非専属スタッフ、また1995年から2000年までオーストリアエコロジー協会のスポークスマンとなる。『ひどいことになった!―良心の呵責を受けない飲食(Prost Mahlzeit! ― Essen und Trinken mit gutem Gewissen.)』(Deutike, 2000)の共著者。主に『プロフィール(profil)』、『スタンダード(Standard)』、『プレッセ(Presse)』、『ライゼマガツィーン(Reisemagazin)』、『ターゲスツァイトゥング(tageszeitung)』、『ベルト日曜版(Welt am Sonntag)』に記事を発表。
ホームページ:http://www.weltnachrichten.org

ハンス・バイス(Hans Weiss)
1950年、ヒッティザウ/フォラールベルク生まれ。インスブルック、ウィーン、ケンブリッジ、ロンドン大学において心理学および医療社会学を専攻。1980年以降、フリーのジャーナリストおよび作家としてウィーンで活動。主に『シュテルン(Stern)』、『シュピーゲル(Spiegel)』、オーストリア国営放送にルポルタージュや報告記事を寄稿。10冊を超える本の著者あるいは共著者として知られ、その総発行部数は400万部に上る。代表的な著作は、『苦い錠剤―医薬品のメリットとリスク (Bittere Pillen―Nutzen und Risiken von Arzneimitteln)』(1983/最新版2002―2004)、『犯罪事件―司法に関する調査(Kriminelle Geschichten―Ermittlungen uber die Justiz』(1985)、『誰だ?―オーストリアの誰が好ましからざる人物なのか(WER?―Ein Negativ-Who-is-Who von Osterreich.)』(1988)、『健康時刻表(Kursbuch Gesundheit.)』(1990/2001)、『1日3錠―1万1000の医薬品に関する批判的使用情報(3×taglich―Kritische Gebrauchsinformation zu 11.000 Arzneimitteln.)』(2003)。

下川 真一(しもかわ・しんいち)
1980年、慶應義塾大学文学部哲学科卒業
現在、ドイツ語の翻訳と通訳に従事

解説(岐阜大学教育学部教授 寺島隆吉)
 本書『世界ブランド企業黒書』(Das neue Schwarzbuch Markenfirmen)は、2001年にウィーンの出版社ドイティケ(Deuticke)から初版が出され、オーストリアのNHKにあたるORFやドイツの週刊誌『シュピーゲル』などから絶賛を浴びている。
 たとえば、オーストリア公共放送(ORF)が『ブランド企業黒書』をさして「反グローバル運動の新しいバイブルになる可能性がある」と絶賛しているし、出版社の運営するホームページによると、2003年に新版が出され、15万部の売り上げを誇るベストセラーとなっている。
 さらに、既にスペイン語、オランダ語、トルコ語、ハンガリー語の翻訳書も出され、そして中国語版、韓国語版、ルーマニア語版、スウェーデン語版、ロシア語版の出版も予定されているという。
 だからこそ本書を読んで「遂に来るべきものが日本に来た!」と思ったのだが、英語版の出版予定がないことが気になる。しかし、この英語版の出版予定がないことこそ、本書の価値を示しているのかも知れない。
 というのは、本書と同じように、ブランド企業を告発した有名な本として、ナオミ・クライン『ブランドなんか、いらない』(はまの出版、2001)があるが、本書は、それに勝るとも劣らない衝撃力で、途上国の搾取的労働とブランド企業のつながりを赤裸々に暴露しているからである。
 しかも告発されているブランド企業の大半が米国企業だから、その大企業の抵抗と反発を考えれば、おいそれと本書を米国で出版できないのも理解できないわけではない。
 しかし、これは何も反米を目的としたからそのようになったわけではなく、第1章「厚顔無恥株式会社:ブランド力と人権」の末尾に資料として掲載されている「世界の巨大経済勢力、上位100」「世界の有力ブランド、上位60」を見れば明らかなように、ブランド企業の大半を占めるのが米国企業だからである。
 しかも、これら「世界の巨大経済勢力」の中には国家も含まれているのだが、世界で最も大きい100の経済勢力を見ると、恐ろしいことに、今では既に、企業の数が国家の数を上回っているのである。
 その中には、国家では米国に次いで日本が2位、企業ではトヨタ(37位)、三菱(44位)、三井(46位)、伊藤忠(51位)などの名前も見える。これは私たち日本人がもっと留意しておいて良いことではないだろうか。

 さて本書は御覧の通り2部に分かれている。
 第1部は、第1章「厚顔無恥株式会社―ブランド力と人権」、「別のやり方でもできる―行動のヒント」という総論を踏まえたうえで、第2章以下、「電子機器産業」「医薬品」「石油」「食料品」「玩具」「スポーツと衣料」「輸出および金融業」などの諸分野でブランド大企業がいかに途上国の搾取的労働の上に繁栄を築いているかを事例研究している。
 そして最後の第9章「民主主義を犠牲にして得られた儲け―買収とロビー活動」という章で、大企業コンツェルンが産業ロビー団体を使って政府をいかに合法的に買収しているかが赤裸々に語られている。しかも驚くべきことに、買収されているのは途上国の独裁政権だけではなく、先進国の「民主政府」であることも珍しくないのだ。
 第2部「企業ポートレート」は、アディダスなど53のブランド企業を取り上げて様々な批判的「企業データ」を提供したデータベースになっている。しかも末尾には企業および製品の索引が付いていて、知りたいブランドについて改めて検索できるようになっている。
 したがってブランド企業にとっては、これほど恐ろしい本はないであろう。上記ホームページ冒頭に「本書はあなたを激怒させることになるだろう」と書かれているとおりである。また激怒することになったのはブランド企業だけではなく、「ギャップのバングラデシュ工場で働く労働者の月給が約45ユーロにすぎない」などの事実を知った消費者でもあった。(後略)


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