「災害が本当に襲ったとき」(中井久夫)みすず書房・電子データの公開および無償頒布 ほか

2011-03-21 10:01:27 | 社会
阪神大震災の際に精神科医師として救援にあたった、
中井久夫さんの手記(出版物)が無償公開されています。

援助者もまた被災者であるときに何が起こるのか、
役割分担はどうするのか、ボランティアには何が期待されているのか、
医薬品が足りないと患者に何が起こるのか、といった急性期なら
では逼迫した問題に、神戸大学医学部精神科とその応援に全国から
集まった医師や看護師らがいかに対処したかが描かれています。

・(みすず書房)
中井久夫「災害がほんとうに襲った時」電子データの公開および無償頒布
につきまして(最相葉月)
http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/shin/shin00.html

このたびの東北関東大震災で亡くなられた皆様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。また厳しい避難生活を余儀なくされている皆様、そしてご家族やご友人の安否を今も気遣われている皆様に心よりお見舞い申し上げます。

私も東京の自宅で震度5強を経験しましたが、徐々に明らかになる被害の甚大さに茫然としております。自分が何をすればよいのか、混乱のあまり躁状態となった頭を少しでも整理しようと、崩壊した書棚から崩れ落ちた一冊の本を読み返しました。阪神大震災で精神科救急にあたった医師や看護師らの地震発生から50日間の手記をまとめた、中井久夫編『1995年1月・神戸 「阪神大震災」下の精神科医たち』(1995年3月刊、みすず書房)です。

援助者もまた被災者であるときに何が起こるのか、役割分担はどうするのか、ボランティアには何が期待されているのか、医薬品が足りないと患者に何が起こるのか、といった急性期ならでは逼迫した問題に、神戸大学医学部精神科とその応援に全国から集まった医師や看護師らがいかに対処したかが描かれています。

一気に読み終え、やはりこれはかけがえのない記録であるとその意義を再認識しました。そして、編者である中井久夫氏の手記「災害がほんとうに襲った時」を被災地で連日救援活動に当たられている医師や看護師、カウンセラーら病院関係者、その後方支援にあたられている方々、またこれから支援を考えておられる方々になんとか届けられないものだろうかと思いました。

当時神戸大学教授だった中井氏は精神科救急の司令塔として、被災したスタッフや全国からやってくるボランティアの調整役を果たされました。このときの活動がきっかけとなり、PTSDや心のケアへの関心が高まり、兵庫県こころのケアセンターが設立され、中井氏が初代所長に就任されたことはすでにご存知の方も多いかと存じます。

もちろん阪神大震災と東北関東大震災では、災害の種類も規模も物流の状況も違います。直後から物資やボランティアの人々が近県を経由してやってきた阪神大震災の経験をそのまま当てはめることはできないと思います。

しかしながら、ここには想定外の災害に初めて見舞われた一人の医師の逡巡、苦しみ、気づきがあります。災害の種類や時代を超えた普遍的なメッセージがあります。

今こそ読まれるべきではないかとの想いを強くした私は、まことに僭越と思いつつ無償配布のご提案を中井氏にいたしましたところ、「かまいません」と瞬時にご快諾いただきました。版元のみすず書房の担当編集者である守田省吾氏のご協力も得て、ここに公開させていただきます。一人でも多くの皆様に届きますよう、心当たりの方がおられましたらご案内いただけると幸いです。今、困難な任務に就いておられる皆様を心より応援いたしております。(2011年3月20日最相葉月)

*「災害がほんとうに襲ったとき」は中井久夫編『1995年1月・神戸 「阪神大震災」下の精神科医たち』(1995年3月刊・みすず書房)に収録されています
*本稿の電子データの公開および無償頒布につきましては、著者の中井久夫氏とみすず書房の許諾を得ております

中井久夫
1934年、奈良県生まれ。京都大学医学部卒業。神戸大学名誉教授。精神科医。著書に『中井久夫著作集』全6巻別巻2(岩崎学術出版社)、『西欧精神医学背景史』『臨床瑣談』(いずれも、みすず書房)、『分裂病と人類』(東京大学出版会)、『治療文化論』(岩波現代文庫)、『こんなとき私はどうしてきたか』(医学書院)、『家族の深淵』(毎日出版文化賞、みすず書房)、訳書に『カヴァフィス全詩集』(読売文学賞、ギリシア国・文学翻訳協会賞、みすず書房)など。

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「東北関東大震災下で働く医療関係者の皆様へ――阪神大震災のとき精神科医は何を考え、どのように行動したか」文:中井久夫 データ提供:みすず書房 サイトの責任:最相葉月 サイト制作:フジモト
http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/shin/shin00.html

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雑誌『 JIM 』( 15 巻 8 号)「特集:災害被災地におけるプライマリ・ケア」を無料公開
<雑誌『JIM』(15巻8号)「特集:災害被災地におけるプライマリ・ケア」を,当面の間,全文無料で公開いた
します。このたびの震災で被災された方々の救出・救命・治療に当たられる医療従事者の皆様にご活用いただき
,少しでもお役に立てれば幸甚に存じます。>
http://www.igaku-shoin.co.jp/misc/jim/1508index.html

JIM 2005年8月号(15巻8号)
特集 災害被災地におけるプライマリ・ケア
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 2004年は多くの台風の直撃を受けたほか,浅間山の噴火,新潟中越地震,またスマトラ沖地震とさまざまな災
害に見舞われた1年でした.災害被災地には,確実に医療ニーズが存在しますが,それは必ずしも普段の医療ニ
ーズとは同じではありません.それではどのようなニーズが存在するのでしょうか? また,他地域の医師がお
手伝いできることは何なのでしょうか? 被災地における医療活動経験者に,心のケアや災害医療コーディネー
トなども含めた,災害地医療支援活動に期待されるさまざまなニーズについて執筆していただきました.

[リンク先はすべてPDFファイルで,別ウィンドウが開きます]

•災害被災地におけるプライマリ・ヘルス・ケア 被災地の医療援助の原則
  (菅波 茂) [349KB]•被災地援助に求められるもの (石川 清) [517KB]
•被災地での心のケア (森 茂起) [399KB]

被災した医師としての経験

•阪神・淡路大震災 (惠美 裕一郎) [228KB]
•新潟中越地震(1) (根本 聡子) [266KB]
•新潟中越地震(2) (根元 純一) [226KB]
•台風23号 (佐藤 泰吾) [246KB]

被災地を援助した経験から

•新潟中越地震におけるプライマリ・ケア支援活動 (高山 義浩) [367KB]

スペシャル・アーティクル

•関連死・車中死の機序と救護所医療 アロスタシスの視点から (上田 耕蔵) [518KB]
•被災地救援の最近の経験 海外の場合 (田中 康夫) [352KB]

JIM Report

•新潟中越地震における災害援助医療チームに参加して 一般臨床医としての立場から
  (木村 琢磨・他) [478KB]



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