北九州市の生活保護法の解釈、厚労省「扶養は生活保護の要件ではない」認める/塚田 俊一

2007-07-18 07:05:33 | 社会
朝日新聞の記事です。
西日本では今日(17日)の朝刊の紙面に出ています。

親族による扶養を生活保護の「要件」として運用し、
それを盾に相談に来た市民を追い返してきた
北九州市の生活保護法の解釈について、
厚生労働省が「間違い」だと認めたというものです。
http://www.asahi.com/life/update/0716/SEB200707160078.html

北九州市のみならず、「水際作戦」による申請権侵害の事例において、
稼働年齢であるというだけで保護が受けられないという
虚偽の説明をするものと並んで、最も多くみられるのが、
親族の扶養を保護の前提要件であるかのように述べ、
扶養義務者がいれば保護が受けられないかのように誤信させ、
申請を拒否するものです。

生活保護法4条2項は
「民法に定める扶養義務者の扶養は保護に優先して行われるものとする」
と規定しています。しかし、この「扶養義務が保護に優先する」とは、
保護受給者に対して実際に扶養援助が行われたら収入認定して
その援助の金額の分だけ保護費を減額(または保護を廃止)するという意味であり、

「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、

その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」
とする4条1項とは異なり、扶養自体は保護の前提要件ではありません。

扶養義務者に援助を求めたが断られた、
援助を求められる関係にない(扶養義務者がDVの加害者である場合など)、
扶養義務者自身が援助できる余裕がないといった場合はもちろんのこと、
まだ扶養義務者に援助を求めていない場合でも、
そのことのみを理由に保護申請を却下することはできません。

申請者がまだ扶養義務者に援助要請をしていなくても、
要保護状態であれば保護を開始し、保護開始後に福祉事務所が
扶養期待可能性に応じて扶養義務者に受給者への援助の可否を
照会すればよいのです。

(この点、1946年制定の旧生活保護法では、
「扶養義務者が扶養をなしうる者」は実際に扶養援助が
なされていなくても保護の要件を欠くとされていましたが、
1950年制定の現行生活保護法ではこの欠格条項は撤廃されました。)

にもかかわらず、この点を正しく理解・運用していない自治体は
北九州市の他にも全国的に数多く存在しています。

この点で、厚生労働省が「扶養は保護の要件ではない」ということを
認めたのは大きな意味があります。
ただ、記事では
「厚生労働省保護課は「要件と優先は異なる。親族に確認しないと申請書を渡さない
というのであれば、間違った運用だ」としている。」
とありますが、「申請書を渡さないのが間違い」というのではなく、
「親族に確認しないと保護を適用しないというのは間違い」というべきです。
申請自体は申請の意思表示があれば無条件に成立するものです。

厚労省は直ちに「扶養は保護の要件ではない」ということを
全国の自治体に周知徹底すべきです。


【餓死事件を検証委員会で徹底検証を!
違法な生活保護行政の根本的転換を!】

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北九州市餓死事件に関するフリーター全般労働組合の声明

 北九州市で、生活保護を自ら「辞退」したとされる人が、「
おにぎり食べたい」という言葉を残し餓死していたとの報道が
あった。実際には、働けないのに働けと指導された、という(
日記)。生活保護の自発的?な「辞退」が、単なる口実であっ
て、実は福祉事務所による強引な打ち切りである場合があると
いう。今回のケースがそれに該当するのかどうか、調査が必要
である。
 私達フリーター全般労働組合は、労働の強制といえる実態が
このような死=実質的には殺人を招いたと考える。病気で働け
ないのに、労働は可能だとし、就労を「指導」する、その結果
孤独死を招く、といったありようは、生活保護で生存すること
が何か否定されるべきことであり、労働せねばならないという
強迫観念から生じた現実だ。私達は、このような労働道徳の過
剰な支配そのものに異を唱える。どんな人の生も、それ自体と
して肯定されるべきであり、福祉や社会保障はあらゆる人の最
低限度の文化的生活を保障し実現せねばならない。
 全国の生活困窮者の皆さん! むざむざ殺されることはない
。連帯し、共に声を挙げよう! 生きることはよい、絶対的に
よい。私達は、生を否定するイデオロギーと徹底的に対峙して
いくことを宣言する。

2007年7月19日
フリーター全般労働組合

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小倉北区で起きた餓死事件を受けて、
北橋健治・北九州市長は18日、記者会見を行い、
市が設置した生活保護行政検証委員会で事件の検証を行うとともに、
ライフラインが停止している人など市内の生活困窮者の緊急点検を指示した
と表明しました。
http://www1.fbs.co.jp/cgi-bin/news.cgi?mode=show&no=11860
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/local/fukuoka/20070718/20070718_016.shtml
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/news/20070719ddlk40010391000c.html

検証委員会は明日(20日)16時から行われます。
http://www.city.kitakyushu.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=18100


次回(第5回)の開催について
日時   平成19年7月20日(金) 16:00~18:00
場所   北九州国際会議場 21会議室(小倉北区浅野3丁目9-30)
内容   16:00~17:00 (公開)
      1.小倉北区における孤独死事例の報告
      2.門司区事例における関係者ヒアリングと提出資料との整合性につい
ての報告(予定)
      17:00~18:00 (非公開)
      3.審議整理

※今後の予定(第6回)
  日時  平成19年7月30日(月) 15:00~17:00
  場所  北九州市立男女共同参画センター

北橋市長は事件直後は「本人が自立してがんばるとのことだったので
問題なかったのではないか」と述べていました。
このことは、北橋市長が生活保護制度についてほとんど理解していない
ということを示しています。

今回の記者会見では、「第一報を聞いた時は対応に問題はなかったと判断した」
と振り返りつつ、その後、男性の日記の内容を知ったことや、
06年の広島高裁判決についての報道などを受け、
検証委員会に検証を求めることにしたと述べました。

生活困窮者の安否確認にしても、
その後に要保護者を生活保護につなげなければ
意味がありません。
昨年の門司での餓死事件の後にも申し訳程度に行われていますが、
市全体で20数件で、ほとんどは保健師に訪問させています。

何より、生活困窮者を福祉事務所に連れて行くと、
「何でこんな奴連れてきたんだ!」と保健師を恫喝する
面接主査の体質を変えなければ、全く意味がありません。

一方、事件に対する怒りの声は大きく広がっています。

インターネットラジオ&マガジン「オールニートニッポン」
のコラム「貧困襲来!」の第1回で湯浅誠さんが取り上げています。
http://www.allneetnippon.jp/2007/07/1_13.html

雨宮処凛さんも「マガジン9条」のコラムで語っています。
http://www.magazine9.jp/karin/070718/070718.php

フリーター全般労働組合が声明を発表しました。
http://www.labornetjp.org/news/2007/1184807230124staff01








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