婚外子の相続分を定めた規定を違憲とした最高裁決定要旨

2013-09-07 18:48:25 | 社会
1 相続制度を定める際は、各国の伝統や社会事情、国民感情を考慮し、国民の意識を離れて定めることはできない。どのように定めるかは立法府の合理的な裁量判断にゆだねられている。非嫡出(ちゃくしゅつ)子(婚外子)の相続分を嫡出子(婚内子)の2分の1とする区別が、裁量権を考慮しても合理的な根拠が認められない場合、法の下の平等を定めた憲法14条に違反する。

 2 1995年の大法廷決定は、規定は非嫡出子に一定の相続分を認めて保護した面があり、遺言がない時に補充的に機能することも考慮して、憲法に反しないと判断した。しかし1で示したことは時代と共に変遷するもので、規定の合理性は不断に検討されなければならない。

 3 47年の民法改正後、婚姻、家族の形態は著しく多様化し、国民の意識の多様化も大きく進んだ。現在、嫡出子と非嫡出子の相続分に差異を設けている国は、世界的にも限られた状況だ。国連の委員会は、差別的規定を問題にして、法改正の勧告等を繰り返してきた。

 4 わが国でも、住民票での世帯主との続き柄の記載や、戸籍での父母との続き柄の記載で、非嫡出子と嫡出子は同様の扱いとされた。法定相続分の平等化の問題もかなり早くから意識され、平等とする旨の法改正準備が進められたが、法案の国会提出には至らず、改正は実現していない。理由の一つには、法律婚を尊重する意識が幅広く浸透していることがあると思われる。しかし規定の合理性は、個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らし、非嫡出子の権利が不当に侵害されているか否か、という観点から判断されるべき法的問題だ。

 5 当裁判所は、結論としては規定を合憲と判断してきたが、47年の民法改正当時の合理性が失われつつあるとの補足意見や個別意見が、最高裁判決や決定で繰り返し述べられてきた。95年の決定で考慮した補充的な機能も、規定の存在自体が非嫡出子への差別意識を生じさせかねないことを考えると、重要ではないというべきだ。

 6 法律婚という制度自体は定着しているとしても、父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択、修正する余地のないことを理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、権利を保障すべきだという考えが確立されてきている。

 以上を総合すれば、遅くとも本件の相続が開始した2001年7月当時、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と非嫡出子の法定相続分を区別する合理的根拠は失われており、規定は憲法14条に違反していたというべきだ。

 7 本決定は、95年の決定やその後の小法廷の判決等が、01年7月より前に相続が開始した事件について、その相続開始時点での規定を合憲とした判断を変更するものではない。

 他方、本決定の違憲判断が、すでに行われた遺産の分割にも影響し、解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは、著しく法的安定性を害することになるから、すでに裁判や合意で確定した法律関係まで現時点で覆すことは相当ではない。01年7月から本決定までの間に開始された他の相続で、確定的となった法律関係に影響を及ぼすものではないとするのが相当だ。

 【金築誠志裁判官の補足意見】

 遅くとも本件の相続開始当時に違憲だったとの判断がされた以上、法の平等な適用の観点から、それ以降に相続が開始した他の事件にさかのぼるのが原則だ。しかし拘束性を認めることがかえって法的安定性を害する時は、その役割を後退させるべきだ。各裁判所は、本決定を指針としつつも、違憲判断が必要かも含めて、事案の妥当な解決のために適切な判断を行う必要があると考える。

 【千葉勝美裁判官の補足意見】

 本決定の効果の及ぶ範囲を一定程度に制限する判示は、違憲判断の効力は個別的とするのが一般的な理解である以上、異例といえる。しかし法的安定性を大きく阻害する事態を避けるための措置であり、必要不可欠な説示というべきものだ。違憲判断の範囲等を制限することは、違憲審査権の制度の一部として当初から予定されているはずで、憲法はこれを司法作用としてあらかじめ承認していると考えるべきだ。

 【岡部喜代子裁判官の補足意見】

 婚姻期間中に当事者が得た財産は婚姻共同体の財産であり、本来その中にある嫡出子に承継されるべきという見解がある。夫婦は婚姻共同体を維持するために協力し、嫡出子はその協力により扶養されるのが、わが国の一つの家族像として考えられ、現在においても一定程度浸透している。しかし国内外の事情の変化は、婚姻共同体の保護自体には理由があるとしても、そのために嫡出子の相続分を非嫡出子よりも優遇することの合理性を減少させてきた。全体として法律婚を尊重する意識が広く浸透しているからといって、相続分に差別を設けることはもはや相当でないと言うべきだ。

---------

憲判決の全文は下記の裁判所ホームページの「最高裁判所判例集」で見ることができます。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130904154932.pdf

*******************      

■婚外子差別違憲判決 続き(ソウル・ヨガ(イダヒロユキ) 2013年09月06日)
http://blog.zaq.ne.jp/spisin/article/3852/

*******************

*非嫡出子・婚外子ではありますが、親に残してもらう財産・資産の類が皆無であった私にとっては、戸籍法の撤廃こそが重要だと思われます。
もちろん民法との関連はよくわかってますが。
*私は、はじめて自分の戸籍見たとき、ほんと驚きました。
母の「男」でしたモノね。
*「家」制度・天皇制を、完全に廃止しましょう!


よろしければ、下のマークをクリックして!


よろしければ、もう一回!
人気<strong></strong>ブログランキングへ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。