韓国旅券法改定に伴う指紋情報採取に関して/在日コリアン青年連合(KEY)

2010-07-17 06:33:39 | 世界
在日コリアン青年連合(KEY)の姜晃範と申します。当会では、指紋押捺に対して敏感にならざるを得ない歴史を抱える在日同胞の立場から、韓国旅券法改定に伴う指紋情報採取制度について、この間関心を持ち続けてきました。この度、同問題を巡る新たな動きをつかみましたので、情報としてお届けします。

まずはこの間の動きを整理します。
2008年2月26日、韓国の旅券法全部改正法律案が国会本会議で可決され、6月29日に施行されました。この法改定によって韓国の旅券は電子旅券となり、そこに収録される情報として、2010年1月からICチップへの指紋情報の収録を指示していました。この動きを受け、私たちKEYでは韓国外交通商部(日本の外務省に相当)に5月20日付けで質問状を送付し、その回答から指紋情報収録が海外に居住する韓国国民へも例外なく適用されることが明らかになりました。それに対してKEYでは7月4日付けで指紋情報収録に反対する声明文を発表しました。
(※韓国電子旅券化に伴う指紋情報収録に関する質問状[2008.5.20]
http://www.key-j.org/program/doc/e-passport.html
(※韓国旅券への指紋情報収録に反対する声明文[2008.7.4]
http://www.key-j.org/program/doc/e-passport2.html

その後、指紋情報収録に関しては、2009年4月22日の国会・外交通商統一委員会において、指紋情報を旅券に収録する制度案を白紙化する旅券法一部改正法律案が通過し、国会での議決を経て10月19日に公布されました。ただしこの改定によって、指紋情報採取自体が無くなったわけではなく、旅券発給時には指紋押捺が必要とされ、既に住民登録情報として保管されている指紋情報と照合することで本人確認を行なうことが条項により言明されています。私たちKEYでは公布前に再度質問状を送付し、以下の3点について問い合せたところ、回答を8月10日付けで得ることができました。
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質問1.韓国に住民登録をしていない海外同胞はどういう扱いになるのか?

【回答】住民登録をしていない海外同胞の場合は、対照する指紋情報がないため、従来通り写真やその他の書類を基に本人かどうかを審査して旅券発給可否を決定する。

質問2. 海外出張、留学中で、本国で住民登録をしている韓国人が海外で旅券更新をする際は、指紋情報の照合を行うのか?

【回答】住民登録を既に行っており出張・留学等で海外に居住する韓国人については、海外で旅券更新をする場合、所在地が国内外いずれかに関わらず指紋情報の照会を行う。

質問3. 当初予定していた旅券への指紋情報収録が無くなった理由は?

【回答】指紋収録の目的である旅券盗用の防止がInterpol紛失盗難旅券の情報共有等を通じて一定程度達成されると考えられるが、指紋対照の目的である偽・借名旅券発給の抑制においてはその他の代案が存在しないことを考慮したため
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旅券への指紋情報収録自体がなくなった点は、大きな改善と言えます。しかしながら住民登録をしている韓国人にとっては、たとえ海外に居住していても旅券発給時に新たに指紋押捺が求められるという制度が導入される点で問題が残っていると私たちは指摘しました。
ただし、上記の回答にも明らかなように、韓国に住民登録をしていない海外居住の韓国民、たとえば永住権を持つ在日コリアンはその対象外となるとされました。

この一部改正法律案は今年1月1日からの施行となっていますが、私たちの調査によると、上記回答に反して在日コリアンの指紋採取制度が導入され、実働化している事実が判明しました。

改めて旅券法の関連部分を抜粋すると、第8条「パスポート業務の遂行に必要な情報の収集・保管と管理」部分で指紋情報を「収集・保管して管理することができる」とあります。また第9条の1項で「第8条の情報を提供して外交通商部長官にパスポートの発給を申し込まなければならない。ただし、指紋を採取することができないやむをえない事情があるなど、大統領令で定める場合には指紋を提供しないことがある」とされています。これに関連して旅券法施行令(大統領令)第3条3項には「法律第9条1項に基づき、次の各号のいずれかにあたる者はパスポート発給を申し込む際に指紋を提供しなくとも良い」とあり、その対象者としてあげられているのが
1.医学的理由で指紋採取が不可能な者
2.18歳未満の者
3.法律第9条第2項に基づき、代理人によって旅券発給を申請する者
(外交通商部令に定められた者 ※引用者注)

です。ここには私たち在日コリアンを含む在外国民に関しての記述は一切無く、いつでも海外同胞に対しても適用できるようにしていたと考えられます。私たちから送付した質問状とそれに対しての回答には当然法的拘束力はありませんが、相応の責任部署(外交通商部旅券課)からの回答であったはずです。私たちの切実な思いを踏みにじり、それを簡単に反故にするような対応には納得がいきませんし、怒りさえ覚えます。
また、「住民登録をしていない海外同胞の場合は、対照する指紋情報がない」ことを認めながらも3ヵ月後には廃棄することとなる(旅券法第8条に明記)海外同胞からの指紋採取には全く合理性がありません。

私たちは再度この件について外交通商部に質問状を送付し、回答を改めてお知らせしたいと考えております。

まずは情報としてお送り致します。



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