もう客を乗せられぬ 残業禁止のタクシー 「飛鳥交通神奈川」で不当労働行為

2010-12-24 06:35:20 | 社会
もう客を乗せられぬ/残業禁止のタクシー/朝日新聞・MYtown神奈川
深夜0時半、草水教行さん(48)が運転するタクシーで電子音が鳴り、「空車」の表示が「回送」に変わる。かき入れ時なのに、もう、客は乗せられない。裁判で会社と争う運転手限定の「営業制限装置」が、勤務時間16時間15分を超えて作動したのだ。


 横浜市南区の京急井土ケ谷駅近く。路肩に車を止め1日の売り上げを確かめた。午前8時15分に営業所を出て3万2590円。「やっぱり師走ですね。年内に用事を済ませようと、病院や買い物に急ぐ人が多かった。冷え込んで小雨が降ったこともあるし」


 最近では多い方だというが表情はさえない。あと2時間あれば関内の繁華街に行って一仕事できた。「せめて4万円はいってほしいが……」


 駅前で午後11時半からの1時間に4組の客を乗せた。タクシー乗り場ではまだ、何人も待っている。空車のタクシーがアクセルをふかして脇を通り過ぎていった。


 運転手になった2003年ごろ、1日の売り上げは時に6万円に達し、多い月は手取り21万円ほどあった。売り上げは年々減り、昨年3月には基本給が減額されて手取りは14万円ほどに落ち込んだ。


 「生活ができない」と草水さんが所属する労組は1月、「飛鳥交通神奈川」(本社・横浜市)を相手どって、所定労働時間を超えた分の残業手当を支払うよう求める訴訟を起こした。収入を基本給削減前の水準に戻す狙いだった。


 すると、会社側は8月、裁判の原告となった運転手に残業禁止を通告。所定労働時間限りでメーターを止める装置を取り付けた。草水さんの手取りは約7万円に急減した。


 残業禁止は「裁判をやめれば解除」との条件つき。兵糧攻めは効果を発揮し、約130人いた組合員の半分が、組合を脱退して裁判をやめた。


 組合員の待遇を差別するのは、労働組合法が禁じた不当労働行為にあたるとされる。県労働委員会は残業制限の中止を勧告し、横浜地裁も「不当労働行為」と判断した。


 しかし、会社側は残業制限を撤回していない。「裁判で係争中のため答えられない」と取材には応じなかった。


 年内に解決すると思っていた争議は越年する見通しだ。「負けたくない。裁判をやめても、経営者に都合のいいようにされるだけですから」


 妻も働き、高校生の長男と3人暮らしの家計を支える。それでも、年が明けて事態が変わらなければ、転職を考えざるをえない。


 「妻と子どもに言ったら、『応援してる』って言ってくれたんです。励まされますよ」。初めて、表情が和らいだ。
http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000001012220005

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