強制とは何か(1)~(5) 弁護士・河内謙策さん「慰安婦」強制はなかった論への質問/前田朗Blog

2014-04-10 17:10:32 | 社会
CML

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前田 朗です。
4月8日

ブログを更新しました。

強制とは何か(1)河内謙策さんへの質問
http://maeda-akira.blogspot.jp/2014/04/blog-post_8.html

複数のMLに、弁護士と称してさまざな投稿をしてきた河内謙策さんが、2014年4月7日、「IK改憲重要情報(48)」と題する投稿において、下記の通り「慰安婦」強制はなかった論を唱えています。              
    
「当時慰安婦で強制連行されたという人たちの証言の多くに矛盾や不自然な陳述の変遷があることが明らかになってきたからです。とくに問題の焦点である「強制」の有無について明確な証言がないことは問題です(秦郁彦「慰安婦と戦場の性」新潮新書177頁以下参照)。
「強制」がなくても慰安婦の制度自体が問題だから、「強制」にこだわるのはおかしいと言う人もいますが、当時の公娼制度の存在を考えれば、強制が無くても慰安婦が問題だということは感情論といわれても反論の余地がないと思います。」                     
河内さんは、この投稿で「強制」「強制連行」の定義を示さないまま結論を出しています。
結論は、安倍晋三、藤岡信勝等、強制連行否定論者と同じです。
断固として嘘をつくと決めている否定論者が述べてきたのは「官憲が家屋に押し入って連れ出した奴隷狩りのような強制連行はなかった」という主張です。    
                       
河内さんはこれと同じ主張をしているのでしょうか。
それとも別の定義を想定しているのでしょうか。                          
                           
強制、強制連行について法律家が論じるのであれば、強制の定義を明らかにする必要があります。                  
                           
国内法では、真っ先に検討するべきは刑法の誘拐罪です。誘拐罪だけではありませんが、以下、誘拐罪に絞って書きます。                 
(*国際法では、醜業務条約、強制労働条約、奴隷条約(奴隷の禁止)、人道に対する罪(強制移送、奴隷化)について議論することになります。)     
      
「慰安婦」強制連行を誘拐罪として処罰した大審院判決が2つあります。
大審院は現在の最高裁判所に相当します。
刑法226条の国外移送目的誘拐罪と、刑法224条の未成年者誘拐罪の事案です。                  
 
当時の日本刑法は次のように規定していました。              
      
刑法226条 帝国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス帝国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ売買シ又ハ被拐取者若クハ被売者ヲ帝国外ニ移送シタル者亦同シ                   

この条文は1995年改正で次のように改められました。          

刑法226条 日本国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、二年以上の有期懲役に処する。
日本国外に移送する目的で人を売買し、又は略取され、誘拐され、若しくは売買された者を日本国外に移送した者も、前項と同様とする。                    
つまり、国外移送目的誘拐罪には4つの行為類型があります。        
                               
① 国外移送目的+略取                          
                           
② 国外移送目的+誘拐                          
                           
③ 国外移送目的+売買                          
                           
④ 拐取者・被売者の国外移送                       
      
問題となるのは、誘拐と売買です。                    
                               
「誘拐罪における『欺罔』とは、虚偽の事実をもって相手方を錯誤に陥れることをいい、『誘惑』とは、欺罔の程度に至らないが、甘言をもって相手方を動かし、その判断を誤らせることをいうとするのが多数説である」(『大刑法コンメンタール刑法八巻』六〇三頁)。       
「慰安婦」連行の中には、「**で働けば儲かる」といった甘言を用いてだまして連行した事案が知られています。
また、未成年者を人身売買の上で国外に連れ出した事例が多いと言われています。
誘拐や売買という形態での略取誘拐罪です。
    
2つの判決――長崎事件と静岡事件――について詳しくは下記を参照(学部学生が勉強する刑法教科書にも註記されています。
私は大学1年の時に団藤重光の刑法綱要各論で知りました)。                         
                        
(1)長崎事件                             
                             
「慰安婦」強制連行は誘拐罪                     
http://maeda-akira.blogspot.jp/2012/07/blog-post_15.html        
                         
前田朗「国外移送目的誘拐罪の共同正犯」(『季刊戦争責任研究』19号、1998年[同『戦争犯罪論』青木書店、2000年所収])
                      
(2)静岡事件                             
                             
慰安婦強制連行の犯罪(静岡事件・大審院判決)
http://maeda-akira.blogspot.jp/2012/08/blog-post_31.html        
                         
前田朗「『慰安婦』誘拐犯罪――静岡事件判決」(バウラック『「慰安婦」バッシングを越えて ―「河野談話」と日本の責任』(大月書店、2013年)    
      
河内さんへの質問です。                         
                             
(1) 強制をどのように定義しているのでしょうか。刑法226条は無視されるのでしょうか。                  
                              
(2) 誘拐は強制ではないと解釈するのでしょうか。           
                            
(3) 人身売買は当時は仕方なかったと正当化されるのでしょうか。    
                              
(4) 未成年者誘拐罪の規定をどうお考えでしょうか。  

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強制とは何か(2)河内謙策さんへの質問
http://maeda-akira.blogspot.jp/2014/04/blog-post_9.html

前回は国内法の誘拐罪について質問しました。今回は国際法です。

「慰安婦」問題で真っ先に取り上げられてきたのは、醜業条約と略称される1910年の醜業婦ノ取締ニ関スル国際条約です。
他にも同協定や婦人等売買禁止条約がありますが、ここでは1910年醜業条約について確認すれば十分です。 

第1条 何人ニ拘ラス他人ノ情欲ヲ満足セシムル為メ売淫セシムル意思ニテ未丁年ノ婦娘ヲ傭入レ誘引若クハ誘惑シタル者ハ仮令本人ノ承諾アルモ又犯罪構成ノ要素タル各種ノ行為カ他国ニ於テ遂行セラレタルトキト雖モ処罰セラルヘキモノトス 

第2条 何人ニ拘ラス、他人ノ情欲ヲ満足セシムル為メ売淫セシムル意思ニテ詐偽、暴行、強迫、権勢其他強制的手段ヲ以テ成年ノ婦娘ヲ雇入レ誘引若クハ誘惑シタル者ハ仮令犯罪構成ノ要素タル各種ノ行為カ他国ニ於テ遂行セラレタルトキト雖モ処罰セラルヘキモノトス 

(1) 第1条は、未成年女性(本条約では21歳以下)については、たとえ本人の承諾があっても誘引・誘惑を犯罪としている。  
(2) 第2条は、成年女性については、「詐偽、暴行、強迫、権勢其他強制的手段」による誘引・誘惑を犯罪としている。
「詐偽」は「強制的手段」の例として明示されている。

日本政府はこの条約批准時に植民地に適用しない旨の留保をしたことが知られています。
以上のことから、「強制があったかなかったか」に絞ってみると、次のことが言えます。 

(1) 日本軍に「慰安婦」とされた非常に多くの未成年女性(なかには15歳や16歳の女子が多数いた)については、本人に同意能力がなく、すべて第1条に当たる。それゆえ「強制」であった。
ただし、条約は適用されないとすれば、「犯罪」として処罰しなかったことは条約違反とまでは言えない。
(2) 「慰安婦」とされた成年女性のうち、詐偽によって騙されて連れ出された事案は「強制」であった。
ただし、条約は適用されないとすれば、「犯罪」として処罰しなかったことは条約違反とまでは言えない。

前回取り上げた国外移送目的誘拐罪の大審院判決以後、日本政府は「渡航規則」に改正を加えて、日本本土からの酌婦渡航を禁止しましたが、植民地である朝鮮半島等からの酌婦渡航を禁止しませんでした。
醜業条約も植民地には適用しないと決めました。
つまり、日本政府は、あえて朝鮮半島等からの「慰安婦」連行を行いやすいようにしました(この件は小林久公さんの研究に詳しい)。 

河内さんへの質問です。 
(1) 醜業条約の強制の定義に詐偽が含まれることをどうご覧になりますか。
 
(2) 朝鮮人、中国人等の「慰安婦」に未成年者が多数いたことをご存知ですか。 

(3) それとも、条約は植民地に適用されないという理由から、強制の定義そのものを否定されるのでしょうか。

(4)それとも、これ以外の強制の定義を想定されているのでしょうか。

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強制とは何か(3)河内謙策さんへの質問

今回は奴隷の禁止です。
1926年の奴隷条約は「奴隷の禁止」と「奴隷取引の禁止」を掲げています(第2条)。
奴隷の定義は第1条に示されています。

第1条 この条約の適用上、次の定義に同意する。
1 奴隷制度とは、その者に対して所有権に伴う一部又は全部の権能が行使される個人の地位又は状態をいう。
2 奴隷取引とは、その者を奴隷の状態に置く意思をもって行う個人の捕捉、取得又は処分に関係するあらゆる行為、その者を売り又は交換するために行う奴隷の取得に関係するあらゆる行為、売られ又は交換されるために取得された奴隷を売り又は交換することによって処分するあらゆる行為並びに、一般に、奴隷を取り引きし又は輸送するすべての行為を含む。

日本政府は奴隷条約を批准していないため、公定訳がありません。
ここでは『国際人権条約・宣言集[第3版]』(東信堂)の訳文に従います。
日本政府が批准していないため、「慰安婦」問題に関して奴隷条約違反ということは言えません。
しかし、奴隷の禁止と奴隷取引の禁止は1930年代には慣習国際法の地位を獲得していたとされています。
条約を批准していなくても、守らなければならないとされています。
それゆえ、「慰安婦」問題で強制の有無を問う場合に、奴隷の禁止と奴隷取引の禁止に関する奴隷条約の定義をもとに判断することになります。
                                                                ラディカ・クマラスワミ・国連人権委員会の「女性に対する暴力特別報告者」の1996年報告書は、「慰安婦」は奴隷に当たり、日本政府は奴隷の禁止に違反した、と結論づけました。
私たちの翻訳を参照してください。クマラスワミ『女性に対する暴力』(明石書店、2000年)。
ゲイ・マクドゥーガル・国連人権委員会差別防止少数者保護小委員会の「戦時性奴隷制特別報告者」の1998年及び2000年報告書も、「慰安婦」は奴隷に当たり、日本政府は奴隷の禁止に違反した、と結論づけました。
私たちの翻訳を参照してください。
VAWW-NET Japan(バウネット ジャパン)編訳『戦時・性暴力をどう裁くか 国連マクドゥーガル報告全訳』(凱旋社、1998年[増補版2000年])
なお、1998年当時、日本政府は
「1930年代、奴隷取引の禁止は慣習国際法だったが、奴隷の禁止は慣習国際法ではなかった。だから奴隷の禁止に拘束されない」
という驚くべき主張をしていました。
なお、「慰安婦」訴訟における山口地裁下関支部判決も「慰安婦」が奴隷状態に置かれていたと認定しています。                                                                                                                                            河内さんへの質問です。
(1)「慰安婦」連行は奴隷の定義に文字通り当たるのではありませんか。
(2)奴隷の禁止は1930年代に慣習国際法だったのではありませんか。
(3)それとも、朝鮮人は奴隷にしても構わないとお考えでしょうか。

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強制とは何か(4)河内謙策さんへの質問
http://maeda-akira.blogspot.jp/2014/04/blog-post_11.html

今回は強制労働条約です。
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/standards/st_c029.htm

1930年のILO強制労働条約は「一切ノ形式ニ於ケル強制労働ノ使用ヲ廃止スルコト」(第1条1項)をめざしつつ、漸次的廃止の措置を定めた条約です。完全廃止でなかったのは時代の制約です。

日本政府は1932年にこの条約を批准しました。
「慰安婦」政策の推進はその後のことです。
従って、1990年代に「慰安婦」論議が行われた時に最初に問われたのが強制労働条約との関係です。
このブログで紹介した国外移送目的誘拐罪、醜業条約、奴隷の禁止の議論よりも前に、強制労働条約をめぐって議論がなされました。
「慰安婦」問題について、日本政府は、条約を批准していたので条約の適用を認めつつ、しかし「適用除外・適用例外にあたる」という主張をしました。
強制労働条約第2条2項(d)に当たるという主張です。

強制労働条約第2条2項(d)「緊急ノ場合即チ戦争ノ場合又ハ火災、洪水、飢饉、地震、猛烈ナル流行病若ハ家畜流行病、獣類、虫類若ハ植物ノ害物ノ侵入ノ如キ災厄ノ若ハ其ノ虞アル場合及一般ニ住民ノ全部又ハ一部ノ生存又ハ幸福ヲ危殆ナラシムル一切ノ事情ニ於テ強要セラルル労務」

「戦争ノ場合」だから「慰安婦」について条約の適用がない。
だから、違法とは言えず、日本政府に責任はない、という意味です。

しかし、1996年4月の国連人権委員会に、ILOの担当官が参加して発言しました。
その趣旨は「第2条2項(d)は緊急ノ場合を意味している。緊急時に慰安所に行くというのはどういうことか。慰安所がないと住民ノ全部又ハ一部ノ生存又ハ幸福ヲ危殆ナラシムルとはどういうことか。慰安所は第2条2項(d)の要件に当たらない」というものでした。それ以後、日本政府は適用除外の主張をしていません。

ILO条約適用専門家委員会は、1996年以来、何度も何度も日本政府に勧告を出しています。
「強制労働条約に違反した」からです。

強制労働条約は、「推定年齢十八歳以上四十五歳以下ノ強壮ナル成年男子ノミ強制労働ニ徴集セラルルコトヲ得」として、緊急の場合に男子の強制労働を認めていますが、女子の強制労働を認めていません(第11条)。

日本政府は、1996年4月までは強制労働条約違反ではないと主張していましたが、上記の件以後、反論をしていません。

河内さんへの質問です。

(1)「慰安婦」に強制があったか否かを議論する際の基準として、1930年の強制労働条約があることを認めないのでしょうか。
(2)日本政府と違って、適用除外を主張されるのでしょうか。
(3)あるいは、「女子の強制労働を禁止する」と明記していないと主張されるのでしょうか。

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強制とは何か(5)河内謙策さんへの質問
http://maeda-akira.blogspot.jp/2014/04/blog-post_12.html

今回は人道に対する罪です。

1998年のゲイ・マクドゥーガル・国連人権委員会差別予防少数者保護小委員会の「戦時性奴隷制特別報告者」の報告書は、日本軍「慰安婦」制度が人道に対する罪にあたると判断しました。
VAWW-NET Japan(バウネット ジャパン)編訳『戦時・性暴力をどう裁くか 国連マクドゥーガル報告全訳』(凱旋社、1998年[増補版2000年])参照。
2000年の女性国際戦犯法廷判決も、日本軍「慰安婦」制度が人道に対する罪にあたると判断しました。
VAWW-NET Japan編『女性国際戦犯法廷の全記録ⅠⅡ』(緑風出版)――本書は「慰安婦」問題に関する最重要必読文献です。
本書を読まずにいいかげんなことを主張している人が多いです。
ぜひお読みください。

人道に対する罪の法規定は、時期により、国際文書により、様々に違っていますが、極東国際軍事法廷条例第5条(ハ)は次のように規定しています。
「(ハ)人道ニ対スル罪 即チ、戦前又ハ戦時中為サレタル殺人、殲滅、奴隷的虐使、追放、其ノ他ノ非人道的行為、若ハ犯行地ノ国内法違反タルト否トヲ問ハズ、本裁判所ノ管轄ニ属スル犯罪ノ遂行トシテ又ハ之ニ関連シテ為サレタル政治的又ハ人種的理由ニ基ク迫害行為。」

――なお、(ハ)の原文は(C)で、BC級戦犯という場合のCです。
「慰安婦」について当てはまるのは、「奴隷的虐使」と「非人道的行為」になります。
ただ、日本政府が「奴隷的虐使」と意訳した言葉は現在の訳では「奴隷化すること」です。
日本政府が「追放」と訳している言葉deportationも、ナチスドイツのユダヤ人強制移送を念頭に置いたものであって、本来、「移送」または「連行」と翻訳するのが正しい言葉です。
「奴隷化すること」と「移送・連行」ですから、まさに強制、強制連行の定義に関わります。

強制連行の国際法的解釈については下記を参照してください。ボスニアのクルシュティチ事件判決を紹介してあります。                                                      強制連行は人道に対する罪
http://maeda-akira.blogspot.jp/2012/07/blog-post_19.html 
http://maeda-akira.blogspot.jp/2012/07/blog-post_7833.html 

人道に対する罪の適用については、1930~40年代に人道に対する罪の禁止が慣習国際法の地位にあったか否かをめぐり議論があり、日本政府はこれを否定しています。
たしかに、争いのあるところです。
しかし、日本政府が違法行為をしたかどうかとか、責任があるかどうかとは別に、強制があったかなかったかの判断をする際には重要な基準になることは否定できないはずです。
「非人道的行為」「追放」と合わせて、重要な判断基準とすることができます。

河内さんへの質問です。

(1) 人道に対する罪としての奴隷化、追放、非人道的行為が強制の定義に関連することを認めないのでしょうか。
(2) 人道に対する罪の要件にあたらないとする何らかの正当化事由を主張されるのでしょうか。                                                                
******************************** 

<追記>
人道に対する罪については、じつに多くの間違いが語られています。
国際法学者でも、じつに疑わしい記述をしています。例えば、次のような誤解です。
(1)「東京裁判で人道に対する罪で裁かれたが、日本はドイツのような人道に対する罪を犯していない」という主張が堂々と語られています。
そして、上記後段に対して「いや、日本もひどいことをした」と反論している人がいます。
間違いです。
「東京裁判で人道に対する罪は明示的に適用されていない」からです。
適用されたのは横浜裁判です。

(2)ほとんどすべての国際法学者が「人道に対する罪はニュルンベルク裁判や東京裁判で初めて適用されたから、事後法の適用だという主張がなされている」と書いています。
しかし、人道に対する罪が最初に適用されたのは、第一次大戦後のイスタンブール裁判です。
初歩の初歩さえ知らない国際法学者が多いです。
まして、一般の方は間違いだらけ。この点について、前田朗『人道に対する罪』(青木書店)参照。

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日本軍「慰安婦」強制連行を論じるための基礎知識
http://maeda-akira.blogspot.jp/2014/04/blog-post_13.html

これまで「強制とは何か(1)~(5)」を書いてきました。
日本軍「慰安婦」問題の解決を求めて取り組んできた人にとっては常識的なことばかりです。
1990年代にすでに語られ、議論が済んでいたことです。

ところが、村山談話や河野談話見直しが叫ばれる中、こうした常識を否定し、全くでたらめな議論が横行しています。
1996年頃にニセ「自由主義史観」が登場して、「慰安婦」強制連行を否定する議論が大々的に喧伝されましたが、その時と同じで、「強制とは何か」の定義をせずに、身勝手な議論を振り回しています。
安倍晋三の議論が典型例です。
「官憲が家屋に押し入って無理やり連行したわけではない」というたぐいの主張をして、「慰安婦」強制連行を全否定する嘘です。
安倍晋三の主張では、朝鮮による日本人拉致事件も強制はなかったことになります。

強制連行の有無を論じるためには、強制、強制連行の定義が必要です。
国内法にも国際法にも関連する概念の定義がきちんとあります。

ここで議論しているのは、強制があったかなかったかではありません。
強制があったかなかったかを議論する際の「強制の定義」です。
判断の基準です。
また、日本政府の責任もここでの議論の対象ではありません。
強制があったとしても、何らかの正当化理由があるとか、政府の責任を解除する理由があれば、責任はなかったという議論も可能になります。
その問題にはここでは立ち入りません。
あくまでも強制の定義をテーマとしています。                                                                                       
1 国内法 
                                                       ――誘拐罪の略取、誘拐、売買、移送概念に当たれば強制です。
略取、誘拐、売買、移送以外の強制もありうるでしょうが、それを論じる必要はありません。
略取、誘拐、売買、移送が行われたか否かを議論すれば足ります。
http://maeda-akira.blogspot.jp/2014/04/blog-post_8.html

2 国際法
(1) 醜業条約
(2) 奴隷の禁止
(3) 強制労働条約
(4) 人道に対する罪                                                                                                    ――以上の4つの国際基準に照らして、強制、強制連行があったか否かを論じることができます。
現にテオ・ファン=ボーベン報告書、国際法律家委員会報告書、クマラスワミ報告書、マクドゥーガル報告書、女性国際戦犯国際法廷判決は、これらの基準を適用しています。
ILO条約適用委員会は(3)の基準を適用しています。
http://maeda-akira.blogspot.jp/2014/04/blog-post_9.html
http://maeda-akira.blogspot.jp/2014/04/blog-post_10.html
http://maeda-akira.blogspot.jp/2014/04/blog-post_11.html
http://maeda-akira.blogspot.jp/2014/04/blog-post_12.html

3 河内謙策さんの特徴
河内さんは、4月7日の投稿「IK改憲重要情報(48)」において、何の根拠も示さず、強制の定義も示さずに、いきなり「慰安婦」強制連行否定論を唱えました。
河内さんは、4月11日の投稿「IK改憲重要情報(49)」において、次のように述べています。
「河内は、2010年の尖閣事件についてのメールでのやりとり以来、メールにての『論争』は人を傷つけがちで生産的ではないと考えていること、このような多くの人の意見と『論争』することは河内の体力が許さない状態であるので、まことにすみませんが、私は、私の意見についてのコメントに『再反論』と言う形はとりません。」

最後に、河内さんの主張の特徴をまとめておきます。
(1) 法学部学生でさえ知っている誘拐罪に関する基礎知識すら持っていない。
(2) 誘拐罪について指摘されても、強制の定義に誘拐罪を採用することを認めない。
(3) 「慰安婦」に関する国際法について、1990年代の早い時期からすでに明確にされていた国際条約と慣習国際法を知らない。
(4) 醜業条約、奴隷の禁止、強制労働条約などを指摘されても、強制の定義にこれらを採用することを認めない。
(5) つまり、20年にわたって国際社会で議論され確立してきた常識を、何も根拠を示さずに、全否定する。
(6) そのことによって、「慰安婦」被害者=サバイバーたちを侮辱し、傷つける発言を一方的に垂れ流す。
(7) 2013年の国際社会権委員会が、日本政府に対して、「慰安婦」に対するヘイト・スピーチを止めさせるように勧告したが、それを無視して「慰安婦」に対する侮辱を繰り返す。
(8) 「慰安婦」を侮辱し、傷つける発言を垂れ流しながら、自分の都合で、「メールにての『論争』は人を傷つけがちで生産的ではないと考えている」と弁明し、責任逃れをする。
 

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