福島原発の放射能を理解する カリフォルニア大学Monreal氏による講演のスライド

2011-03-20 11:58:59 | 社会
福島原発の放射能を理解する
カリフォルニア大学のMonreal氏による講演のスライド(クリックでPDFが開きます)

オリジナル

野尻美保子(高エネルギー加速器研究機構/東京大学IPMU)

久世正弘(東京工業大学理工学研究科)

前野昌弘(琉球大学理学部)

衛藤稔・石井貴昭・橋本幸士(理化学研究所仁科加速器研究センター)

  翻訳の許可をオリジナル作成者よりいただいています。

  資料の部分抜き出しによる流布はご遠慮ください.
2011年3月18日:バージョン1を公開
翻訳者:
素粒子原子核分野の研究者/院生の皆さん

今回の震災に起因した福島原発の事故について国民の不安が高まっています。チェルノブイリのようになってしまうと思っている人も多いです。
放射線を学び、利用し、国のお金で物理を研究させてもらっている我々が、持っている知識を周りの人々に伝えるべき時です。
アメリカのBen Monreal教授が非常に良い解説を作ってくれました。もちろん個人的な見解ですが、我々ツイッター物理クラスタの有志はこれに賛同し、このスライドの日本語訳を作りました。能力不足から至らない点もありますが、皆さん、これを利用して自分の周り(家族、近所、学校など)で国民の不安を少しでも取り除くための「街角紙芝居」に出て頂けませんでしょうか。

よろしくお願いします。
http://ribf.riken.jp/~koji/jishin/zhen_zai.html

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「福島原発の放射能を理解する」の翻訳へ頂いたコメント等につきまして/油断するなここは戦場だ
.昨日公開しました、 Monreal 氏の講演(「福島原発の放射能を理解する」の翻訳については、いろいろ不安もあったのですが、昨晩はおおむね肯定的な反応をいただいており、一安心しているところです。

まずこれを翻訳した動機について述べます。このスライドの特徴として、21ページ目から段階をおって、炉心損傷がすすんでいくところをわかりやすく示しているところにあると思います。現在の炉の状態は24ページから25ページに進むことを阻止しようとしている段階と理解できるでしょう。燃料そのものに着火するほど温度があがると、環境に長期的にのこる核燃料が出るので、それを防ぐための作業が行われていることが、わかりやすく書かれていると思います。また26ページのチェルノブイリ事故とくらべると、遥かにコントロールする可能性があることも分かります。

もう一つこのスライドの良い部分は、物理現象、生命に体する危険、炉の状態、今後の予想までがコンパクトに入って短いことだと思います。地震からすでに一週間たち、ネットや新聞紙上にいろいろな解説がされています。ここに書かれている情報は、すでにいろいろなところで目にされていることばかりですが、一つの講演に収まる分量での解説も重要であると思います。一方講演スライドであるが故に記述が簡単化され問題があるのではないか、というご指摘もいただいています。講演は本来話者との対話と一体として考えられるべきもので、記述の不足は講演の中で修正されるべきものです。本来の講演のよさを残すためにこのまま残しますが、改めて、これだけを判断の材料をされるのではなく、詳しい資料のにあたるための糸口として使っていただきたいと思います。尚、このサイトに英語ですが講演の音声があります。

いくつかいただいたコメントについて私なりのお答えをしていこうと思います。内部被曝の重要性について記述がない、あるいはヨウ素、セシウムについての記述が十分でない、プルトニウムの化学毒性について、といったコメントは頻繁にいただいています。ヨウ素は甲状腺への蓄積があり、チェルノブイリでは小児ガンの増大が問題になりました。これについては事前にヨウ素剤を飲む事で防御可能です。セシウムは体内蓄積はありません。一旦摂取すると100〜200日程度体内に残りますが、危険度はヨウ素よりも低いと考えます。講演スライドであるということから大幅な加筆は必要ないと考えています。またこのスライドについては、原発近くの危険な環境で現在作業する方は、長期的な復興作業の詳しい解説を意図したものではなく、プルトニウム等についての記述も大幅に増補注釈をつける必要なないと考えています。より詳しい解説は他のサイトをあたって頂ければと思います。

放射線の危険性の記述が軽すぎるのではないか、というご指摘も多くいただきました。このスライドでは大きく健康に影響のある値を基準にして議論がすすめられていますので、逆の立場から説明してみたいと思います。平均的な自然放射線は 2mSv/year 程度で、一時間あたりにすると 0.2μSv/h になります。この 前後で放射線の数値が増大しているうちは、特段の対策は必要ないと考えられます。胎児に何らかの影響がみとめられる量は年間50mSvだそうです。たとえば原発の今の状況が100日程度続くと仮定すると、20μSv/h 程度が続くような状況は大変問題であると考えています。福島県では原子炉から50Km離れた福島市で、一日以上 20μSv/h 程度の線量が続くということがありましたし、また30Km圏内のすぐ側で、100μSv 程度の線量を維持してる場所が複数あります。現在はかなり下がっており、また、文部科学省で測定を継続されているようですが。(茨城県でも継続して測定されています)さらに強化・継続していただいて、確実にリスクを下げることが重要です。

リスクには個人のリスクと公衆衛生上のリスクがあります。個人的な発ガンのリスクが1%あがることは10万の人中1000人の発ガンを意味することになります。(それでもタバコの公衆衛生上のリスクよりは低いですが、) リスクをどの程度にとどめるべきかについては、国民的な理解とコンセンサスが必要です。それがスライド最後の「放射線量を計って決断しなさい」ということの趣旨であると思います。

再臨界するのではないか、というご質問をよくうけますが、これははっきりいって手に余ります。沸騰水型の原子炉は水を使って中性子を減速させ、核子に取り込まれる確率をあげることで臨界となる炉です。臨界(ウランから出る中性子が次の反応を引き起こす)するには、中性子が外にでることができるように)細い形状の燃料(の間に隅々まで水をいれ、となりの燃料に効率よくとどくようにしなければなりません。制御棒が突然おちて臨界になっても水がなくなれば反応が止まります。さらにスリーマイル島では燃料が圧力容器の底にばらばらになってたまる状況になりましたが、臨界には達していません。これよりさらに悪い状況を仮定した時に何がおこるかは原子力関係者の分かり易い公開講演等を期待したいと思います。そもそも、講演をされた方、翻訳者も、素粒子、原子核の理論・実験の研究者です。つまり、原子核の個々の反応については詳しく、関係書籍を読めばそこを踏み越えた部分についても多少言及できる知識はもっておりますが、原子炉内の工学的な問題について「絶対」おこらない、あるは起こりうる等の発言はできませんので、その点ご理解いただきたいと思います。MOX についても同様です。

最後に,大きな変更を伴うご提案をいただいていますが、元の講演の内容から大きく変更することは「翻訳」の趣旨からはずれます。大きな改訂を行うことは考えておりませんので、なにとぞご理解頂きたいと思います。また意図的に訳出しなかった部分があります。「石炭燃料を燃やす事による放射能拡散のリスクの方が高い」という文章は講演中の笑いを取るためのテクニックとしては良いかもしてませんが、不謹慎とも思われるので省きました。(「運転中の携帯電話の操作リスクの方が高い」という文面も今は訳出していますが私はとりたいと考えています。) もとのスライドの誤植、明らかな誤訳についてのご連絡を頂いていますので、そちらについては早急に確認したいと思います。
http://blog.goo.ne.jp/admin/newentry/


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