支援食料「横流し」って本当?RENK発表への疑問/寺尾@多治見

2005-06-26 11:19:51 | 世界
朝鮮への支援食料が横流しされている、との「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク(RENK)」のビデオ映像を伴う情報が、何ら検証を受けることもなく、日本のマスコミ(TBS、毎日、産経、新潟日報など)に垂れ流されています。これに対して長年、日本による強制連行強制労働や軍慰安婦(性奴隷)被害者を朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)で現地取材し、また、今回問題になってい
る世界食糧計画の活動も現地取材してきたフォトジャーナリストの伊藤孝司さんから、ご自身の目で見た現地の食糧援助事情、今回の「横流し」情報に対する国連世界食糧計画ピョンヤン事務所から出された声明(英文)を送ってくださいました。伊藤さんのお許しを得て、伊藤さんのお手紙と、私が翻訳した声明を、送ります。現地で実際に支援活動を行っている方がた、現地を実際に見てきた方のご意見はとても重いと思います。

http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/4207f8817588e17bd45ff0acd33c008d
~~~~~~~~~~~ 伊藤さんからのお便り ~~~~~~~~~~~

伊藤孝司です。

 「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク(RENK)」は05年6月21
日にソウルで記者会見を行い、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の市場で隠し
撮りしたビデオ映像を公表した。「『WFP』の紋章と『日の丸』が大書きさ
れ、その上には英語と朝鮮語で『世界食糧計画』と書かれている」穀物袋の映
像がその中にあったことについて、「これは、昨年5月に小泉首相が二度目に
北朝鮮を訪問した際に表明した『25万トンの食糧援助』のうち、実施された
12.5万トン(約4000万ドル相当)の一部である」と断定した。つまり日本政府
による支援食糧が「横流し」されたというのだ。私は、このような悪意に満ち
た宣伝がいまだに行われていることに驚く。
 
 私は昨年、日本政府がDPRKに対して行った食糧支援を取材した。小泉首相の
再訪朝で食糧支援が決まると、その実態を取材するためにDPRKの関係機関と
「世界食糧計画(WFP)」に取材を申請。困難が予想されたので、交渉のため
9月に8日間の訪朝をし、その上で10月7~23日までDPRKでの取材を実施
した。「WFP」平壌事務所の全面的な協力が得られたため、日本政府から最初
に届いた支援食糧について時間をかけた取材を行うことができた。それはTBS
系列「報道特集」04年11月7日放送、月刊「現代」04年12月号、「週
刊金曜日」04年11月19日号に発表。

 「WFP」は平壌(ピョンヤン)以外に5カ所の地方事務所を持ち、34カ国
からの40人のスタッフを配置して、毎月500回もの監視活動を実施してき
た。米国人のリチャード・ラガン「WFP」平壌事務所代表は、「私たちは監視
活動によって、支援物資は住民たちに確実に渡っているとはっきり言える」と
語っている。

 私は穀物袋が再利用されている光景を見たことがある。平壌市内の「統一通
り市場」の穀物売り場では、「WFP」や韓国政府からの食糧支援で使われた古
い袋が並んでいた。破れた箇所は丁寧に補修して使っていた。また、チョンド
ン協同農場の精米所には「WFP」の表示がある空の穀物袋が大量に積まれ、農
場で収穫した米を詰める作業が行われていた。

 RENKが横流しの証拠とした穀物袋は、かつての食糧支援で使用された袋が再
利用されたものであるのは確かだ。「WFP」は今までにもこうした映像が公表
されるたびに、再利用の袋であると反論してきた。にもかかわらずRENKが同じ
ことを繰り返すのは、「WFP」を通しての国際社会による DPRKへの食糧支援を
破綻させようとしているとしか考えられない。
 「WFP」は5月27日、DPRKへの食糧支援の危機的状況を訴えた。「各国からの
拠出不足によって支援している約380万人への食糧援助を今後2カ月間カットし
なければならない」というのだ。「WFP」の食糧は社会的弱者に対して支給さ
れており、その活動を妨害すれば子供やお年寄り、妊婦などの命を確実に奪う
ことになる。
 米国はDPRKと敵対的関係にあるにもかかわらず、「WFP」を通しての食糧支
援を続けてきた。この22日には5万トンの支援を発表している。

 もう一つ問題がある。日本の新聞・テレビ・通信社の多くは、RENKのこの発
表をそのまま報じた。「WFP」日本事務所は、この件についての日本のメディ
アからの問い合わせを受けていないという。日本政府が贈った食糧を実際に
扱ったのは「WFP」であり、その名前が入った穀物袋が問題になっているにも
かかわらず、「WFP」日本事務所に電話取材さえしていない。RENKによる事実
に反した発表をそのまま流すならば、DPRKでの多くの庶民の餓死に加担するこ
とになる。

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伊藤 孝司(いとう・たかし)
http://jca.apc.org/~earth
===========

~~~~~~~~ 国連世界食料計画対プレス声明 ~~~~~~~~~~

対プレス声明
2005年6月22日

朝鮮における支援食料横流し疑惑に対する回答

木曜日にソウルで一非政府組織(NGO)が報道各社にビデオ映像と写真を配布
し、日本政府の援助食糧が朝鮮の市場で売られていることの証拠であると主張
したが、世界食糧計画(WFP)はこのような全く根拠がない主張は認めない。

WFPが9年前に活動を始めて以来、1億6000万袋を超える救援食料を朝鮮国内各
地に配給してきた。朝鮮では――WFPが活動しているたいていの国と同様――食料
を入れる袋を様々な目的に再利用することは、当たり前にまたどこでも行われ
ているところである。

今回NGOが流した映像に写っている袋が再利用されているものであることに、
WFPは何の疑いも持っていない。これらの袋にもともと入っていた援助食糧
は、昨年10月に配給し始めたものだ。NGOによると、問題の映像は今年4月に
撮ったものとのことだ。

映像には世界食料計画の標識と日の丸が印刷された袋が写っているが、これは
朝鮮で広く見られ長年の慣行になっている、もともとは援助食糧が入っていた
袋のリサイクリングの証拠であるに過ぎない。

外国からの食糧援助の必要性が朝鮮ではとても高いので、船積された食料は入
港するやいなや直ちに国内の配送され、もともと入っていたものが出されて空
になると袋は早速再利用されるのが普通である。

朝鮮駐在のWFP職員たちは――そのほとんどが配給食糧の追跡と監視に当ってい
る――大量の袋がリサイクルされているのを仕事の中でごく普通に見ている。

職員たちはまた、収穫期には朝鮮の農場労働者が、米、とうもろこしなど収穫
した穀物を収納するのに援助食糧の空袋を利用しているのを見てもいる。その
ような袋は穀物を入れてからたいてい機械で封をされ、袋が比較的に新しいも
のだと、まだ使われていない新品と変わらないように見える可能性がある。

このNGOはこれまで一連の疑惑を出しているが、今回のこの疑惑をWFPは遺憾と
するものであり、絶望的なまでの飢餓にさらされている数百万の朝鮮国民のた
めの食糧援助を確保する我われの努力を、台無しにしかねないと危惧するもの
である。

リチャード・ラガン
国連世界食料計画
ピョンヤン事務所代表
ピョンヤン、2005年6月22日
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参考//北朝鮮への食糧支援は止めるべきか
minow175
http://blog.livedoor.jp/minow175/
「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク」 RENKは、北朝鮮民主化を目指す脱
北青年が中朝国境地帯の「南興(ナムフン)市場」に潜入し、写真撮影に成功したと
発表。
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/renk/renkflashno8.htm
RENKによるとこの写真は、この市場で売られている穀物の袋を写しており、袋に印字
された文字から、昨年5月小泉首相二回目訪朝の時に決定した実行分12.5万tの援助物
資であると断定している。
RENKは、「WFPのリチャード・レーガン平壌事務所長は先月31日、「特別な支援対策
が準備されない限り、今年、妊婦、高齢者など約350万人たちへの支援が中断される
ことが考えられ、その場合、最悪の事態になる」と憂慮を表明した。」という記事を
引用し、北朝鮮の食糧事情が10年来変わらず悪化していることを嘆きつつ、食糧支援
以上、民主化支援が必要であると訴えている。
これに対し救う会は、緊急声明を出し、この横流しを非難。「炊き出し方式など確実
に飢えた人々に食べてもらえる方式を考えていくべきだ。」とし、善意の行為が悪意
に利用される食糧援助は即刻廃止すべきだと訴えている。
http://www.sukuukai.jp/houkoku/log/200506/20050621-2.htm
食糧援助が北の困っている住人の口に入らず、為政者や支配階級のみに行き渡り、か
つ、それが転売されたり、国内での不届き者や軍の横流し横領が行なわれ、不正に蓄
財される。体制の延命にしか役立たず、さらに、その資金が、核や軍備増強の資金に
充てられるという危惧である。
そして、救う会の炊き出し方式もいいだろう、だが、あまりに現実的ではない。
RENKにあっては、民主化支援と食糧援助とどう結びつけるのか、その考察が必要であ
るが具体的な言及は見えてこない。
よく考えれば分かることだが、朝鮮国内の市場や、チャンダマンでどんなに転売を繰
り返してもそれを外貨に替えることは出来ない。
絶対量が余っている分けではないし、どこかに個人が大量貯蔵しても無意味であろ
う。そして、援助食糧を外貨に替るのは実際には容易ではなく、万t単位や千t単位で
売りに出れば国際社会で直ぐにバレてしまう。
中朝国境辺りで現場の軍の将校が10tや20tぐらいを中国側の商人に売りさばく、な
んてことは考えられる。十分にありえよう。だが、全体からすれば外貨に替えられる
のは、極僅か無視できる範囲である。
援助物資であっても市場で売られれば、食料は小口に実需に向かって下降していくだ
けだ。その段階である程度、一部流通マージンが上乗せされ市場で値段が付くこと
は、当然考えられる。
食料の絶対量が不足すれば、軍や党官僚、保衛部から食料を捕っていき末端の労働
者、チャンダマンに集うコッチェビ(浮浪児)や政治犯収容所の政治犯ら弱い物から
倒れていくだけだ。

RENKの撮った写真は、その現象の一部を垣間見せたに過ぎない。
重要なのは、末端の市場に転がる麻袋の印刷から転売だと不正だとあげつらうのでは
なく、自由な市場が機能し始めている実態を掴むことだ。
昨年度、北朝鮮は不足の食糧を大きくタイからの輸入でまかない、タイとの貿易額が
激増している。
援助食糧は、絶対量が少なければ外貨には変わらないが、外貨に替えられなくても、
外貨を節約すると言う効果はあるということだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050504-00000017-san-bus_all
>食糧難によりタイからはコメの、エネルギー難でロシアからは精製油の輸入がそれ
ぞれ増加した。
国際社会は、六ヶ国協議がまとまり、国際社会の一員になるまで、北朝鮮の食糧事
情、及び貿易収支をよく監視し、軍備拡張につながる余分な資金は掴ませない必要が
ある。
その収支範囲内において足りない食料は援助すべきなのだ。

●戦略的援助
6/22にアメリカが北朝鮮に対する人道食糧支援を再開、世界食糧計画(WFP)の要
請に基づいて5万トンを拠出すると発表した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050623-00000055-kyodo-int
アメリカのこの行動は、6カ国協議再開へシグナルと見られるが、アメリカは核協議
が行き詰まりを見せ、北朝鮮との関係が最悪に見えていても実は、最低限の人道的食
糧援助は毎年実行している。
ブッシュ政権の北朝鮮についての援助政策は、援助により、北朝鮮が宥和的態度に心
変わりをすることを期待する太陽政策ではなく、また、締め上げれば餓死者を出して
も平然としていた95年~98年の封鎖政策の失敗を繰り返さない別な物でもある。
第二次ブッシュ政権では、ジョージタウン大学ビクター・チャ準教授が新たに日本・
朝鮮担当部長として国家安全保障会議(NSC)に入ったが、彼が2002年にFOREIGN
 AFFAIRSに発表した論文によると、「彼ら(タカ派)は人道援助も北朝鮮の民衆が
体制と戦う意志を持つようになる事の投資だと考えている。」と述べて人道援助をむ
しろ戦略的に捉え、独裁体制を崩す為の刺激と考えているのだ。アメリカの戦略の一
端が伺える。
また、黄長元労働党秘書も、さらに「対北朝鮮食料支援は金正日政権を助ける結果
につながるため、北朝鮮住民を助けてはならないという主張もあるが、独裁者と人民
を区分して支援することは(北朝鮮民主化のため)戦略的に望ましく、道徳的にも正
しいこと」と述べ、あくまでも、北朝鮮の内部的力を覚醒させることを重視する戦術
的な援助論を展開している。
板門店に100tでも200tでも積んで、持っていけと催促するぐらいがいいと言いう彼の
言葉がそれを表している。
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/12/07/20041207000086.html

このように食料援助を戦略的にとらえると、食料も北朝鮮に対する戦略物資と考える
ことが出来る。

●瀬戸際政策
94年米朝合意以後、95年から98年にかけ、北朝鮮は、ソ連からの援助がなくなり、中
国、韓国にも冷遇され、アメリカの50万トンの原油供給も途絶えがちだった。飢饉や
国家政策の失敗により、350万人もの餓死者を出し、崩壊するかに見えたが、金絶対
王朝は崩れず先軍政治から戦争準備にまい進した。この時世界は、結果的に北朝鮮に
孤立政策を強いたが潰れなかった。そして98年テポドンミサイルが発射された。
任期終了間際のクリントン政権は、国が潰れずミサイルを開発をした北朝鮮に些か性
急過ぎる譲歩を試みたが、ブッシュ政権は、それを嫌った。
.9.11の同時テロ以降は、翌年の一般教書演説で北朝鮮を”悪の枢軸”と呼び。それ
までのミサイル協議の上に通常兵器の削減までも要求、同時に、イラク戦争の過程で
核の闇ルートが発覚、02年末からの核危機が勃発した。クリントンの路線は、跡形も
なく砕け散り、50万tの原油援助を止め、食糧援助も減らし、封じ込め政策に走っ
た。
これは、北朝鮮が核開発を止め、NTPに復帰、IAEAの査察を再び受けるまで圧力を加
えるものだ。
ブッシュはさらに六カ国協議という国際的包囲網をかけ、協議不調の場合を睨んだ懲
罰連合体形成への布石を敷いた。
ブッシュ政権の圧力に対し、北朝鮮は03年初頭NTPから脱退し、プルトニウムの抽出
を始めたと宣言、今年2月には核兵器保有宣言までやってのけた。
北朝鮮は、”孤立”させても”封じ込め”をしても、戦争準備を始める。

●改革開放路線へ
状況は変化してきている。
現在は、中朝関係、朝韓関係共に改善され、悪くなったのは日朝関係と米朝関係であ
る。が、一番大きく変わったことは、北朝鮮自らも学習し改革開放を受け入れつつあ
るということである。
2002年7月に大規模な経済改革が発動され、闇市の公認、市場経済の導入、配給制度
の廃止、賃金の上昇とインフレ策、経済特区の導入、南北の経済交流の拡大と大きな
地殻変動が北朝鮮に始まったといえる。
02年9月、日朝首脳会談で拉致を認めて謝罪し、日朝国交正常化の道を北朝鮮が急い
だのも、アメリカの対テロ戦争の圧力を防ぐというよりも、この経済改革を進めるた
めの資金を調達するという意味合いも重要だった。
最近の中韓の北朝鮮への競争的投資ラッシュを考えると、この改革動きは、本物のよ
うである。
だが、市場経済の導入は、資本主義の導入と言うことであり、その前提として市場に
対する資本の自由な移動と投資環境(インフラ、法令)の整備がのみならず、自由な
才覚を持った企業家が域内での自由な経済活動を保証する人権保障(私有財産の保
護、思想信条の自由)体制も整備しなければならない。
行く行くは外国人や一部の特権階級のみならず、広く一般人にも自由を認めていかざ
るを得ない。これは、まさに首領独裁政治の否定に他ならず、金正日が自ら粛清に
よって築き上げてきた体制の自己否定である。
三年経ち中国は非核化に向け北朝鮮を説得しつづけ改革路線を支持している。また北
朝鮮も学び、改革開放路線を受け入れ始めた。北朝鮮の変化を呼び覚まし、開放改革
路線に導くことに成功している。両刃の剣ともいえる改革開放に北朝鮮は踏み出し
た。食料が相手を変える戦略物資として最も影響力が出てくる時点である。
アメリカも北朝鮮の変化を見逃さないだろう。また、中国を孤立策の仲間に引き入れ
ることが出来ないことをアメリカは悟り、封じ込めも、北朝鮮の体制を崩壊させるこ
とが出来ないことを知った。どちらも、核開発やミサイル開発を止めさせられないと
なれば、大きく揺れるアメリカの政策も一貫してくるだろう。
孤立でも、封じ込めでも、また太陽政策でもない、相手の変化に応じた第四の多国間
の関与策が成功するだろうか。
其の成功が、北朝鮮の核、ミサイル放棄の見返りに安全保障の枠組みと援助を与える
ことになるか、さらなる北朝鮮の瀬戸際政策を呼び、懲罰連合の形成になっていくの
かは予断は許さない。
しかし、北朝鮮の変化を即す策というのは、どちらになるにせよ必要であり、変化は
必然であると言えよう。

http://blog.livedoor.jp/minow175/

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