売り物の石油:イラク研究グループ、民営化を推奨/アラビアニュース

2006-12-10 22:15:08 | イラク

売り物の石油:イラク研究グループ、民営化を推奨

アントニア・フハス、AlterNet。2006年12月7日投稿。
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イラク研究グループは、どのようにして戦争を終わらせるかという解決策は持ち合わせていないかもしれないが、企業家の友人達に金儲けをさせる方法は分かっている。

水曜日に発表された大いに待望されていた報告書の中で、イラク研究グループは、少なくとも4つの実に急進的な提案を行っている。

報告書は、アメリカ合衆国がイラク国営石油企業が民営化するのを支援し、イラクを外国の民間石油、エネルギー企業に対してオープンにし、イラクの新たな国家石油法「草案」作りの為に直接的な技術援助を提供し、イラクの石油収入全てが必ず中央政府のものになるようにするよう呼びかけている。

ブッシュ大統領はアメリカのコンサルタント企業ベアリング・ポイント社の社員を雇い入れた。一年前イラク石油省に新たな国営石油法の草案作成と可決のため助言した。先に草稿された法律は、イラクの国営石油部門を、民間の外国企業投資に開放するが、完全な民営化までは踏み込んでいない。イラク研究グループの報告書は、しかしながら、さらに踏み込んでおり、「アメリカ合衆国は、イラク人指導者が、国営石油企業を民間企業して再編するのを支援すべきである」と述べている。更に、現在のイラク憲法では、イラクの石油は、地域の州の間で分けるべきか、あるいは中央政府が支配すべきかという点が曖昧だ。報告書ははっきりと後者を推奨している。「石油収入は中央政府のものとなり、人口に基づいて配分されるべきである」。もしもこれらの提案通りになれば、イラクの国営石油企業は民営化され、外国企業に対して開放され、イラクの石油の富全てを支配するだろう。

提案書の内容は、報告書の二人の著者つまり、ジェームズ・A・ベーカー IIIとローレンス・イーグルバーガー(国務次官)は、それぞれ政治的、企業的な経歴のほとんどを、イラクの石油と富をより多く得ることに費やしてきているのを考えれば、ほとんど驚くにあたらない。

「現実主義者」というのが、イラク研究グループの共同議長ジェームズ・A・ベーカーIIIを表現するのに最も良く用いられる単語だ。これはまた同様にローレンス・イーグルバーガーにも適切だ。この単語は、1980年代から1990年代の、サダム・フセインに対するアメリカの経済的関与を拡大するというそれぞれの人物の努力に特にぴったりあてはまる。彼らの努力は、フセインとアメリカ企業、特に石油会社を豊かにしたのみならず、彼らの個人的な企業の利益にも役だった。

1990年4月21日、サダム・フセインの反アメリカ的発言とクウェート侵略の脅威が激しくなった際、彼をなだめるべくアメリカの代表団がイラクに派遣された。当時ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の国務長官だったジェームズ・A・ベーカー IIIは、バグダッドのアメリカ大使館に個人的に電報を送り、アメ
リカ大使がフセインと会って、「イラクの化学、核、およびミサイル計画に懸念は持っているものの、アメリカはいかなる意味においても、これらの計画を抹殺するための一方的な先制的軍事的攻撃の準備をしていることはない」ことをはっきりと伝えるように指示した。

そうではなく、ベーカーの関心は彼が、「アメリカ-イラク関係における中心的な要素」とのべた貿易にあった。レーガンがイラクテロリズム支援国家リストからイラクを除外した1982年から、イラクがクウェートを侵略した1990年8月まで、ベーカーと イーグルバーガーは、レーガンとブッシュ政権で、他の連中
と協力して 積極的に、また成功裏にこの貿易を拡大した。

ブッシュ移行チームによって1988年に書かれた、アメリカ合衆国は「イラクを、できる限り敬遠すべき不快な独裁国家として扱うべきか、あるいはイラクを地域における現在と将来における潜在的に有力な国家と認識して、比較的高い優先度を与えるか決めねばならないが、我々は後者の見解を強く推奨する」と主張するメモがそうした動きの有効性を良く物語っている。言われていた二つの理由は、「アメリカ商品にとって利益の大きい市場」を約束するイラクの「膨大な石油埋蔵量」と、アメリカのイラクからの石油輸入が急増したという事実だ。ブッシュとベーカーは、移行チームのアドバイスを採用し、それを推進した。

実際、1983年から1989年まで、アメリカ合衆国とイラク間貿易の年間取引額は7倍に増え、イラクがクウェートにするまで1990年には倍増することが予想されていた。1989年には、イラクは中東で二番目のアメリカ合衆国の貿易取引相手となった。イラクはアメリカの輸出52億ドルを購入し、一方アメリカはイラクの石油を55億ドル購入していた。1987年から1990年7月、アメリカのイラク石油輸入は一日80、000バレルから1.1百万バレルへと増えた。

イーグルバーガーとベーカーは、この貿易急増に大いに関与していた。1983年12月、イーグルバーガー国務次官は、アメリカの輸出入銀行に手紙を書いて、個人的に「我々がイラク経済の将来の実現可能性を信頼しているという信号を出し、潜在的に大きな輸出市場にアメリカの足場を確保」すべくイラクへの融資拡大を開始するよう促した。彼は書いている。イラクは「石油輸出を1984年末迄に更に50パーセント増加する計画を持っている」。究極的に、アメリカ政府によって、あるいはその支援を受けて、イラクの独裁者に何十億ドルの融資が行われ、その金はフセインによってアメリカの商品購入に使われた。

1984年、ベーカーは財務長官となり、レーガンはイラクとの完全な外交的関係を始め、イーグルバーガーは、ヘンリー・キッシンジャーの企業顧問会社、キッシンジャー・アソシエーツの社長になった。

キッシンジャー・アソシエーツはアラン・ストガ会長経由でアメリカ-イラク・ビジネス・フォーラムに参加していた。フォーラムは、ベクテル、ロッキード、テクサコ、エクソン、モービル、及びハント石油を含む60程のアメリカ企業が加入している産業団体だった。1985年アメリカ合衆国駐在イラク大使はワシントン、D.C.で聴衆に向かって述べた。「バグダッドにいる我々の国民は、二社間の競争があった場合には、フォーラムのメンバーである企業を優先するでしょう」。ストガは、フォーラムの催しに定期的に出席し、フォーラムがスポンサーになってイラクに出張し、1989年の出張では直接フセインと会合した。キッシンジャーの顧客の多くはフォーラムのメンバーでもあり、フセインとの契約の受益者となった。

1989年、イーグルバーガーはベーカー長官のもと国務省に戻った。同年、ブッシュ大統領は国家安全保障指令26に署名した。「我々は、イラク経済、とりわけエネルギー分野の再建に、アメリカ企業が参加する機会を求め、それをより容易にするよう度量すべきである」

ベーカー長官が国務省でタリク・アジズと契約締結の為に会談する一週間前に大統領は、イラクに対する10億ドルの融資保証の議論を始めた。

だがフセインがひとたびクウェートを侵略すると、準備していたことはすっかり無駄になった。ベーカーは、 「産業界の経済的なライフラインは、湾岸から始まってお
り、このような独裁者がその経済的ライフラインに馬乗りになっているのを認めるわけには行かない」と主張し、フセインに対する軍事行動を支持するよう、公に呼びかけた。

ベーカーは、イラクの石油が入手しやすくなったことで大いに潤った。著者のロバート・ブライスによると、第一次湾岸戦争当時の石油産業に対するベーカーと彼に近いメンバーの個人投資には、アモコ、エクソンとテクサコ等への投資が含まれるという。彼の弁護士事務所ベーカー・ボッツが取引している企業には、テクサコ、エクソン、ハリバートンとコノコ・フィリップスなどがあり、何社かは1914年以来、また多くの場合何十年もつきあっている。(イーグルバーガーもハリバートンとはつながっており、つい最近、同社の重役を辞めたばかりだ)。ベーカーは長らくベーカー・ボッツの共同経営者であり、今や代表社員であるが、同社は今年で、二年連続して、「世界弁護士紳士録・石油&ガス法律弁護士事務所オブ・ザ・イヤー賞」を受賞しており、中東は同社業務の中心となっている。

7月、バグダッドで、アメリカのエネルギー庁長官ボドマンは発言した。アメリカの石油会社の上級幹部は、新たな法律の可決無しにはイラクには入国しない、と。石油エコノミスト雑誌は、アメリカの石油企業は、治安に関する懸念以前に、石油法の可決が、イラクに入る上で決定的な要素だとしていると報道している。早い話、石油会社は、彼らが戦争前に否定していたこと、現代イラク史において常に行われていたことを、手にいれようとしているのだ。イラクの地下にある石油へのアクセスだ。彼らはまた、戦争によって荒廃し、占領された国家から、できるだけ一番うまい汁を吸おうとしている。彼らが仕事を始めるに当たり、法律可決を待つこととアメリカ企業に対する治安保証の必要性こそが、大きくマスコミの注目を引いているイラク研究グループによる「アメリカ軍のイラク駐留を少なくとも2008年まで延長する」という提案の主要要素なのかも知れない。

イラク研究グループの勧告は一層練り上げられているから、現実主義者の衣服をまとった戦争で潤う企業に対して、我々は一層警戒し、注意を怠らないようすべきだ。

*全ての引用は拙書「ブッシュの狙い」からのもの。

http://www.alternet.org/story/45190
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goose さんの労訳です。

【アラビア・ニュース】  齊藤力二朗
http://groups.yahoo.co.jp/group/arabianews/



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