密着「河村流」・この人に聞く 呉智英/朝日新聞

2010-09-22 11:30:41 | 社会
銃弾や暴力によって統治者が決まるのではなく、投票によって選ぶのが民主主義だ。
血が流れない分、よりマシな政治形態と言えるが、民意は時にぶれ、うつろいやすいという欠点が潜む。
大衆の支持をいかに集めるか。
河村たかし・名古屋市長は、我々を扇動する技術にたけているという意味で有能な政治家だ。
普段は使わないような、くだけた名古屋弁を意図的に使ったり、自転車に乗って街宣したり、待遇の良い公務員への
ねたみをあおったり。
論理より情動に訴える。
減税と聞けば、誰だって増税よりありがたい。
でも税を減らせば、サービスも削ることになる。
小泉改革の小さな政府路線で「セーフティーネットが崩れた」「格差が広がった」と騒いだのに、もう忘れている。
大衆とは、民主主義とは、そんなものなのだ。
結局、河村さんの政治はポピュリズム(大衆迎合)。
だが、それを招いた責任はむしろ、矛先を向けられた「エリート」の側にある。
家業化した市議会議員や硬直化したお役所が、政治への信頼を失わせた結果なのだから。
河村さんはどこに向かうのか。着地点が見えない。
議会や税金をめぐる議論は、役所の仕組みの問題。
本来は、どんな社会を目指すのかビジョンを語らないと。
もしかしたら理念はなく、一番の動機は功名心なのかもしれないが。
ただ、将来像を示せないのは、冷戦後20年たっても「理想」を見いだせない時代のせいでもある。
形を与えられない大衆の情念は、扇動の仕方によってはナショナリズムに転ずる危うさもある。
(聞き手黛茜本秀)

くれ・ともふさ
名古屋市出身。著書に「バカにつ
ける薬」「現代人の論語」。マ
ンガ評論も手掛ける。

*朝日新聞・名古屋 2010.9.22

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4 コメント

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Unknown (電灯)
2010-09-22 16:46:28
呉智英も名古屋近辺にすんでたとおもったが、市民なのかな?

内容は、呉智英にしては、だれでも言えるようなことで、平凡。期待しつつ読んでるのに、もっと鋭いことを言ってくれなきゃ。

なお、河村は、「税を減らすが、サービスは削らない」と言っている。名古屋は知らないが、自分の知ってる市議会やら市職員やらみてると、そういうこともできるだろうな、とおもう。
返信する
Unknown (電灯)
2010-09-22 17:27:53
ところで、呉智英は、評論家デビューのころから、「民主主義を疑う」という姿勢で一貫している。

別に呉智英がオリジナルではなく、プラトンのころからひろく知られている考えかただ。

しかし、

>>大衆とは、民主主義とは、そんなものなのだ

は、呉智英が言ってこそ、「ああ、いつもの」、とスルッとのみこめる。
このセリフが似合う人は、あまりいない。
たいていは、民主主義批判をご都合主義的に利用はするが、民主主義を根本からは批判しないからだ。

民主主義=法治主義として、法律(そんなものだ、という民主主義下でつくられたものだ)を守らない阿久根市長を、反民主主義として非難した東本某氏も、そういう人のひとりだ。

「東国原知事、東京都知事選出馬に意欲」という記事を読んで
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/4fee26201c6bae02182be222752a24a2
という記事によると、ポピュリスト政治家を批判したのち、
唐突に、

【彼らポピュリスト政治家が本質のところで一様に大衆を蔑視し、大衆を愚民視する非民
主主義的な独善政治の実行者であるという点も見逃すことができない共通点です】

と論証なしに付け加え、自分は大衆にとって本当にいいこと、本当の民主主義を知っている、という口ぶりだ。知っているからには、大衆を指導したくもなるんだろう。

大衆は、ポピュリスト政治家によって誤誘導されがちだが、民主主義が何かを知っている自分が(自分の仲間が)指導すれば、正しく誘導できる、という考え方だ。
ある場合は反民主主義として非難し、ある場合は民主主義として賞賛する。その基準を自分は知っている、という考え方だ。

しかし、呉智英の考え方を良く知っている読者は、この新聞記事からはわかりにくいが、そういう「指導者」もまた、呉智英によって徹底的に批判されていることを知っているだろう。

>>それを招いた責任はむしろ、矛先を向けられた「エリート」の側にある。
>>家業化した市議会議員や硬直化したお役所が、政治への信頼を失わせた結果なのだから

と呉智英が書くとき、東本某氏(のお仲間)も、当然、その「エリート」の側にはいっているのだ。

もともとの朝日新聞やら、ここのブログ主さんが、どういうつもりで呉智英のこの文章を掲載したり転載したりしたか知らないが、呉智英のこの文章は、東本某氏(のお仲間)にとって、まったく援軍になるような文章ではない。
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毎度毎度・・・ (薔薇、または陽だまりの猫)
2010-09-22 18:26:25
電灯様
御心配?をおかけして 申し訳ない
呉智英氏は名古屋在住で、知り合いでもあり
その「真意」も承知したうえで「転載」したのですよ
説明するほどの ことでもありませんでしたが、
今後とも よろしく。
返信する
Unknown (電灯)
2010-09-22 19:10:33
そうでしたか。

ますますこのブログのファンになりました。
情報量が多すぎて全部はとても読めませんが、真剣に読んで、参考にさせていただいております。
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