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トトロの住む家

2010年08月30日 | 社会のニュースを考える
今、日本で生まれ育った20代前半以下くらいの人たちの中で、アニメ映画「となりのトトロ」を見たことない人、あるいはトトロのキャラクターを知らない、という人は、おそらく、いないんじゃないだろうか。
それくらい、宮崎駿さんは、この20年間くらいの間に若き日本人の子ども時代に影響を与え続けていると思う。もちろんその上の世代、大人の世代にも。

私が子どもの頃、日本は高度経済成長期で、社会科の授業は常に「開発」「進歩」「発展」という言葉が並んだ。
いわく、日本の発展、地域の発展、工業の発展、産業の発展・・・それらは、すべて肯定的な意味合いで教えられ、その陰で失われていく自然や昔ながらの町並みは、勘定に入れられなかった。
そういう時代だった。

大人になって仕事をして結婚して、ふと気がつけば、山も森も川も海も、すべてはお金に換算され、「バブル」という狂ったような時代を迎えた。
リゾート開発の名のもとに、さらに残された自然も、ゴルフ場、スキー場、リゾートマンション、リゾートホテル、そしてそれらをつなぐ道路と、すべてはお金が優先されお金に換えられて、自然は傷だらけになっていった。
すみかを奪われたツキノワグマが人里に現れたというだけで、撃たれて殺される様子を見ていた私は、「変だよ、変だよ」といいながら、悲しくて泣いた。

「となりのトトロ」を初めて見たのは、そんなときだったのだ。
人間が大きな木に守られていることを知っていたあの頃。人が人を思いあっていたあのころ。
映画を見ながら、大人たちは思いだし、子どもたちは純粋に楽しんだ。

今の若い人たちは、社会の授業で「進歩と発展」ばかり学ばない。
公害や自然破壊、ひいては地球全体の環境問題・貧富の格差問題など、進歩と発展の末に生まれてきた負の遺産も学んでいる。ゴミの分別を当然のようにする。何より、「となりのトトロ」を見て育ってきた。
価値観が、ずいぶん変わってきていると思う。
勝手に名付けるなら、「トトロ以後」世代ともいえるのではないか。
いつの時代も若者を批判する大人はいるけれど、全体として、私は今の若い人のほうが、「進歩と発展」の時代の大人たちよりも、人間としてずっとまともに思えてくるのである。

・・・と、前置きが長くなりすぎてしまったけれど。

トップの写真の「トトロの住む家」という本は、1991年に出版された。
東京にある、緑に囲まれたレトロな洋風木造の家を、宮崎さんが個人的に見つけて訪ねてゆき、一軒一軒レポートされたもの。
その中で紹介された、1件目の杉並のK邸(昨年2月に不審火で焼失)を、杉並区が公園にして復活させたというニュース。


焼失「トトロの家」、面影残し公園に 東京・杉並2010年7月24日17時0分(asahi.com)

   
   焼失前の住宅=東京都杉並区提供

 宮崎駿監督(69)の人気アニメ映画「となりのトトロ」にちなみ「トトロの住む家」と親しまれながら、昨年2月に焼失した東京都杉並区の住宅の跡地が、宮崎監督のデザインをもとに公園に生まれ変わった。焼け残った瓦を新しい建物に使うなど、かつての面影を残す。25日開園する。

 旧住宅は1924年に建てられた洋風の木造家屋。宮崎監督が“森の主”トトロが喜んで住みそうな家を紹介した自著で、この住宅を「たからもの」と表現。全国から宮崎作品のファンらが訪れるようになり、保存を求める約6300人分の署名も集まった。

 杉並区が建物を残して公園にする計画を進めていたが、不審火による火災で焼失した。これを知った宮崎監督が新たな公園の構想図とスケッチを描き、区はデザイン通りに整備した。黒く焼け焦げた木々は伐採せず、旧住宅の土台も保存。新築のトイレの屋根の一部には焼け残った赤瓦を使った。

  
   赤い瓦に白い窓枠。旧住宅の面影を残す新築のトイレ
  =東京都杉並区、富田写す

 宮崎監督は「感想は地域の皆さんや杉並区に聞いてください」。旧住宅で40年近く暮らした元デザイン学校教員の近藤英(えい)さん(85)は「夢のよう。これからは、私たち住民が公園を守っていくことが宮崎さんへのお礼にもなる」と話している。(富田祥広)


★関連サイト
 Aさんの庭(えいさんのにわ)・杉並区ホームページより


古いものは壊すっていうのが「トトロ以前」なら、古いものを生かして再生するという「トトロ以後」。この意識の変化は、私は素直にうれしいし、宮崎さんの功績は大きいと思う。

今年の猛暑で、熱中症で病院に搬送された方は、5月31日から8月22日までの間に、4万1千人を超えたという。
この20年の間に、夏の暑さは、暴力的な暑さへと変貌した。特に蓄熱するコンクリートの建物やアスファルトの道路は、夜になっても気温が下がらないヒートアイランド現象を引き起こす。これは、土木産業の進歩と発展を是とした方向が導き出した、ワンパターンの街づくりの結果だったのではないか、と思わずにいられない。

もう、20年近くも前に、宮崎さんは、この本ですでにこんな提案をされている。

●袋小路の私道をみんなの庭にしてしまう




●発想の大転換を!



※大きくしない常緑樹 道にはみ出して植える
※左右ともブロック塀は壊す
※日照が少なくても平気な低木を植える
※路地そのものが庭と考え、生垣は作らない
※少しくらいの草は抜かない
※側溝を中央一本にし、左右その分に草花、植木を好きに植える


これくらい緑があれば、小トトロくらいなら住んでくれそうね(笑)

  



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2 コメント

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Unknown (endunham)
2010-09-14 22:43:55
こんにちは。
この本、買うまで行かなかったけど、十数年前に本屋さんで立ち読みした覚えがあります。

彼が提案してる内容は、私が住み町が何気に実行してるなと思いました。まあ、アメリカなので、日本より広大な土地という点で全く状況は違いますが、やはり樹木があるないでは、夏の体感温度は違いますね。
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endunhamさんへ (金木犀)
2010-09-15 11:11:41
わ。お久しぶりです、endunhamさん。

この本、当時、この出版社の本専用の図書券?のようなものを持っていたので、それで買った記憶が・・
しかし、アマゾン見たら、中古品がすごく値が上がっているので、逆にびっくりしてしまいました。

endunhamさんの街は、住み心地がよさそうですね。
うらやましいなあ・・・
そうそう、「世界ふれあい街歩き」っていう好きなテレビ番組があるんですが、
散歩道として、がぜん素敵なのは、やっぱり欧米の街です。
街と緑との秩序ある共存は、絶対必要な鍵ですね。
返信する

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