自分の慣れた見方（不正確であっても）を放棄することは、わずかな人たちだけしか望みません。
変化することや成長することへの抵抗が私たちには、大いにあるといえます。
結果として、意識のより低いレベルに私たちを閉じ込めてしまう「信念」であっても、それを捨てるくらいなら、死ぬ方がましだとほとんどの人が思っているようです。
「パワーかフォースか」p.312
「○○をやめるくらいなら、死んだ方がまし！」
家庭がのっぴきならないことになり、優先順位を考えた時、その人が夢中になっていた大好きな何かをいったん止めなければならない、ということがあったとして。しかし、その人はどうしてもやめたくない。その人の気持ちは痛いほどわかるけれど、家族全体がよりよい状態になるための優先順位を考えたら、誰が見たって、今はそれはやめといた方がいいという結論になる。
だけどその人は、怒って「○○をやめるくらいなら、死んだ方がまし！」と、捨て台詞を残して去ってしまいました。
私は、その人の思いがけず激しい言葉に、その時軽くショックを覚えましたが、「パワーかフォースか」のこのページに書かれている部分を読んで、ああそういうことだったのかと、えらく納得できたのです。
思わず「死んだ方がまし！」と叫んだその人にとっては、たとえ他人が見たら、なぜそんなことにこだわるのか理解できない場合でも、今の状況を変えることは非常に大きな苦痛を伴うのでしょう。
自分が大切にしたもの（他人から見たら絶対間違っているとしても）を放棄すること、そこには本当の勇気がいるのです。だってそれは（他人から見れば間違っていたとしても）自分の核心ともいえる大切なもの・・だと信じているものなのだから。
渡辺謙さんのダボス会議でのスピーチは、心打たれました。
特に、ひとつ前の記事でクローズアップしたけれど
「『原子力』という、人間が最後までコントロールできない物質に頼って生きて行く恐怖を味わった今、再生エネルギーに大きく舵を取らなければ、子供たちに 未来を手渡すことはかなわない」
とスピーチしてくださった部分と、最後の方で以下のように述べている部分。
私たちはもっとシンプルでつつましい、新しい「幸福」というものを創造する力があると信じています。
がれきの荒野を見た私たちだからこそ、今までと違う「新しい日本」を作りたいと切に願っているのです。
今あるものを捨て、今までやって来たことを変えるのは大きな痛みと勇気が必要です。
しかし、今やらなければ未来は見えて来ません。
心から笑いながら、支え合いながら生きて行く日本を、
皆さまにお見せできるよう努力しようと思っています。
がれきの荒野を見た私たちだからこそ、今までと違う「新しい日本」を作りたいと切に願っているのです。
今あるものを捨て、今までやって来たことを変えるのは大きな痛みと勇気が必要です。
しかし、今やらなければ未来は見えて来ません。
心から笑いながら、支え合いながら生きて行く日本を、
皆さまにお見せできるよう努力しようと思っています。
今までと違う「新しい日本」を作ること、その通りだと思います。
復興を急げというけれど、今までと同じ様な、行き過ぎた競争と疲弊と環境汚染を伴うばかりの右肩上がりを望む復興なら、それはむなしい。
シンプルでつつましく、人々が本当に心から素直に笑いあえ、支え合える国になるためには、新しい日本に変わらなければならない。今あるものを捨てなければならない。今までやってきたことを変えなければならない。
だからこそ。
謙さんが言われた「大きな痛みと勇気」が必要なのです。
（もちろん、自分は楽しながら、弱者に犠牲を強いて、「改革には痛みを伴う」などと言っていたどこかの政治家とは全然違う次元の話ですよ。）
渡辺謙さんが死につながる病で、すべてを失うかもしれないと意識したそこで見つけたもの。
「なぜ生まれてきたのか、なぜ生きているのか、どうやって生きたいのか」
生と死のぎりぎりのところから復活した人でなければ、わからない境地ってあるのではないだろうかって思うのです。（それは、本人にしかわからないことでしょうが）
他人はどうなろうと、自分だけは同じ状態を維持したいと思えば、変えることは難しいでしょう。「変えるくらいなら死んだ方がまし」と思う人もいるかもしれません。
自分の今までのキャリアも捨てなければならないかもしれない。すべてを失うかもしれない。
変えるためには、自己犠牲の精神が伴うのです。そういう意味の自分に対しての「大きな痛みを覚悟し、立ち向かう勇気」をもつことです。
でもそれを覚悟した時、人の意識は、すべての命により強いエネルギーを与えてくれる一つ高いフィールドに上がれるはずだと、私は感じます。
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