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Rossetti, DG, "Nuptial Sleep", The House of Life (1870) 5

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
「初夜の眠り」
『命の宮』(1870) 5

長いキスを終え、ふたりは離れた。甘い痛みを感じつつ。
嵐が去って空が澄みわたるなか、屋根の水はゆっくり
雫(しずく)になって、そして急に落ちる--そのように、
離れ離れになったふたりの心臓の鼓動は静まり、遅くなっていった。
ふたりの胸も離れた。結婚していっしょに
咲いていた花が、ひとつの茎から引き裂かれて
バラバラになるかのような思いだった。まだ赤く燃えていた
ふたりの唇は、離れても、まだキスをつづけていた。

眠りがふたりを夢の波よりも深いところに沈めた。
夢が見守るなか、ふたりは沈み、流れて消えた。
やがて、ゆっくりふたりの魂は泳いで浮かびあがってくる。
水のなかの光、力なく溺れた旗のような、淡い日の光のなかを。
新しい森、新しい川を見たかのような不思議な気分で
彼は目覚めた。そしてもっと不思議な気がした。隣に彼女が寝ていたから。

* * *
Dante Gabriel Rossetti
"Nuptial Sleep"
The House of Life (1870) 5

At length their long kiss severed, with sweet smart:
And as the last slow sudden drops are shed
From sparkling eaves when all the storm has fled,
So singly flagged the pulses of each heart.
Their bosoms sundered, with the opening start
Of married flowers to either side outspread
From the knit stem; yet still their mouths, burnt red,
Fawned on each other where they lay apart.

Sleep sank them lower than the tide of dreams,
And their dreams watched them sink, and slid away.
Slowly their souls swam up again, through gleams
Of watered light and dull drowned waifs of day;
Till from some wonder of new woods and streams
He woke, and wondered more: for there she lay.

http://www.rossettiarchive.org/docs/1-1870.1stedn.rad.html#p193

* * *
詩集「命の宮」のなかで、もっとも幸せな場面を描いている作品。
ポイントは、脈、離れるからだ、眠り、それぞれのたとえかたと、
結ばれたあとの新しい、不思議な感覚の表現。

同時に、「肉欲派」との批判を招くなど、ロセッティにダメージを
与えた作品。

ロセッティ曰く、「夫婦のあいだであれば性的描写も問題ない」。

批判者曰く、「夫婦であっても、わざわざ道の真ん中にベッドを
もっていかなくていい」= 合法的な関係であれ、性的なことを
描いて人に読ませる必要はない。

思うに、不正確なものや有害と思われるものが多少なり
広まっているなか、およそ正確で穏便な描写も若干は必要なはず。
性的なことについて、良識的な人はふつう口を開かないもの
ではあるが。(社会・政治に関する、特にウェブ上の諸議論と
同じ構造。)

* * *
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