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 米国を再び偉大にする――。トランプ新大統領が率いる政権の陣容が固まった。政治経験のない「異端児」が選んだメンバーは、トランプ氏に近い大富豪や軍人に加え、家族も名を連ねるという異例の顔ぶれとなった。

 新政権の閣僚の特徴について「3G」という言葉が使われる。大富豪(Gazillionaire)、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、将軍(General)というキーワードの頭文字から名付けられた。

 まずは大富豪ぞろいであることだ。米メディアのまとめでは、最も金持ちなのは教育長官に就くベッツィ・デボス氏。義父が直販大手アムウェイ創業者で総資産は51億ドル(約5850億円)にのぼる。商務長官のウィルバー・ロス氏はウォール街の「再建王」との異名をとり、総資産は25億ドルになる。

 トランプ氏が選挙中に批判したウォール街の人材も積極的に起用された。中でも米金融大手ゴールドマン・サックス(GS)の出身者が多く、財務長官に指名されたスティーブン・ムニューチン氏もその一人。トランプ氏の懐刀となる大統領上級顧問兼首席戦略官のスティーブン・バノン氏もGSに勤務していた。

 ログイン前の続きそして、軍人の登用も目立つ。国防長官には「狂犬」との異名をとるジェームズ・マティス元中央軍司令官が就く。国土安全保障長官になるジョン・ケリー氏も元海兵隊大将だ。米メディアによると、将軍経験者をこれほど重用するのは、約150年前、南北戦争後に発足したグラント政権以来との指摘もある。

 「3G」以外の閣僚については、「論功行賞」と「反オバマ、強硬派」という分け方が当てはまる。

 ホワイトハウスの要となる大統領首席補佐官に、選挙戦でトランプ陣営を支え、共和党主流派とパイプのあるラインス・プリーバス共和党全国委員長が選ばれた。一方、厚生長官になるトム・プライス下院議員はオバマ政権が導入した医療保険制度改革(オバマケア)に反対する急先鋒(きゅうせんぽう)だ。

 また、事業をともに運営してきた家族の存在も大きい。トランプ氏から寵愛(ちょうあい)を受ける長女イバンカ氏の夫ジャレッド・クシュナー氏が大統領上級顧問としてホワイトハウス入りした。敬虔(けいけん)なユダヤ教徒で、中東政策に影響を及ぼす可能性が指摘されている。

 台湾出身のエレーン・チャオ氏やインド系のニッキー・ヘイリー氏が入閣した一方で、ヒスパニック系閣僚は選ばれなかった。白人が多数を占め、オバマ政権が進めた多様性は後退したといえる。(