2011年9月9日(金) 切り餅礼賛
密封された切り餅が世に出て久しく、日頃、御世話になっているところだが、一昨日のニュースで、切り餅製造メーカ間での特許紛争に対し、知財高裁(知的財産高等裁判所)の中間判決が出た、と、報じられた。概略は以下である。
業界2位の越後製菓(以下E社 長岡市)が、ふっくらとした焼きあがりになるようにと、自社の切り餅の四方の側面に、浅い「切り込み」を入れたものを売り出し、特許も取得したようだ。
少し遅れて、業界トップの佐藤食品工業(以下S社 新潟市)が、切り餅の側面だけでなく、上下面にも十字の「切り込み」を入れた切り餅を、売り出したようだ。上下面の十字は、簡単に四つに分けられる、との謳い文句になっている。
これに対して、先行したE社が、S社を相手に、特許権侵害だ と、東京地裁に訴えたが、この一審の判決では、侵害には当たらない、とされた。 これを不服としたE社が、二審に控訴し、今回、東京高裁の中にある知財高裁の中間判決で、特許権を侵害している、との逆転判断となったようだ。損害賠償請求額が、15億円と言うが、最終的な判決は、今後、下されることとなろう。
知的財産権の裁判の仕組みについては、把握していないが、S社は、社のメンツにかけて、今回の判決に、納得する筈も無く、裁判は、消費者そっちのけで、最後まで争われる事となろう。
たまたま、我が家に、E社の切り餅の在庫があったので、問題の「切り込み」を探したら、それらしいものがある。切り込みと言うより、二枚の餅を貼り合わせたようにも見える。袋には、切り込み(ふっくらカットと呼称)の説明図が付いている。
E社の 切り込み E社袋にある 説明図
他に生協の、普通の切り餅もあったので、双方を、オーブントースターで焼いてみた。生協の方は、プッくりと膨れたが、E社の方は、大きくは膨らまず、形が崩れないような感じであった。でも、消費者から見れば、取り立てて言う程の、アドバンテージではない、様に思えたのだがーー。
業界2位の企業が必死になって考えた工夫を、業界トップの企業が真似した、と言うところが、一般的な感覚から見て、けしからん、と言った捉え方になるのだろうか。
下の写真は、問題のS社の 切り込みである(ネットより借用)
餅は、日本の伝統的な食文化の一つである。自分が育った田舎では、もち米を蒸かし、臼で餅を搗いて、搗きたての餅を食べたり、のし餅や、かき餅などにして、暫く保存するのが普通だったが、道具の臼は、次第に、もち搗き機になった。 両親が元気な間は、よく、のし餅を送って寄こしたものだ。 沢山貰うので保存に困ったが、カビを抑えるために水に入れると、保存期間が少し長くなった。
家庭で、生餅を保存する場合、今は、小口にラップで包み、それを大きめのビニル袋に入れ、空気を抜いて冷蔵庫で保存すると、大分もつようだ。
この所は、食習慣の変化や、保存の難しさ、餅搗き用具の面倒、などから、餅の食文化は、次第に、衰退していく状況だったと言える。それが、切り餅の登場により、餅が、再び身近な食材として蘇り、餅の食文化が継続できているようだ。この面での、切り餅の功績には、大きなものがあろう。
そのキーとなったものの一つが、カビ対策だろう。生餅は、あっという間にカビが生えて仕舞うのが、最大の悩みだが、市販の切り餅は、カビの悩みから、解放してくれた、と言えよう。 今や切り餅は、何処のスーパーでも、手軽に買えるし、家庭でも、常温で結構な期間、保存できるからだ。
全体が気密性の袋に入っているのは当然だが、出来れば、切り餅一つ一つが密封で包んであるのが望ましく(個別包装)、更には、個別包装の中に、カビを抑える脱酸素剤が入っているなら、理想的だ。 この場合だと、表示では、賞味期限は、1年以上にもなる。正月用の供え餅も、密封により、保存期間が長くなっている。
この脱酸素剤、最近は、色んな食品の包装に使われている。 袋の中にある、固い四角い包装(エージレス “たべられません”という表示がある)で、よく見かける、アレだ。
原理的には、厄介ものである鉄さびの、酸化反応を逆手にとって、酸素を吸収するようにしたもののようで、住友ガス化学が、最初に開発したという。
これの御蔭で、人体に有害とされる、防腐剤、保存料が大幅に使われなくなったのは、大変な進歩であろう。
我が家には縁の深い仙台の、名菓「萩の月」は、日持ちが短いのが悩みだったのだが、菓子を、この脱酸素剤と一緒に個別包装することで、問題を解決した、という嬉しい話がある。
長期間保存が利く切り餅を、編み出してくれた業界に、消費者の一人として敬意を表したいが、それに比べれば、今回の特許騒動は、余りに、小さな事に思えて仕方が無い。
当ブログの下記記事
イザと言う時の備え餅! 2010/3/6
でも触れているが、一般家庭でも、手軽な方法で、切り餅を使い、搗きたての餅のように、何時でも美味しく食べられるのは、嬉しい限りである。