「とんちゃん」最後の日

2009-12-29 16:46:19 | 居酒屋・バー・割烹・蕎麦

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「とんちゃん」55年の歴史に幕 (2009年12月10日高知新聞夕刊記事)
「とんちゃん」の愛称で親しまれてきた高知市帯屋町1丁目の居酒屋
「成吉思汗(ジンギスカン)」が、今月29日で55年の歴史に幕を下ろす。
店を営む吉本光徳さん(74)、一恵さん(68)が「体力的にきつくなった」のが理由。
土佐の大衆が愛した老舗中の老舗だけに、閉店を認めたがらない客も多い。
「閉店は寂しすぎる。また来年来る」と次回分の勘定を置いて帰ろうとする客もいる。
----------------------------------------------引用ここまで
最後の一行が泣かせる。


↓26日(土)21:54の外観



28日(月)17:32 ABCビル方向に行列はピーク時で、30人程度だった。

多分、開店以来初めての行列と思われるが、皆、整然と寒さに耐えている。
お母さんが、一人の方、二人の方、三人の方と招き入れてくれる。
此処でもお一人様の特権は有効であったし、数が合わなければ後先で譲り
合いが自然発生的に行われていた、本当に皆さん、飲み方が大人です。

18:37 二階東カウンターへ3人席確保
その時点で残っていたメニューはこれだけ↓


銀ナベ               ジンギスカン



ポテトサラダ                南極



ととろ                 どろがゆ

銀ナベの独特な香辛料は八角だろうか、胡椒の効いたポテサラは水分の
抜けが絶妙。溶け始めた南極の食感にエスキモーの食生活を想像する。
ととろの焼き加減、塩梅も申し分なく美味。
そして今日一番だったのはやはり吉本のお父さんの愛情こもった「どろがゆ」
出来たての暖かさが、この季節にマッチしているんですね。





そこには一つの「共通した思い」が見えた。もうこの料理も、澗筒で温めた酒もこの
場所で二度と楽しむことが出来なくなることが、切なく、やりきれない思いと共に
「なんでやねん」という気持ちを押さえがたいのだが、現実としてこのように皆が集う
ことが頻繁で無くなった、この心地良い酒場の空気を求める必要性が薄らいでしまったと。

知らぬ間に食のレベルが上がってしまい、食物、即ち料理の質が変化している。
20年、30年前に安くて美味かったものが確かに此処にあり、酒や煙草を嗜む文化
が営々と続くかに見えた。だが、このご時世、敢えてこの店に集い、筋の濃い大人
達と隣り合わせて呑むスタイルが広く好まれるとは限らない。
要するにこの店を支えていた「オヤジパワー」の喪失が第一の要因であるのだが
それ故、自責の念が強いのであろう。

Kが「私、煙草を吸う」とセブンスターの箱を何個も出したなり、一向に吸う気配が無い
聞けば「ライターを忘れた」と言う。一昔前なら隣の客に拝借すれば良かったのだが
あいにく、私も弥二朗も「それ」を持ち合わせ無くなって久しい。
最近、煙草を嗜む女性を良く見かけるのだが、この店にも女性客が増えていたという。
気軽に「酒も煙草も嗜める店」が少なくなってきている故だったのかも知れない。

ともかくも土佐の酒文化が今日をもって、また一つ消滅した。
かくして「オヤジ&オヤジギャルの放浪」は続くのである。




吉本のお父さん、お母さん本当にお疲れ様でした。
そして、おばちゃん達に「ありがとう」
(本当に涙が止まりません)

--shop data--
店名:居酒屋「成吉思汗」とんちゃん
所在:高知市帯屋町1丁目3-8(Yahoo!地図)
電話:088-823-7773(1階)
電話:088-823-6204(2階)
営業:17:00~23:00
定休:日曜(祭日は営業)



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14 コメント

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残念・・・ (ドリーム)
2009-12-29 18:46:47
友人と行く予定でしたが、どうしても行くこと
が叶わず後悔しております。
最後に、改めて舌と心にメモリーしかった・・・。
またひとつオヤジの好きな酒場が消滅。

おっしゃるとおり、時代の流れなのでしょう。
抗えることはできないんですな

Unknown (monkey)
2009-12-29 18:50:41
 名残惜しい気持ちいっぱいで、先週、並んで味わってきました。あいにく病院から抜け出してきたので、料理だけ。飲めなかったのが残念でした。感謝の気持ちを伝えたかったけれど、逆におばちゃんから温かい声をかけてもらいました。
さよならは悲しい言葉 (ハンバーガーストリート)
2009-12-29 22:56:43
年季の入った壁の絵、甕……と視線を落としてゆくと、ん?スケボーですか?

1階と2階で電話番号が違う、「ととろ」「南極」「どろがゆ」「銀ナベ」など名前を聞いただけではどんな料理か想像できない――なんてすばらしいお店でしょう!

でも階段は、写真見ただけで段を踏む音が容易に想像できますね。

店内の音まで伝わるすばらしい写真とレポート、どうもありがとうございました。
ドリームさん (タカシ。)
2009-12-30 09:58:27
ここで一度は一緒に呑みたかったですね。
客側ではどうしようもない三代目問題が一番の理由でしょう、小さな店なら
客から手を挙げて引き継がれるケースもありますが、規模が大きすぎますし
その特異性は到底、真似できるものではないですよね、高知に有ってこその
お店でした。
monkeyさん (タカシ。)
2009-12-30 10:15:15
ブログを読んで気になっていました>入退院
そうですよね、あの「おばちゃん達」の客心理の読み方は下手な占い師以上のものが
あります、長年、カウンターの内側から男性客の表情を見ていると、まず間違い無く
今、この客はどういう心理状態なのか、即座に判断しながら対応をしていた所以だと
思います。マニュアル対応では、到底収まりの付かない商売がそこに有りました。
それこそが、一人客の心を掴んで離さない魅力の原点だったと言えましょう

ハンバーガーストリートさん (タカシ。)
2009-12-30 10:37:18
そうです、このスケボー、ひとつからでも色々な情景が浮かびますよね。
初めての客は先ず、メニューの意味が解りませんから中のおばちゃん達に聞
きますよね「○○○って何ですか?」そうすると「豚の○○です」とか受け
答えが始まるじゃあないですか、そこからコノ店で呑むことが始まります。
先ず、そういう、会話ありきのお店ですね、それも押しつけがましく無く。

そして容態(やちも無い話)の多い、土佐の呑兵衛達を優しく包容してくれる
数少ない居酒屋でした、来高の折りには是非と思っていた、お店のリストから
消さなければ成らなくなりましたのが、残念。
記事を書いていて涙が零れたのは、初めてです。

行ってみたかった・・・ (はぴなす)
2009-12-30 13:45:53
昔からあるから、これからもあり続けることはないんですね(T-T)
老舗のお店、いつか行ってみたかったんですけど、なくなっちゃった。

閉店が決まってからだったと思いますが、アタシの好きな番組『吉田類の居酒屋放浪記http://sakaba.box.co.jp/』に紹介されてたときがあって、なんだかうれしくも寂しかったです。
Unknown (福ちゃん)
2009-12-30 17:05:47
行ってみたい。。。と思いながら
結局、行けずじまいで残念でした。
心の中に残る素敵な場所だったのですね。
寂しい事ですが、お店の方々にもお礼を
お伝えしたいです。
長い間、お疲れ様でした。

タカシさん。
今年は、色々とお世話になりましてありがとう
ございました。
来年も、どうぞ宜しくお願いします。
良いお年でありますように☆
はぴなすさん (タカシ。)
2009-12-30 21:39:28
お久しぶりです。「そんな店が有ってねえ」という話を聞くだけで無く、実際
自分が何度か行けたし、自分なりの思い出が作れたことは良かったと思います。
県外のファンも多かっただけに、吉田類さんが書かれていた「もう3ヶ月早く
知っていたら、再訪出来たのに」という言葉が心に残ります。
福ちゃん (タカシ。)
2009-12-30 21:51:23
もう少し早く、お友達に成っていたらきっとこの店で呑めたと思います。
まあ、それも致し方ないですが。大阪のあの方は呑めたんかなあ……

年賀状作成中につき、最終記事が未だ書けていません(汗)
ありがとうございます、此方こそ来年も変わらず宜しくお願い致します。

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