楽居庵

私の備忘録

第七回四君子会 Nさま宅

2013-07-06 10:02:14 | 茶事

先日、虹のような料紙に正午の茶事のご招待状が、さても七夕のヒントを頂いての席入りとなった。

待合には短冊に白楽天の「竹竿頭上願糸多」、七夕の宵に竹竿の頭上に芸の上達を願う五色の糸…、下には短冊が数枚? 後で願いごとを書くのかしらとUさんとささやきあう。

 

「お暑いでしょうからペリエでも」と涼しげな切子で喉をうるほし、翠したたる露地をすすむ。床には「清流無間断」(南禅寺管長筆)、汗が少しずつ引いていく。点前座には道安風炉に瓢箪釜がすっきりと。

 

主との挨拶の後、早速点心、折敷に白木のうちわに色とりどりのお馳走、瓜、南瓜、茄子が手向けられ五穀米、ローストビーフ、万願寺唐辛子、胡瓜とどれもNさんの心づくし、そしてグラスにじゅんさいと雲丹にワサビ添え、誠に美味しく一献のご酒の底がつくばかりに。

  

そうこうしているうちに、主は椀物を持ち出される。主の椀物はいつも楽しみ、二色の糸ならぬ素麺に含ませの椎茸、海老、玉子を玉章にして、カボスをあしらうというダシ味も勿論きいて。箸洗いは茗荷と生姜で。

 

八寸でようやく主が座に落ち着いてくださる。海の鮎でなほ一献、山の枝豆で更に一献、(家人が聞いたらもう止めなさい!かな)、主はこれから初炭が控えているものの千鳥にて私たちにサービスして下さる。

膳が下げられ、木地に水ようかんが削りたての青々とした黒文字を添えて、御製は和久傳。透けて見えるのは蛍、蛍のあかりはほうじ茶のゼリーだそうです。私の味覚は当てにならないことがまた分かって…、初めて頂きました。

 

主は初炭をして中立ち、後入りをして、茶碗運び出し、所作の間に湯が沸くように!という願いを話された。炭のぱちぱちという音が届く、初入り前の種炭にさぞ気を使われたでしょうと、主の修練の如何ばかりかをおもう。風炉の茶事はそれだからむずかしい!

 練られた茶はまったりとして美味しかった。一保堂詰「北野の昔」、道年作の黒茶碗で幕釉が美しく数印が見られる。尾張徳川家お膝元にある八事窯は当代五代目の茶碗でしょうか。数年前昭和美術館への帰り八事窯のひさごの暖簾をみて寄らなかったことを思い出したりして。

 茶入は利休丸壷の形を少しく小さく写した当代高取八山作、瀟洒で洗練された高取焼の作風が釉薬に現れている小品。

湯の煮えも良く、正客は続いて薄茶を所望される。続き薄茶といえば習い事では次客が先に薄茶を頂くという段取りであるが、本来は正客のお供の次客であるので、茶事では正客が最初に頂くのが本来と思っている。それを弁えて進めさせていただくと、主も当然の如く次に濃茶道具を出し、次に次客の薄茶を点てられる。そして茶杓、棗を清められて滞りなく収束されていく。

 

その間、後座に改められた床に話が弾む。床に花入を置く時は、掛け物も掛けると良いでしょうという。

その掛物がなんと美しいのでしょう!天の河を隔てアルタイル(牽牛星)彦星とべガ(織女星)織姫が描かれ、梶の葉が添えられ、短冊が笹の輪に宇宙を表しているようなこの幡にすっかり魅了されてしまった。もう半年も過ぎいよいよ一日花の木槿が底に紅をたたえ露を含んで爽やか。

        

主のお着物も宇宙の星座をすべて集めたような蒼天の色、素敵でした。

 楽しいひと時を過ごし待合に再び戻ると、「どうぞ」と差し出される短冊に“なにやらムニャムニャ”としるして、今年半年間の無事息災をお願いして辞した。