大阪市立東洋陶磁館に安宅コレクションが収蔵されている。 1977年、安宅産業の経営破綻により安宅コレクションは大阪市立東洋陶磁館に寄贈された。 寄贈される前、京都国立博物館と日本経済新聞社主催による 「安宅コレクション 東洋陶磁展」が京都で開催された。 1978年1月5日から2月19日までの短い期間だった。 茶道を始めてかれこれ10年、中国陶磁、高麗李朝陶磁に関心を持ち出した頃だったので、 何とか都合をつけて京都に駆けつけたのが2月11日、手元の図録にそう記述してある。 昨夜TV「日曜美術館」をみて久しぶりにその図録を広げてみた。 懐かしかった。 このときの安宅英一の眼でコレクションした中国陶磁、高麗李朝陶磁の名品が 今の私の陶磁の原点にあるような気がする。 それから2年、1980年春、茶道具を初めて入手したのが花入であった。 それは、ある道具屋の奥に春蘭を一輪入れた花入で店主は李朝末期ではないかという。 形は日本風に云えば、舟とっくりのように下膨れをしている。 楚々とした瓶の名品にはほど遠いが、春蘭を入れた風情がやわらかく今でもその風姿が眼に浮かぶ。 それ以来、この花入には春蘭と思っているがその機会がないまま… 「季節の花300」より 春蘭 今回、日曜美術館で安宅コレクションを語る林屋晴三氏の話を伺いながら、 安宅英一、園城寺次郎、立原正秋、若狭小浜酒井家伯爵忠道、鴻池家、そして元館長伊藤郁太郎… と流転の名品が収蔵されている大阪市立東洋陶磁館を再び訪れたくなった。 安宅英一の愛した青磁の鑑賞方法は、 “秋の日の障子一枚隔てた光でみるのがふさわしい、おのれの青に染まるから”という。 そのような部屋での青磁を見るには秋を待たねばならない。