後入の花は、白馬より届いた破れ傘、岡虎の尾、蛍袋、おとぎり草の中から破れ傘一輪を鮎篭(瓢阿造)
に入れる。標高800mの花は、里に持ってきても元気であった
主なる道具組を語るうちに、懐石の献立も出来てきたよう
水屋は、ベテランの先生の指導の下、担当の二人が暑い中デパートをあちこち駆けずり回って
新鮮な食材を捜し求めてきた
向付は、鮎の一夜干をさらに一夜干しして、三枚に下ろし焙る
涼しげな吹き墨の皿に盛られて食欲をそそる出来栄え
煮物椀は、蒸しゅうまいを椀種に、意外性があったが美味しい取り合わせでもあった
他に海老、椎茸、隠元を添えて目にも美しい
強肴は、冬瓜に大葉を添えた和え物、ズッキーニとジャガイモの明太子和え
そして香の物を五種、その一つに先日行った行田の蓮見物の土産、地元の瓜の奈良漬も入れて下さった
飯器は、竹細工で有名な静岡・美吉市の蓋付の籠を数年前に求めていたのを見立てで使った
見立て品を茶の中に活かせるのも、探し甲斐があるというもの
茶は、これこれがないと出来ないわという考えから抜け出すのも容易ではないけれど、
抜け出してみると、その方が面白く遊び心が発展しそう
さて、生菓子は? 干菓子は? どれにしようか?
実は菓子に挑戦してみたけれど、案の定今回は我が家の一服の茶の菓子になってしまった
笹屋伊織製の「涼の朝風」銘を色ガラスの小鉢に入れて腰掛でいただくことに
干菓子は、雪の掛軸を受けて岐阜・奈良屋の雪だる満と行田の蓮の実甘納豆を、
今年の干支卯字入りの春慶の木瓜皿に盛り沢山にお出しする
破れ笠と鮎篭
最後に、眼目の濃茶は初炭の勢いがあって湯相も整い、熱い濃茶を差し上げることが出来た
それでということではないが、続いての薄茶は気持ちもホッとしたせいか膝の痛さを
感じてきたりして点前が散漫になってきたのは反省
このような時、いつも感じるのが徒然草の第百九段、「高名(こうみょう)の木登りといひし男(おのこ)」の戒めの段である
朝茶事の反省としたい(長文ですが…)
現代語訳:
木登りの名人と呼ばれている男が、弟子を高い木に登らせて小枝を切り落としていた。
弟子が危ない場所にいる時には何も言わず、軒先まで降りてきた時に、
「怪我をしないように気をつけて降りて来い」と声をかけた。
「こんな高さなら飛び降りても平気ではないか。なぜ今更そのようなことを言うのか?」と問わば、
「そこが大事です。目眩がするくらい危ない枝に立っていれば、怖くて自分で気をつけるでしょう。
だから何も言う必要はありません。事故は安全な場所で気が緩んだ時こそ起こるのです」と答えた。