1年越しの契約解釈の争い。
訴訟の提起に関するお知らせ
(平成22年7月8日 日本エスコン 8892)
(2) 請求原因の概要(当社の主張概要)
平成20年5月28日付で、当社と平和不動産との間で本売買契約を締結し、平成21年3月31日までに当該信託受益権を平和不動産に引き渡し、平和不動産から本売買契約の売買代金の支払を受ける予定となっていました。当社は、平和不動産の意向に従い本不動産のうち土地を取得し、本売買契約を履行するため平和不動産の意向に従った建物を建築しましたが、その後、平和不動産より、本不動産を現物で購入したいとの申入れがあったため、平成21年2月27日に平和不動産への本不動産の引渡をすべく準備を予定通り行っていました。
しかし、当社が平成21年2月20日付で、平成20年12月期決算短信及び有価証券報告書における継続企業の前提に関する事項について、注記(以下、「本注記」という。)する決議を行った旨発表をいたしましたところ、平和不動産より、本注記が、本売買契約における当社の表明保証事項に抵触しており、取引前提条件を欠くことになるため、本売買契約を履行することが出来ない旨の連絡がありました。
当社といたしましては、本注記は、本売買契約における表明保証事項に抵触する事象には該当しないものと考え、平和不動産に対し、繰り返し本売買契約の履行又は本不動産の現物での購入を求めてまいりました。しかしながら、現在に至っても当該取引の履行がなされず、かつ、平和不動産は当該取引の履行を行う意思をみせておりません。
平和不動産が引渡しを受けないのなら、15ヶ月もグズグズやってないで、とっとと契約解除をして損害賠償請求をしつつ物件は別の人に売ってしまえばよかったと思うのですが、時期を考えると平和不動産が高値掴みしたのでこれを逃がすと簿価割れで赤字も出せないという状態なのかもしれません。
当初の信託受益権による売買というのと、土地を取得して建物を建築する--では、信託に入れたのは何?とかいうあたりがリリースからはよくわかりませんが、ファンド仕立てにしていて、市場下落後の価格で売るとエクイティ全損+融資も一部回収不能になるので同意も得られなかったとかいうような事情があるのかも。
一方で、平和不動産もGC注記が契約違反になるならこれ幸いと契約を解除して、自分のほうから損害賠償請求をするのが本来なら得策です。
リリースからは表明保証条項がどのような内容かは不明ですし、表明保証違反の効果が契約上どのように規定されているかもわからないのでここからは推測なのですが、不動産の証券化で一般的になっているアメリカ流の契約書を日本法に当てはめたときのズレが出てきた結果ではないかと思いました。
「表明保証」というのも今まで日本の契約書にはなかったもので、これの日本法における意味については裁判で争われた例もありますし、それについて法律雑誌にも弁護士が論文を書いたりしています(論文書く前に争いのない契約書作れよ、というつっこみをしたくなったのですが、大きなローファームで標準的な書式になっちゃってるとは変えられないんでしょうか)。
この表明保証というのはさまざまな事項に関して契約時およびクロージング時に真実であることを表明し保証しなさい、というようなことが書いてあったり、また、「クロージングの条件」として「表明保証条項がクロージングの時点に真実であること」とかいう条項があったりします。
本件も平和不動産はこのような条項を理由にクロージングをしない(引渡しを受けない)と主張しているのではないかと思うのですが、クロージングの条件が成就しないときのメカニズムがはっきりしていなかったのではないでしょうか?
契約条項のどんな部分が争いになっていたのかも興味ありますが、両方とも1年間何やっていたのかというのも知りたいところです。