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一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『強欲資本主義 ウォール街の自爆』

2009-01-16 | 乱読日記
著者は1980年代に住友銀行からゴールドマン・サックスに転職し、その後独立して自分の投資銀行を経営している人です。

投資銀行が顧客のために専門知識を使って良質なアドバイスをして報酬をもらう、という昔のスタイルから、顧客の利益でなく自らの報酬を最大化するような「強欲資本主義」のスタイルに変質した時点で今回のバブルとその崩壊の種はまかれていた、ということを「良識あるベテランが」解説するとともに、それに巻き込まれた日本の将来を憂う、という本です。

投資銀行の業務の変化が豊富なエピソードで語られるとともに、今回の金融危機のしくみがわかりやすく解説されていて参考になります。

ただ、著者が最初に就職した住友銀行(当時)の幹部の銀行家としての見識の高さについて触れているくだりが何回かあるのですが著者が転職する1984年以前はそうだったのかもしれませんが、平和相互銀行の合併以後の住友銀行のイメージの方が強い僕としては、この部分は商売上のリップサービスなのか皮肉なのか判断がつきませんでした。

著者は終章でアメリカの「強欲資本主義」に追随した日本の現状も憂いています。
ここの部分は多少雑な感じもあるのですが、不況による経済的なダメージよりは心理的なもの(=日本社会の変質による不況から立ち直る足腰の弱体化)の方が心配という問題意識は共感するものがあります。
さらに、少子高齢化を前提にゼロ成長を受け入れ、身の丈に合った新しい生き方を模索すべき・・・と続きますが、そこのところは問題提起だけで終わっています。


ちょっと気になるのは、警鐘をならすあまり今のウォール街を全否定しているかのような書きぶりは、すぐにやれ「ものづくり」だ「社会貢献」だという過剰な反応を引き起こすように思います。著者はまだウォール街を引き払っていないわけで、そこの存在意義までは否定したわけではなく、付き合う上では注意が必要といいたかったのだと思います。
日本企業が過剰に内向きになったり先祖がえりするのもどうかと個人的には思うのですが。
本書はベストセラーになっていて、また著者が雑誌などにもしばしば寄稿する「有識者」で影響力もありそうなだけにちょっとそこが気がかりです。




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