耐震偽造 「支店長がリベート要求」姉歯建築士が本紙と会見 (産経新聞)
姉歯建築士は、大口取引先の建設会社支店長から「今月は四十万円ほしい」などとリベートを要求され、この建設会社から架空業務を受注した形にして現金を捻出(ねんしゆつ)し、支店長に送金したとも証言。
偽造を始めて以降は、同社からの仕事が全体の九割以上を占めるようになった。このため支店長の意向に従わないと仕事がなくなると思い、偽造やリベート提供を続けたとしている。
建設業は特にそうなのかもしれませんが、どの業界でも、現場や末端の細かい仕事は個人事業主やそれに近い会社が仕事を請け負っていることが多いと思います。
そこでは、
発注者側は「発注の裁量権の範囲で動かせる金はあるがサラリーマン個人として自由になる金は少ない」
受注者側は「発注をもらわなければそもそも仕事にならないが、個人として自由になる金は多い」
という構造になり、そこにキックバックやリベート、無理な受注の強要が生じやすくなります。
独占禁止法などで発注者の優越的地位の濫用は規制されているのですが、発注側の担当者と受注側の利害が一致する場合は現場での規制が働かなくなります。
その結果、無理な発注を処理するために、今回の姉歯建築士のように提供するサービス・商品を粗悪品にするとか、低賃金の外国人不法労働者などににしわ寄せをする、というような現象がおこりがちです。
この部分は企業のコンプライアンスを実効性あるものにするためにどのような方法が有効かは難しい問題です。
昔の銀行は給料が高ければ不正はしないだろう、という考えもあったのでしょうが、高待遇に慣れてしまえばやはり不正は起きたわけですし、そもそも「接待」と「過剰接待・供応」の線引きは難しい部分があります。
流通業の会社などで受付に「弊社社員への中元歳暮付け届けは一切禁止します。発覚した場合は取引停止します」などと掲示してあるのを見ると、現場での線引きがいかに難しいかを実感します。
一連の報道で「だから建設業は・・・」と思いがちですが、他の企業も教訓にすべき部分は大きいと思います。