炭やきは地球を救う

脱サラして10年。炭やき・木こり・木挽きを生業としています。

火の文化を守るとは

2006-02-26 | 環境問題 地球を救う真面目な話

高嶺下の小屋で過ごす夜は、自作の空き缶ランタンの明かりと、炭火の暖かさ、美味いコーヒー(私は酒を飲めないので)、それに小さなラジオから流れるFM番組だけです。

それでも馴れれば充分に明るい。本も読めるくらいの明るさです。食事だって炭火で作ります。スーパーで買った安い肉も、塩胡椒だけの味付けで充分。

囲炉裏の炭火は、本当に心を和ませます。ゆっくりと燃焼する堅木炭は、何とも言えず人を癒します。

何が良いのか、どんな効果があるのか、そんな事を分析するより、実際に炭火にあたってみればいい。

私は火を眺めながら、穏やかな気持ちで何時間でも過ごせます。

その間、いろんな事を考えますが、全てを前向きに考えられる。「これでいい」と、自信を持って言える。

普段よりも3時間早く睡魔がやってきます。静かな山の中で眠りにつき、朝日で気分良く目覚める。

そんな火の文化を味わいながら過ごす山小屋での時間は、懐古主義ではなく、むしろ新しいスタイルにさえ思えます。

薪や炭を使ったスローライフという生活が、もっと浸透すればいいのに。電気や化石燃料から得たエネルギーを、ふんだんに使った生活から、いつかは抜け出さなくてはいけないのです。そうしないと本当に地球がダメになる。

そんな事を掲げながら都会で活動している人たちもいます。

残念な事に、NET上で飛び交う意見や、街の中で行われる会議では大袈裟で上っ面な言葉が目に付く事があります。理想ばかりで地に足が付いていない事が多い。自分の言葉に酔って、発言する事で完結してしまっている人がいる。もちろん、それぞれの人たちは真面目に取り組んでいるし、間違ってはいない。

でも、現場では何も変化が無いのが現実です。山で仕事をする人たちは、そんな事の繰り返しで冷めてしまっているのです。結局、あの人たちは何しに来たんだ?って事になるのです。問題提起はしても、解決策が出ない。現場の人たちは、とっくにわかっているそんな問題に対して、解決しようと真っ向から挑んでいる。動きながら考えている。

小綺麗な服装、組織の経費で、たまに山に現れるそんな人たちには、少しだけ違和感を感じます。そんな人たちはやたらに愛想良く、しかし手を汚す事をしません。納得させられる意見を出す人はみな、実際に山で汗を流している人たちです。言葉巧みなおりこうさんでなく、自腹で山へやってくる小汚い格好の森林ボランティアの人たちです。口よりも先に体が動いてしまう、肉体を伴った輝く魂の持ち主たちです。小手先の美しさよりも一粒の汗の方を良しとする人たちです。街の人が慌ただしく帰った後、黙って仕事を再開している人たちです。その時、誰も街の人を攻めたりしません。街の人だって頑張ってるのを知っているからです。

私も、真っ黒に汚れながら、地に足を付けて寡黙に働きたい。魂の命ずるままに行動したい。

言葉ばかりが先行して、現場を後回しにするような事はしたくない。

結局、山を守るには、山で汗を流す以外には方法が無い。

山で汗を流せないのならば、山を守る人を守る以外には方法が無いのです。

それでもいい。自分のできる事をすればいいのだから。

「山を守る人を守る」この言葉をよく検討してもらいたい。

つまり、山で頑張る人と、一緒に頑張るって事です。都会に住む人たちの方が、山に憧れていると聞きます。

だからこそ、山で頑張っている人を熱い気持ちにさせるような応援をしてもらいたい。

山で起こっている問題を、語って理解してもらえるのならば、次に行動して欲しいのです。

もちろん、それぞれの人ができる範囲で・・・・


炭やきは面白い!!

2006-02-25 | 環境問題 地球を救う真面目な話

一週間、山籠もりして炭を焼いてきた。

土曜日に窯出しした後、ほんのり暖かい窯の中に寝袋を持ち込んで一晩眠った。熟睡できた。

高嶺下の山の神に感謝しながら、大地に抱かれて眠るのは気持ちが安らぐ。窯の土は全て高嶺下の山で採った土だから、それこそ、母なる大地に抱かれているのだ。

そして、日曜日。梶さんから教わったやり方を、自分なりに試してみた。今度は全て一人で挑戦。

まず、割ったアベマキを運び、立て込む。私は楽しみながらやっているが、相当キツイ作業だと思う。炭材で2.5立米、上木で0.8立米ある。

軽トラの荷台に満杯で3回運ぶ。炭材の長さは1m。生に近いので、重いものは10kg以上あるはずだ。樫の比重が0.9だから、全て合わせると軽く2トンはある。

それを一本づつ窯の口へそっと並べて置く(乱暴に扱うと窯が壊れるので)。何本か置いてから中腰で中へ入り、一本づつ根を上にして隙間無く丁寧に立てる。それを何十回と繰り返す。

窯の左がよく燃えていたので、左には太い材を集中させる。ちょうど軽トラ一杯分立てたところで上木を入れる。

立込の前に、生に近い枝部分を短く刻んでおき(これが上木)、それを丁寧に炭材と天井の間に詰め込む。これがとても重要な部分。上木の入れ方で炭の品質が決まる。梶さんから特に注意された部分である。

夕方までかかって立て込んで、障壁板を立てて耐火煉瓦で焚き口を造り、すぐに点火。焚き口の大きさを使い切って燃やす。最初は葉っぱが付いた枝を絶え間なく入れて焚き口の温度を上げる。ここではなるべく乾いた燃材が必要になる。焚き口の耐火煉瓦が真っ赤になるくらいまで燃やす。その後は温度を下げないように管理。夜中に何回も薪を補充しなければならない。

この間、煙突を少しだけ絞り、口も大きく開けない。焚き口の炎の熱エネルギーを窯の中に注ぐ行程だ。

絶えず煙の状態をよく見、匂いを嗅ぎ、煙の温度を測る。月曜の朝、上木に着いた(炭化が始まった)のがわかる。

その状態を丸二日キープ、煙温を測りながら、煙突も焚き口の空気穴もギリギリまで絞った。煙突は指二本分、口は3cm×4cm。それだけの吸排気で、約3立米の炭材を炭にする訳である。

水曜日の早朝、変化が表れてきた。煙温が僅かに上昇し始めた。それでもまだまだ。口も煙突も絞ったまま。炭材が燃えたがるのを我慢させる。

木曜日の明け方、煙が変わってきた。ほんの少し蒼みがかってきた。ここからは変化が早い。炭材の下の方まで炭化が進んでいる事を示している。しかし、、まだ口と煙突は絞ってある。

昼くらいには煙が透明になってきた。煙温はようやく230℃くらい。ここで煙突を少し拡げる。といっても、指2本の隙間を指3本に拡げるだけ。こうすると温度上昇が早くなるのが手に取るようにわかる。ここからの行程がいわゆる練らし(精錬)になる。

煙温が10℃上がると、次は口を少し拡げる。次の10℃の上昇で煙突を少し拡げる。

これを繰り返し、煙温が280℃を越える頃に、煙突は全開、口は煉瓦半丁分になるようにする。

煙は透明で勢い良く、窯全体が熱気を放つ。天井部分は陽炎でゆらゆらとしている。堅木炭独特のいい匂いがしてくる。

このタイミングで焚き口を閉じ、下から根風を入れると煙が白く変化する。これは、燃え残った根の部分が燃焼している印だ。

この行程をどれくらいするか、これが炭の品質と火持ちの良さを左右する。どれくらい根風を入れるのか、煙の状態を見て判断するしかない。

煙を凝視し、再び透明になってきてから、状態、匂い、温度などに五感を集中させる。

窯の中を想像し、第六感を信じて根風を塞ぐ。すると、窯が放っていた熱気がふと和らぐ。

そのままガス抜きに入る。充分にガス抜きをしたら、煙突を外し、しっかりと閉じる。

焚き口に泥水を柄杓でかけて、どこからもエアを吸わないように注意深く窯全体をチェックする。

ようやく終えた時、時刻は4時半を回っていた。点火してから丸4日。95時間半の行程だった。

高嶺下の山に日が沈むところだった。急いでコーヒーを淹れて、山の稜線に太陽が隠れるのを見届ける。

地球の自転スピードを魂で感じながら、ホッとする。

炭やきがますます面白くなってきた。大地に踏ん張り、夜中に星を数えながら、真剣に窯と対峙して己を磨く仕事である。泥と炭の粉で真っ黒に汚れながら、真冬でも大汗をかき、山の中でずっと一人である。徹底的に自己評価をしながら、自己管理する力を養う。

窯の管理をしながら、空いた時間はひたすらに次の材を割った。太い物は30cm以上ある。これをヨキと楔とカケヤだけで割口の面積が拳の大きさになるまで割る。ヘトヘトになるが、割った材の山を見ると達成感がある。

金曜日も一日中割った。体力は使ったが、気持ちいい。しかし、梶さんが一人で割る量の3分の2しか割れない。

まだまだ自分は志半ばの半端者である。


驚いた

2006-02-18 | 環境問題 地球を救う真面目な話

窯出しした。自分でも驚く程良い炭が出た。

窯がエアーを吸っていたのはわかっていたので、歩留まりが悪いのは覚悟していた。 しかし、炭の品質はとても良かった。梶さんの指導どうりに焼いたからだと思う。窯も良かった。いわゆる粘りのある炭になった。囲炉裏で焚いたら、理想的な燃焼だった。上木も充分に残っており、それが素晴らしい硬度だった。風鈴になるくらいの細い炭だった。

高嶺下の炭クラブメンバーが揃っていた。村瀬さんと羽田さん、二人の女性が、炭で汚れながらも窯出しを手伝ってくれた。何と素晴らしい人たち!!頭が下がる。感謝。

瀧澤さんも炭置き場を改修してくれた。これで炭に雨がかからなくなりました。ありがとうございます。

夕方から、旭町にある鰻屋さんにみんなで行った。そこの鰻は、梶さんが焼いた樫炭を使っている。

ホントに美味しい鰻丼だった。

明日からまた焼く。今度は自分一人で焼いてみる。次の窯出しが楽しみである。


今度こそ

2006-02-16 | 環境問題 地球を救う真面目な話

土曜日に窯出しの予定です。

開けてみなければわかりませんが、窯はもう冷めているはず。

明日は、火曜日に伐ったアベマキを運びます。それを一窯分割らなければなりません。

そのまま小屋に泊まる予定です。

土曜日も、窯出しした後の窯で一晩寝てみようとと思います。多分、暖かくて気持ちいいはず。


山男

2006-02-15 | 環境問題 地球を救う真面目な話

次の炭材を準備するために山へ入った。

アベマキを4本倒し、刻んだ。そのうち一本は重心が傾きすぎなので太い枝を払ってから倒した。

その時に梶さんが登って落としたのだが、ロープと太めの枝を20cmに切ったやつを2本。それを幹に巻き付けて足場にしながらひょいひょいと登っていく。また一つ山男の知恵を見た。

感心というよりも感動した。とても73歳には見えない。感動のあまり、写真を撮るのを忘れた。