感染症内科への道標

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急性及び慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン 2009年度版

2010-01-20 | 臓器別感染症:循環器系
日本循環器学会、2008年度合同研究班報告 
日本循環器学会ホームページより全文及びダイジェスト版共にダウンロード可 

以下のまとめについて記載されておりますが、基本的に学会サイトが極めて有用であるためそちらを優先してください。


日本循環器学会ガイドラインサイト 
http://www.j-circ.or.jp/guideline/index.htm

心筋炎を惹起するウイルス
ピコスナウイウルス(エンテロウイルス:コクサッキーA及びB群、エコーウイルス、ポリオウイルス)、A型肝炎ウイルス
オルソミクソウイルス:A型インフルエンザ、B型インフルエンザ 
パラミクソウイルス:RSウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス
フラビウイルス:C型肝炎ウイルス、デング熱ウイルス、黄熱病ウイルス
トガウイルス:風疹ウイルス、チクニングニアウイルス
ラブドウイルス:狂犬病ウイルス 
レトロウイルス:HIVウイルス 
ポックスウイルス:ワクチニアウイルス 
ヘルペスウイルス:帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、EBウイルス 
アデノウイルス:アデノウイルス 
パルボウイルス:パルボウイルス 

→細菌、真菌、リケッチア、スピロヘータ、薬物、化学物質、アレルギー、自己免疫性疾患、放射線でも起こりうる 

症状、検査
・症状 
感冒症状、消化器症状→数時間から数日の経過で心症状が出現(心不全徴候 70%)、心膜刺激による胸痛(約44%), 心ブロックや不整脈(約25%)、軽症を含めれば稀でははいが、症状が非特異的なため明白な心筋炎は稀である。 
・徴候 
発熱、脈の異常(頻脈、徐脈、不整)、低血圧。肺うっ血、右心不全徴候
・生化学的検査 
CRP上、AST、LDH、CK-MB、トロポニンの上昇が一過性に確認される。心筋トロポニンT迅速測定が簡便で有用である。 
・胸部レントゲン 
時に心拡大や肺うっ血像 
・心電図 
たとえ初回の心電図変化は軽微でも、時間の経過と共に異常所見が明瞭になる場合がある。繰り返しの心電図検査が肝要である。頻度としてはST-T異常が多い。
・心エコー 
心膜液貯留に加えて、炎症部位に一致した一過性の壁肥厚と壁運動低下が特徴的である。
心筋炎を疑ったら必ず心エコー検査を行う。 
・心臓MRI,CT→病変の広がりにて急性心筋梗塞との鑑別に有用 
・核医学検査→感度は高くないが特異度が高い 
・心臓カテーテル検査→症状が許せば診断的価値が高い結う急性に行う。→冠動脈の有意狭窄病変を除外。→次いで、心内膜心筋生検を行う。(多数の大小単核細胞が浸潤し、浸潤細胞と壊死した心筋細胞の接近がしばしばしば認められ②心筋細胞の断裂、融解、消失さらに、③間質の浮腫が検出できれば心筋炎と確定診断される。心筋生検は10日以内の早期に通常3か所以上から行う。
・ウイルス関連診断→2週以上の間隔で採取された急性期とカン解期のペア血清を用いる。測定項目としてはコウサッキーウイルスB群1-6型、A群4,9,16型、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エコーウイルス9,11, 14, 16, 22型、パルボウイルスB19、ヘルペスウイルス6型、インフルエンザA、Bウイルス。小児、新生児では、単純ヘルペスウイルス、EBウイルス、RSウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイスルなども考慮する。

治療
・急性期管理と治療
→炎症期が1-2週間続いた後に回復期に入る。多くは炎症に伴う可逆的な心筋機能低下である。
薬物による血行動態維持は一般の急性心不全と同じであり、利尿薬やカテコラミン薬などが用いられる。心原生ショックや低心拍出状態では、大動脈バルーンパンピング、経皮的心肺補助装置を装着する。ジギタリスは催不整脈作用が強いので使用を避ける。
ステロイドの評価については評価が定まっていない。
高度心ブロックによる徐脈には一時的対外式ペーシングを行う。
ウイルス感染を増強する恐れがあるため、発熱に対してNSAIDsなどの鎮痛、解熱薬はなるべく使わない。

予後 
4.7%で1か月以内に死亡(心原生ショック 46%, うっ血性心不全 38%, 完全房室ブロック 15%)

劇症型心筋炎
体外循環補助を必要とした重症度を有する
→病状は日単位から、ときに時間単位で進行する。
→心筋炎による血行動態の破綻を回避し、自然回復の時期までいかに橋渡しするかにかかっている。
巨細胞性心筋炎
→多数の多核巨細胞が出現する致死的心筋炎である。劇症型心筋炎の臨床病型をとることが多い。
→ステロイド投与しない群3か月、した群3.8か月。
抗T細胞抗体+シクロスポリン+プレドニゾロンで11例中8例で心臓移植を必要とせず1年間生存
→予後が極めて不良であり、長期生存例が殆どない。
好酸球性心筋炎 
→大多数で末梢血の好酸球数増加がみられるが認められない症例も存在する。多いのは続発性であり、半数を占める。急性期における死亡率は7%程度である。
慢性心筋炎 
→数か月以上持続する心筋炎。基本的に対症療法
小児心筋炎 
→ウイルス感染が多い。エンテロウイルス感染、アデノウイルス感染が多い。インフルエンザでは死亡例のうち、約13%が心筋炎との報告がある。
心臓サルコイドーシス 
→心筋内に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が病理組織学的に認められ、心臓以外の臓器で病理組織学的あるいは臨床的にサルコイドーシスと診断した場合
→高度房室ブロック、心室中隔基部のヒハク化、Gaシンシグラフィーでの心臓への異常集積、左室収縮不全
→副徴候:心電図、心エコー異常、心内膜心筋生検で中等度以上の心筋間質の線維化や単核細胞の浸潤。ガドリニウムMRIにおける心筋の遅延造影所見、核医学検査でのカン流異常
膠原病性心筋炎 
→単独での初発症状は稀
薬剤性心筋炎
→すべての薬剤で起こりうる。

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