東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

グリンピースの冷たいスープ

2008年05月25日 | 前菜

更新が遅くなりましてすみません。

今回は、前菜の前のアミューズの一皿をご紹介します。

グリンピースの冷たいスープです。

食事の始まりにあたって、少量でも満足感があり、旬の食材から季節を感じていただけるような一皿を提供したいと思い考えました。

スープは、好き嫌いが少なく安心感が有りますし、最初にのどごしが良く素直な味を感じる事で、後に続く食事をよりリラックスして楽しんでいただけると思います。

暑い日には冷たいスープを、寒い日には温かい物を提供する事で、ホッとした気持ちになっていただけたら嬉しいです。

今回のグリンピースのスープですが、こだわりの食材で作っています。

一緒に働いているキッチンスタッフの新田さんのお祖父さんから送っていただいたグリンピースを使わせていただきました。

奈良県にお住まいで昨年も送っていただきましたが、とても新鮮で良質なグリンピースに感動しています。

素晴らしいグリンピースを、ありがとうございます。

お店の賄いでも美味しくいただきましたが、この美味しさをお客様にも味わっていただきたいと思い、今回のスープを作りました。

一般的には野菜のスープを作る時には、甘さを補う為に玉葱を加えたり、旨みを強くする為にブイヨンを加えたりしますが、良質な食材には余計な味は必要ないと思いますので、グリンツィングではミネラルウォーター(仙人秘水)とフランス ゲランドの塩のみで煮込んでいます。

煮込んでからは、色が変わらないうちにすぐに冷やす所がポイントです。

そのままで飲んでも十分に美味しいのですが、お店ではもう少し滑らかさが欲しいので、裏ごしした後に少量の牛乳で濃度を調節しています。

そして、レストランらしい演出も必要ですので、トッピングにはカリカリに焼いたパルマ産の生ハムを崩した物と、良質なオリーブオイル、香草のシブレットの花を浮かべています。

このシブレットの花にも思い入れがあります。

先月、料理人の先輩の紹介で、東京 田無にありますハーブの生産者のニイクラファームさんに伺ったところ、お忙しい中とても熱心にハーブの説明をしていただきました。

新倉さんのお話を聞いていますと、穏やかな人柄と同時にその仕事に対する強い情熱を感じ、あらためて食材を育てる大変さと素晴らしさを実感する貴重な経験が出来ました。

その日、畑で黙々と作業をされていた新倉さんのお祖母さんが、とても印象的でした。

親切にしていただき、ありがとうございました。

今回のグリンピースのスープは、一口で飲めてしまう小さな料理ですが、その中には後に続く前菜やメインディッシュ、デザートと同じくらい、時にはそれ以上の気持ちが入っています。

是非ともグリンツィングでの食事の始まりに、小さな季節を味わっていただければと思います。

 

「仕事」

更新が遅くなり、お伝えするには少し時期がずれてしまいましたが、今年の5月の連休もお休みを頂き、実家のある新潟に行って来ました。

実家は、お米を作る兼業農家をしていまして、この時期は田植えの作業になります。

以前は、忙しいやら用事があると言っては作業を避けていましたが、最近は少しでも手伝えればと思うようになりました。

手伝うと言っても物を運んだり器具を洗ったりする位で、ほとんどの作業は両親がやっています。

今は機械が発達して、農作業も昔とは変わったと両親は言っていましたが、それでも楽な仕事ではないと思います。

そして、実家に帰るたびに祖母の事を思い出します。

いつも祖母は働いていました。

田んぼの他にも野菜を作る畑もありますので、だいたい祖母を見るのはそのどちらかでしたし、以前は母も会社に勤めていましたので、祖母の仕事量はとても多かったと思います。

朝早くから畑にいて、日が落ちて暗くなるまで働いていました。

肌は真っ黒に焼けて背中も丸くなっていましたが、よく見ると農作業のやりすぎで、手や足の指の形が変わっていた事を憶えています。

新潟にいた頃には感じなかったのですが、今こうして働く身になって祖母の素晴らしさを実感出来るようになりました。

自分の生まれる以前の祖母についての話を、祖父や両親から聞いても、そのほとんどは仕事をしていた話ばかりです。

生まれてから、働いて、働いて、働いて、そして最後まで働いて。

決して華やかな人生ではないかも知れませんが、自分はそんな生き方を心から尊敬しています。

美味しいグリンピースを送っていただいた新田さんのお祖父さん。

いつも新鮮なハーブを送っていただいています新倉さんのお祖母さん。

本当にありがとうございます。