本日は、デザートの一皿をご紹介します。
チョコレートのミルフイユ グランマルニエ風味です。
お菓子屋さんでは、ヴァニラ風味のクリームや苺を挟んだミルフイユを良く見ますが、今回は少しアレンジして、ココア入りのほろ苦いパイ生地に、グランマルニエ酒で香りを付けたチョコレートクリームを挟んだ、少し大人なミルフイユにしてみました。
あらかじめクリームを挟んで置くお菓子屋さんのミルフイユは、時間が経っても湿気にくいように、折り込みパイ生地を押さえて焼き上げる場合が多いのですが、グリンツィングでは、時間をかけてふっくらと焼き上げたパイ生地を使っています。
しかし、この方法ですと、時間が経つにつれてクリームの水分がパイ生地に染みこみ易く、美味しさの寿命が短いのが難点です。
だからこそ、このサクサクの食感は、作り立てを出せるレストランならではの美味しさなのです。
それから、試作の段階では、チョコレートの風味をストレートに感じてもらいたいと思い、風味の強いお酒を使いませんでしたが、どこか単調で食べ飽きてしまうので、チョコレートと相性の良いオレンジのお酒を加えたところ、グッと味わいが深まり一皿の完成度も上がりました。
最近は、デザートにも料理と同じく軽さを求める為に、お酒やクリームを控える傾向にありますが、フランス料理らしい余韻や印象深い一皿にする為には、お酒も大切な要素だとあらためて感じました。
是非とも、食後酒と共に楽しんでいただきたい一皿です。
今後は、自分の料理をもっと簡単にしていきたいと思っています。
料理を簡単にしたいとは、どう言うつもりだと思われるかもしれませんが、決して楽をしたい訳ではありません。
今回の一皿もそうですが、お皿にはチョコレートクリームを挟んだミルフイユがのっているだけですので、一見簡単に思えますが、そこにたどり着くまでには、とても長い時間と沢山の手間がかかっています。
普通の折り込みパイ生地に比べて、技術的に難しいココア入りの生地を丸一日かけて折り込み、そして当日には、一時間以上かけてオーブンで焼いています。
そこで何故、簡単にしたいかと言いますと、そこまでして時間と手間をかけた物を、出来るだけ完璧な状態でお客様にお出ししたいからなのです。
意味も無く複雑な事をしても、失敗するリスクばかりが高くなり、逆に料理の完成度を維持する事が難しくなります。
危険なリスクや時間は、仕込みの段階でかければよい事で、仕上げの段階では、少しでも余裕を持って取り組みたいのがその理由です。
このミルフイユは、作りたてが命ですので、その単純な作業に気持ちを込めたいのです。
沢山の作業に追われて、気持ちの無い形だけの仕事にしたくありませんし、自分の料理を、見かけだけの中身が貧しい物にもしたくありません。
しかし実際は、簡単にしたいと思っても簡単には出来ません。
難しい事ですが、これからも頑張りたいと思います。