monologue
夜明けに向けて
 



わたしは音楽プロデューサー、フィル・スペクターを尊敬している。ラジオのカウントダウン番組「9500万人のポピュラーリクエスト」を聴くクラスメイトたちが「愛しのラナ」の次に応援したのはロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」だった。出だしのドラムから歌に入るところが好きだった。その時は知らなかったがこの曲のプロデューサーがフィル・スペクターだったのである。高校時代のわたしはまだプロデュースということばが何を指すのか知らなかったけれどビーチボーイズのブライアン・ウイルソンはこの曲がラジオから流れてきた時衝撃を受けたというし、時代を変えた名曲だった。その後、かれが手掛けたライチャス・ブラザーズのナンバーワンヒット曲「You've lost that loving feeling」からフィルの作る音はウォール・オブ・サウンドと呼ばれることになった。厚い音の壁で曲を構築してあるらしい。わたしにはどこがどう違うのかわからなかったけれどたしかにフィル・スペクターのプロデュースした作品は壮大ですごいと感じた。その頃つぎからつぎへとフィル・スペクターがプロデュースした曲がヒットしてかれは時代の寵児となった。ビートルズの「レット・イット・ビー」アルバムを手掛けた頃が頂点だったのだろうか。ところが2000年代に入りフィルが女優ラナ・クラークソン射殺容疑で逮捕されたというニュースが流れた。なにか変な気がした。わたしが洋楽にのめり込むことになった頃の音作りのヒーローが事件を起こしてしまった。現在はカリフォルニア州立刑務所の薬物中毒治療施設に収監されているという。フィル・スペクターはポピュラー音楽界に大きな足跡を残して世界に多くの信奉者を生んで風のように去ってしまったのだ。青春時代にかれのサウンドを聴いたミュージシャンたちはみんなそれぞれに影響を受けて自分自身の音楽を構築したことだろう。
fumio

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