今日原宿にFOREVER21がオープンしたらしい。永遠に21歳、誰もが21歳に見られるファッションと言われると、逆にちょっと自分には関係ないか、と思うが、半年くらい前にオープンしたH&Mは銀座、原宿の両店で買い物をしたことがある。もっとも並ばなくてよくなってからだけど。
こういう安いショップが続々誕生する現象に、枕詞のように「不況の影響…」とメディアは言うけれど、ファッション、特に衣服がチープ化していることは何も不況の影響だけではないと思う。それ以上に女性のライフスタイルや社会の変化が大きいのではないか。
東京では就職を意識する大学の2、3年生くらいから、ファッションに色がなくなってくるとなんとなく感じる。都市部の学生は、工場で働く技術者や一部の制服が決められた公務員やサービス業ではなく、営業職も含めオフィスワーカーを目指すケースが多いが、ここ10~20年くらいで女性の制服を採用する企業は激減している。仕事柄大小かかわらず多くの会社に訪問するが、私が社会人になった頃は普通だったOLの制服が今は着ていると「珍しい」と思うようになった。
その半面、仕事で私服のスーツを着る女性も、男性の仕事服のカジュアル化とともに(あるいはそれより早く)減り、ほとんどが単品コーディネートになった。私自身も20代の頃はスーツを持っていたが、ここ10年くらいは買っていないし、ほとんど着ていない。本当は今の方がTPO的には着るべきシーンは数多いような気もするが、お会いする相手の地位がどんなに偉くても地味目のボトムスにジャケットというスタイルが多い。そのボトムスやインナーが時々GAPだったりH&Mだったりする。
つまり社会人女性の私服でいる時間が圧倒的に増え、しかもカジュアル化すると、衣服、特に着ているうちにダメになりやすい夏場のインナーや無彩色系で事足りるパンツは、単なる道具になり、またそこにお金をかけることも難しくなっている。ファッションが会社への行き帰りと休日だけでなく、毎日長時間のこととなればそれなりに数を持つ必要もあるからだ。別に私服の職場が制服の職場より給料が多いとは限らず、昔に比べて他にお金を遣うことも格段に増えている。だからジャケットだけは上質とか、バッグや小物は高級ブランド品という人でも、よく見るとコーディネートのどこかにファストファッション系ブランドが入っているケースが多い。
パンツスタイルの女性が増えていることも、その方向に拍車がかかる要因になっている。私も95%パンツだが、スカートに比べてデザイン面での選択肢は少ない。丈の長い、短いもせいぜい正寸か、七分、八分くらいのことだし、フォルムもだいたい好みによって決まってくる。派手派手しいプリントものも少ない。黒やグレーのパンツなら、よほど質の悪い素材のものを着ていない限り、パンツだけで6、7万円を超えるような高級品は別として、1万円弱のものも、2、3万のものもパッと見て区別はつきにくい。
若年層だけでなくこうして本来、服にお金を落とすべき層の多くがファストファッションをとり入れだすと、中途半端なブランドの中途半端な価格、レベルの商品はますます難しくなる。バッグや革製品で人気の海外の高級ブランドもこと女性向けの衣類に関しては日本では、以前からほとんど売れない。加えてSPAモデルが普通になりだした頃からアパレル業界の構造は様変わりしてしまったようだ。