2006年末から2007年初旬にかけて、新宿を拠点にしている映画ファンには、楽しみなニュースがある。2007年2月には、山手線内側を都心というなら、都心3施設目となるシネコンが開業する。東宝と東映が手を組むらしいので、いずれか1企業がかかわるものより、ソフトのバリエーションも期待できる。これに先駆け、近隣地の新宿文化シネマはリニューアルし、大人向けの良質ソフトを上映することで知られるガーデンシネマと、アジア映画専門のシネマートを開業する。また、2008年には新宿松竹会館の場所がシネコンになる予定らしい。
もともと新宿に映画館は少なくないが、歌舞伎町の深い場所に集中していたり、古くて汚かったりと、特に女性客にはきついものがあった。新宿3丁目に至っては、レイトショーもほとんどやらない、忘れ去られた感すらある映画館ばかりだった。
シネコンは都市部にはほとんどなかった。六本木のような大規模開発でもない限り、新設できる場所も残っていないだろうし、何よりも街の集客力という点で設備に凝らなくても人が来るという慢心があったのだろう。ところが郊外にどんどんシネコンができ、わざわざ休日に映画を観るために都市部に出てくるという行動パターンを期待できなくなってきた。ちょっとレンタルビデオを借りに行く気軽さで、近所のシネコンに行けるのであれば、何も交通費をつかって汚い街中の映画館に行く必要がないわけだ。ショッピングの場も郊外に増えていることもあり、通勤以外の都市部への移動が総体的に減っているのかもしれない。
さらに東宝が製作しない映画ビジネスで成功していることもシネコン増設に拍車をかけている。製作や広報はテレビ局など外部に委ね、資金はファンドを組成し、内容の良し悪しの判断は別にして邦画ヒット作を連発している。映画ファン的には邦画も洋画もシネコンで上映されないような作品により魅力があるわけだが、そうした作品が発掘され、ネットなどを通じて話題を呼ぶような現象もまた、大手資本が映画産業全体を活性化しないとなかなか出てこない。メインストリームがあってこそ、小品の秀作が存在感を発揮することもある。そう考えれば、今の現象も悪いことではない。新宿に先立ち、10月5日にオープンするららぽーと豊洲内にユナイテッド・シネマができる。旧態依然とした、サービスも、上映作品にも、スクリーンや音響にも特徴がない映画館はますます厳しくなると思う。