ensemble マーケティングの視点

日常生活と趣味を綴る個人的散文です。タイトルに反し、仕事に関する話は書きません。

つくづくせこいブランド

2007-11-17 02:07:52 | まち歩き

新卒で働き出してまもなく、大阪のある有名高級和食店で仕事関連の知人と食事をしたことを今も覚えている。知人は私より年上で銀行系シンクタンクに、当時はまだ珍しかった総合職として勤める女性だった。ランチだったと思うが、割り勘が堪えたから記憶にあるのだろう。でもその背伸び感は、決して居心地は悪くなかったし、そんな些細なことの積み重ねが成長の糧になっていたのかもしれないと思う。

その時に行った店も誰もが知る高級店だったが、吉兆はさらに何ランクも上でとても手が出なかったというか、行こうという発想にすらならなかった。その後、さまざまなところに足を踏み入れたけれど、いまだに吉兆には行ったことがない。高嶺の花だった。

やがて私がムリをして出かけた和食店の方は、吉兆グループより随分早くに東京のあらゆるデパ地下に和惣菜店として出店し始めた。その企業は何の問題も起こしていないし、デパ地下に出ることは何も悪いことではない。でもその大阪の店で板前修業をしていた若い男の子たちは、10万円に満たない給料で朝から晩まで働いていた。どうってことのないチェーン店に行けば倍くらいもらえるのに、厳しい修業に耐えていたのは、その店に脈々と受け継がれてきた老舗の暖簾があり、学べる技術があったからだ。彼らは今もそのモチベーションを持ち続けられているのだろうか。もっともそのときの彼らは既に一人前になっていると思うけど、今の若い人はどうだろう。プロ野球じゃないが、ヨーロッパの有名店で修業をしたフランス料理やイタリア料理のシェフ、パテシェの方がもてはやされているように思う。

国内の飲食やサービス業のあらゆる店の敷居が低くなったのは、自分が歳をとったからだけではない。企業の接待が減り、粋に遊ぶ人が減り、運営・維持費用ばかりが膨れ上がり、スタイルを守れなくなってきているから、企業側から敷居を下げてきている。各社の拡大路線を責める意見はあるけれど、そうしなければならない事情もあったのではないかと思う。

それにしても、賞味期限の偽装はくだらないし、セコイ。大事に至る可能性もあるわけで、くだらないと言ってはいけないかもしれないが、他にコストやロスの削減方法は考えられなかったのだろうか。従業員に責任を被るように脅したというけれど、今のスタッフが何も学ぶべきところがない保身だけの暖簾継承者に屈すると思ったとしたら、勘違い甚だしい。最近そういうセコイ事件や議論が増えているように思う。昔は違った、というほど、歳はとっていないつもりだけど、やっぱり昔は違ったかもしれない。時代や人はブランドを求めているようだが、安易に求めれば求めるほど本物のブランドは稀少になり、遠ざかっているような気がする。


大人は甘いのがお好き?

2007-11-11 00:39:24 | まち歩き

久しぶりに神保町駅に降りたら、駅の交通広告はドーナツだらけだった。それはミスタードーナツの新業態andonand(アンドナンド)」の広告。神保町の駅そばに11月にオープン。春、渋谷にオープンした1号店に続いて2店目らしい。インテリアはブラウン系を基調とした落ち着いた造りで、コーヒーなども本格的な味。でもなぜかドーナツのラインナップはいかにも甘そうなものが目立っている。

「大人の」を強調した広告コピーは、やや陳腐化した感もあるが、スィート系の各社が大人や男性をターゲットにしているのはここ数年続いている傾向だ。コンビニには大ぶりのプリンやケーキ系のデザートが…。これは男性がターゲット。会社の置き菓子も男性がよく利用しているという。半面、いわゆる飲み屋文化は衰退気味だ。企業接待や会社行事が減っていることに加えて、飲酒運転の取り締まり強化が拍車をかけていると言われているが、それだけではなく、男性の嗜好が女性化し、嗜好の年齢差が縮まってきているのだと思う。

しかし半面、メタボ対策など健康志向も依然強い。最近の偽装食品報道を見ていると、安全性において信頼できる食へのニーズも高まっているように思う。食のブランド化が進んだ挙句が、比内鶏騒動や吉兆の問題につながっている。でももっと食行動を自然体でみると、結局その根幹には食欲があり、頭で論理的に整理が付く消費傾向ばかりではないような気がする。

人は健康でいたいし、やせたいけれど、お酒も飲みたいし、甘いものも食べたいし、時にはおなかいっぱいがつんと食べたいのだろう。美味しいと評判のもの、手が届きにくい高級品や珍しいものにも興味がある。人はその日の気分や、出来事によって、理性的であることもできるし、自暴自棄になることもある。だからブランド食も、健康食品も、メガマックも、甘いドーナツも流行るというのは乱暴な分析かもしれないが、食マーケティングには論理が一貫した答えを求めるのは難しいように思う。人は自分を甘やかしたいとき、酒を際限なく飲んだり、甘いものを食べたりする。人が何を食べるかということは衣住分野ほど、経済要件やその人の社会的立場に左右されない。つまり収入の少ない人が大きな邸宅に住むことは難しくても、高級レストランを利用することはそんなに難しくない。だから食行動は心の動きとまっすぐにつながりやすい。


東京駅はおいしい

2007-11-08 02:49:08 | まち歩き

長距離の出張時にはいつもギリギリまで仕事をして、食事もせずに東京駅から新幹線に乗ることが多い。駅でおいしくないサンドイッチを買い、車内で高いコーヒーを買い、後悔するパターンもだいたい同じ・・・だったのだが、先日は違った。

定刻まで約10分を残し、新幹線の改札前まで来て、少し風景が違うことに気づいた私は、数日前の新聞記事を思い出す。「グランスタ」の存在だ。東海道新幹線の八重洲中央口そばの改札付近からみると、グランスタはさらに地下。降りるとまずDEAN&DELUCA。いわゆる有名なアメリカブランドのデリカテッセンだ。本当はいろいろ見たかったが、おそろしい混雑と定刻まで10分という切羽詰り感で、ここで足止め。コーヒーとマフィンを買った。

そして関西から帰京後に再チャレンジ(たまたま帰京便でいつも下車する品川に止まらなかった)。平日の閉店間際の時間は結構すいていて、十分に買物できる感じ。そしてラインナップはデパ地下ばりの惣菜店だらけ。懐かしい(単にロールキャベツが安くておいしいので若い頃にたまに行った記憶があるだけだが)新宿アカシアまでがお目見えで、これは大丸がヤバイのでは?と思いきや、一昨日新生大丸が満を持してオープンしたらしい。関西では大丸といえば百貨店の両翼の片方だけど、首都圏だと存在感に欠けていた。似たプレゼンスの松坂屋と一緒になり、苦手だった首都圏のテコ入れがなければ存在感が発揮できない。そこで首都圏のフラッグシップの一つにしようと、まずは大丸東京店が先陣を切り、新しくなったわけだ。

都市を代表する駅には2通りある。駅が賑やかで商業面でも都市の核である街と、市街地が駅から離れている街。大阪、横浜、名古屋(←よく知らないが)は前者、東京、京都、札幌、福岡(←確か)は後者。でも後者もどんどん駅前(あるいは中や地下)開発が進んでいるように思う。

駅が便利になるのはうれしい。でも駅ならではの趣は消え、どこの駅や駅前も同じような佇まいになる。京都も駅ビルが建ったときには反対もあった記憶がある。もっとも駅前に古くからあるタワーのデザイン自体がいかがなものかと思うが…。同じ商業施設が入るのでも、もう少しその都市、地域ならではの個性があってもいいのではないか。それは別にお土産や物産品を売っているということだけではなく。