遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

アガリスクエンターテイメント『令和5年の廃刀令』

2024-02-27 00:17:00 | 演劇を見てきた

2024/2/26

・帯刀が常識となった令和五年の日本社会で、廃刀令の是非を問うタウンミーティングの様子を描いた話。

・『12人の怒れる男』『12人の優しい日本人』と同じ系譜の話。実際、展開も似ている。

・登場人物が事件をほぼ他人事として扱う「~優しい日本人」に比べて、各々の信念や利害がしっかりしている。

・結果、支持派と否定派の入れ替えによる起伏は少なめで、どちらかというと人物描写に重きを置いている。

・裁判員裁判よりもっと非現実的なシチュエーションだからこそ、登場人物の実在感が大切。

・肯定派と否定派のバランスをとるのはとても難しいけど、かなり注意深く練りこまれていたと思う。

・最初の「刀は日本の心」おじさんの言っている理屈は、そのまんまアメリカの銃規制反対派に置き換えられる。

・帯刀という現実の日本人から見るとバカバカしく思える風習でも、アメリカなら銃規制反対の人は普通にいるので、最初にこの言い分を持ってきたのはうまい。

・早いうちに「元々刀はごく少数の武士のものなので日本人の心と言うのはおかしい」というツッコミが入ったのもスッキリする。

・是非はともかく、理屈はわかるという主張が多くてタウンミーティングとしての質が高い。

・「抑止力は機能していたのでは」というツッコミがあったけど、抑止力と反撃能力は違うので違和感あった。戦闘になった以上、抑止力は機能していない。

・スマ刀から票取りのための駆け引きが始まるのも見ごたえがあったけど、二択を迫られたら投票は厳しい。

・自分があの場にいたら棄権するかも。

・ある種の政治家らしさを完璧に具現化した榎並夕起さん。正面を切るだけで笑ってしまう。ズルい。あのキャラクターがいるから、他の人も動きやすくなる。

・淺越岳人さんもよかった。弁が立ち知識もあるのに倫理観がおぼつかなくなっている作家。

・髭とガタイの良い作家に既視感ある。西村賢太さんかな。

・現実問題、傘ですら邪魔なのに、あんなに長くて重い鉄の棒の携帯が一般化することはないとは思う。自転車に乗るときにめちゃめちゃ邪魔そう。

・それでも思考実験として面白かったし、本作品より現実の国会中継のほうが作り物っぽいのは、ほんとに何とかならんものかと思ってしまう。

 

《公演詳細(観劇三昧HP)》

■公演時期 2023/05/01

■地域 関東

■キャスト
淺越岳人
伊藤圭太
榎並夕起
鹿島ゆきこ
古谷蓮
前田友里子
矢吹ジャンプ(ファルスシアター)(以上アガリスクエンターテイメント)
江益凛
斉藤コータ
声の出演:北川竜二

■スタッフ
脚本・演出:冨坂友
文芸助手・オーサリング:淺越岳人
演出部:川嶋芙優(片岡自動車工業)
衣装・映像・スタッフロール:榎並夕起
小道具・題字:前田友里子
配信・撮影:ニュービデオシステム
スチール撮影:石澤知絵子・井上亮二
宣伝美術・デザイン:津和野諒
制作:佐伯凛果
制作助手:樫村健人
プロデューサー:佐野木雄太
製作協力:Cuebicle
協力:オフィスキール・片岡自動車工業・CRAPER・コメディユニット磯川家・チーズfilm・俳協・ファルスシアター・大和田あずさ・竹田ユウヤ
企画・製作:アガリスクエンターテイメント

■あらすじ

―どうやら、日本初の廃刀令が出るかもしれないらしい。

二〇二三年、相次ぐ刀剣による殺傷事件を受けて、世間では一般市民の帯刀を規制する気運が高まる。
歴史上初めて出される「廃刀令」をめぐり、国内の世論は真っ二つに。
全国に先んじて条例を検討し始めた**区はタウンミーティングを実施。

そして、八人の男女が集められた。

これは、明治期に廃刀令が出されなかった世界の会議コメディ。


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