遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

シェイクスピア『ハムレット Q1』(光文社古典新訳文庫)

2024-05-05 00:36:07 | 読書感想文

 

2024/5/4

安西徹雄訳。解説を参照すると、ハムレットにはいくつかの底本があって、まずは1603年刊のQ1版と1604年刊行のQ2版、そのあと1923年に初めての全集に掲載されたF1版がある。

Q1版は最初の出版物ではあるものの、海賊版扱いされがちで、オフィシャル色が強いのはQ2版とF1版。

そんなに違うもんなのかなと、実際読んでみると、全然違う。

マニアックな方向ではなく、ものすごくわかりやすくなっている。

そもそも長さがQ2の半分ほどしかない。読みやすいし、たぶん演劇になればはるかに見やすい。

Q1 版は読んだことなかったのに、記憶にあるハムレットという物語は、こちらのバージョンのほうが近い。

少なくとも、マンガの原作や子供向けバージョンを作るなら、こちらを基盤にしたほうがよさそう。

ガートルードもこのバージョンなら混乱しない。

逆にこれくらい変えても、題材の良さが損なわれていない。上演台本として強い。

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シェイクスピア『ハムレット』(ちくま文庫)

2024-05-04 23:46:36 | 読書感想文

2024/5/4

松岡和子訳。初めて読んだわけではない、はず。

近々、また演劇作品のほうを見に行くので予習がてら読んでみる。

こういう古典はネタバレや先入観なしに見たいとか考えずに済む。

名作という評価が定まっている作品だから言えるけど、戯曲で読むとあらためて登場人物が何を考えているのかよくわからず、とにかく冗長に感じる。

過度な説明や言葉の装飾は、今ほどの照明や音響効果が期待できない当時のイギリスの演劇環境であれば、それほど違和感はなかったのかもしれない。

あらすじを知っている状態で読んでいるからついていけるけど、まっさらの状態で読んでいたらたぶん理解できなかった。

特に母であり、宿敵の妻でもあるガートルードがよくわからない。

息子を愛しているのはわかるけど、二人の夫をどう思っているのか、全然伝わってこない。

せっかくの機会なので何度か繰り返し読んで変化があるか試してみたい。

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高木三四郎『年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで』

2024-04-28 22:07:12 | 読書感想文

2024/4/28

高木三四郎へのインタビューと、藤田晋、ケニー・オメガ、倉持由香それぞれとの対談。

表紙がいい。事務仕事している人たちと、元気いっぱいのプロレスラーのギャップがありすぎて、たぶん違うのにコラージュっぽく見える。

対談では大社長が聞き手として優秀。グラビア業界の話すらプロレス用語に置き換えつつ理解しようとしている。

世界でも有数のプロレス団体になっているのに、まだまだ上を目指している。

そのために新しいことをどんどん取り入れようとしているし、選手たちの自主性を尊重するのもその一環。

強い上昇志向と現場で培った実戦的な柔軟性。納得。

無料興行のマネタイズ、飯伏幸太のデビューの話、鈴木みのるとのかけひき、ハッスルの感想、青木真也を受け入れた意味、どれも楽しく読める。

最後のほうで、そんな柔軟性のある大社長が、理不尽なスターを育てようとしている話も業が深い。

単純に欲の量が多い人は強いと再確認できた。

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トム・マクナブ『遥かなるセントラルパーク』

2024-04-19 00:32:03 | 読書感想文

 

 

2024/4/18

・1931年、ロサンゼルスからニューヨークまでアメリカを横断する三千マイルのフットレースが実行される話。再読。

・3月21日から6月20日の三か月かかる。

・最初のうちは、競技というよりお祭りや興行に近い。

・参加ランナーは一部を除いて記念出場どころか食事目当てだし、サーカスの一団を引き連れて、行く街々でショーを披露する。おしゃべりラバのフリッツ見たい。

・世界的な不況のなか、起死回生を狙うランナーたちは高額賞金を狙ってしのぎを削る。

・一方で、前例のない巨大レースの運営は、ニューヨークまでたどり着けるかどうか、賭けの対象になるくらいの綱渡りを繰り返している。

・灼熱の砂漠や極寒高地のロッキー山脈を越えるようなような過酷なレース風景と、オリンピック招致にあたって賞金レースを目の敵にする政治家たち。

・この頃からすでにオリンピック招致の連中が敵役になっている。幻想としてのアマチュアイズム。

・生まれも育ちも全然違うランナーたちが協力し合って、圧倒的な距離という困難に挑んでいるし、主催者のフラナガンが窮地に陥れば、ランナーたちも知恵や技術を出し合って解決しようとする。

・登場人物たちが、ランナーもスタッフもだんだんチーム化していくところが楽しい。最初はお飾りでしかなかったミスアメリカも運営スタッフとして働き始める。

・フーヴァーやカポネみたいな実在する人物も出てくる。競技も政治も具体的で描写が細かい。

・たくさんの試練を経て、ただのお祭り騒ぎから競技としての崇高さが生まれてくる。イベントそのものの成長物語でもある。

・〈いつだってランナーをつぶすのはペースなんだ。決して距離じゃない。〉〈我々の走る一マイル一マイルが、地面を踏み出す一歩一歩が勝利になるんだ。〉〈次の日につるし首にされることがわかっているとき、人は驚くほど精神を集中できるんだ。〉〈三十年のランニングは勝利の瞬間ではなく、まさにこうした危機への準備期間だったのだ。〉

・常に身なりを気にしていた主催者が絶望してボロボロの姿になっているところに、それまで決して感情を表に出してこなかった冷静な記者が汚い言葉で気合をいれようとしているところが好き。

・なんでいまだに電子化していないのか不思議。

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ダニー・ネフセタイ『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』

2024-04-15 13:39:00 | 読書感想文

2024/4/1

イスラエル空軍に在籍経験があり、今は日本で家具を作っているイスラエル人が著者。情報量が多い。

最初に文章内でちゃんと右派と左派を定義しているところが信頼できる。

政治の話題で使われる「右」や「左」は、人によって意味が全然違うので、言葉としての機能を失ってることが多い。

本書では言葉を尽くして抑止力としての武装を否定している。キリがないという。

アメリカの銃規制みたいだなと思う。

自分自身、現時点で日本の非武装化は現実的ではないと思うけど、とりあえず理想を掲げて、そこに近づこうとすることは大事。

今は逆行しているのが残念。現実に敗北している。

一方で対パレスチナに関するイスラエル人の考え方、気持ちはわかる。肯定はできないけど、身近に同じような国があったから。

イヤなことは山ほどあるけど、パレスチナ人が生活していた痕跡すら徹底的に消すという活動がおぞましい。

アーカイブ精神の真逆。

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ベン・モンゴメリ『グランマ・ゲイトウッドのロングトレイル』

2024-03-28 00:27:12 | 読書感想文

2024/3/26

・1955年、女性で初めて全長3300㎞のアパラチアントレイルを踏破したエマ・ゲイトウッドを紹介するノンフィクション。

・当時の彼女は67歳。1955年5月2日から同年9月25日までの146日、起伏の激しい山岳道を、単純計算で1日あたり20~25㎞くらい歩き続けた。

・激しい起伏、足場の悪さ、記録的なハリケーン、ガラガラヘビなどの危険な動物たち。

・本の大部分はこの最初のトレイルの様子と、彼女の生い立ちの紹介にあてられている。

・過酷なトレイルでも、彼女にとっては楽しいことだったらしい。実際、彼女は一回では満足できず、二回目、三回目と挑戦している。

・一方で、彼女の生い立ちのほうで語られる、夫からの暴力は目も当てられない状態。

・時代背景的に珍しいことではないと言っても、だからと言って殴られた傷が痛まないわけではない。

・単純に「歩くことが好きだから歩いた」と言えれば気持ちいいが、それだけでスルーハイクをしようとしたわけではないと思う。

・彼女自身歩くことに関して特別な訓練を受けていない。

・しかし、長年の農作業と11人もの子育てで培った、料理、裁縫、食べていいもの駄目なものの見極め、動物のあしらい方など、トレイルに転用できる技術を今の人とは比較にならない練度で身に着けている。

・初めてヤマアラシを食べようとして、肝がマズくてやめた話が好き。

・道中様々な人が彼女を助けてくれる。今でもハイカー間の助け合いの伝統はあるよう。ただ同じ場所を歩いているだけで絆が発生している。

・ロサンゼルスからニューヨークまで走るウルトラマラソンを題材にした小説『遥かなるセントラルパーク』でも同じような現象が起きていた。賞レースですらそうなんだから、当然かもしれない。

・掲載されている地名と地図が全然ピンと来ない。地名はともかく、地図のほうはもう少し何とかならなかったんだろうか。

・ちょっと前に見た『ロング・トレイル!』の主人公(のモデル?)ビル・ブライトンの話題も出てくる。

・本書では、彼の本で紹介されているエマの書き方に悪意があると、彼女の娘ルーシーに「おまえは途中リタイアしただろ」という感じでリアクションされている。

・当時よりはだいぶん整備されたようだけど、今でも挑戦したければ、基本的に一回仕事を辞めることが条件になる。ハードルが高すぎる。

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岡真理『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』

2024-03-23 13:11:00 | 読書感想文

2024/3/22

今起きているガザの問題、というか今のイスラエルという国家の問題点を解説した本。

自分の知識では軽々しく事の是非を判断することはできないけど、態度を保留にすれば中立になれるわけでもない。むずかしい。

実際、イスラエルが目指しているのはまさにそこ。

周囲の人々に態度を保留させているかぎり、イスラエルはジェノサイド(大量殺戮)を続けられる。

なので、病院や難民キャンプを襲っている時点でイスラエルの擁護は厳しい、くらいは言っておきたい。

大国アメリカも親イスラエル系のロビイストが力を持っていて、止めるどころか支援を続けている。

日本にも似たような話はあって気が滅入る。

ユダヤ人の国と言いつつシオニズムは敬虔なユダヤ教徒に認められていないという話、イスラム国と言いながらイスラム教とあまり関係なかったISILを思い出す。

あとで「あのとき何やってたの?」と言われない程度には態度を示していきたい。

ホントはそういうことは国や大手メディアでちゃんとやってほしい。一庶民よりは力あるんだから。

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Mako『保健室からの手紙』

2024-02-26 00:15:48 | 読書感想文

2024/2/25

2023年3月に退職した養護教諭が、34年間の教員生活で培った仕事に対する考え方を、一日の時系列や印象に残ったエピソードとともに書いたエッセイ。

前に読んだ養護教諭の方と雰囲気が似ているものの、詳細は結構違うのでたぶん別人。

保健室の先生は普段何をやっているのかよくわからないので、こういう具体的な仕事の内容を書いてもらえるとイメージがつかみやすい。ありがたい。

事務仕事や直接生徒をケアをする仕事も多いけど、それより、野球のバックアッププレイのような何かあった場合に対応するための仕事が多いように見える。

大体は意味がなく終わるけど、これを大事だと思えるかどうかで全然違う環境になりそう。

保健室の性質上、生徒に忙しいと思わせてはいけないという話もおもしろい。結構損な役割だと思う。

本書は小学校の分量多めなので、いろんな学校の仕事の様子を読んでみたい。

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名越文代「保健室: 元養護教諭が『歳時記とエッセイ』で綴る現役養護教諭へのメッセージ」

2024-02-16 16:45:30 | 読書感想文

 

 

2023/2/16

社会人経験もあり、1968~1997年まで小学校の養護教諭を務めた名越文代さんの散文集。

前半は歳時記と称して、養護教諭の目線で見る小学校の一年間をひと月ごとに軽い筆致でつづっている。

現役の養護教諭に向けられて書かれているものだからか、時代が変わっているからなのか、表現の問題なのか、うまく意味をつかめないところもあったが、当時の養護教諭がどういう気持ちで業務にあたっていたのか、共感できるところもある。

挨拶ひとつとっても気を遣いながら日々の生活を送っているところが印象的だった。

後半は、退職後、社会人学生として大学に再入学した話や留学の話、人形浄瑠璃の話など。

大津市の小学校に勤務されていたとのことで、県内の小学五年生を集めて琵琶湖の船上で行う「フローティング・スクール」の話。

地域の特色を生かした課外授業はどこでもあると思うが、いかにも滋賀県ならではという感じで面白かった。

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『マティスを旅する』(家庭画報特別編集)

2024-02-14 23:08:09 | 読書感想文

 

2024/2/13

マティス展の予習がしたくて、たくさんある入門書の一つを読んでみる。

最初に彼が「集大成」とした《ヴァンス・ロザリオ礼拝堂》の写真が並ぶ。

生誕から順番でもいいけど、わかりやすいところから挙げてくれるのは助かる。

ステンドグラスの双子窓《生命の樹》、陶版画《聖ドミニコ》、それらにはさまれるように主祭壇上の磔像とキャンドルスタンド。

建築や立体物のイメージはあんまりなかった。

上祭服までデザインしていた。ちょっと舞台衣裳っぽいなとおもっていたら、実際にそういう仕事もしていたそうだ。

磔像ってこんなに抽象化していいものなんだ。

絵柄はふんわりしていて、素人にはわかりやすくすごいとは言いにくい作品が多いけど、斜に構えず受け入れるところから始めたい。

昔から何となく好きだったものの、全然言語化できていないのと、いろんなことを忘れているので、少しでも取り戻したい。

まずはフランスの地理から入れなおさなくては。

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