遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

福島県立福島南高校『放課後クエストーセノオモエ彷徨編ー』(春フェス2023年度) 

2024-08-16 07:34:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

福島県立福島南高校『放課後クエストーセノオモエ彷徨編ー』

2024/8/15

たった一人で活動する文芸部生徒が、文化部の最大派閥である合唱部に活動教室を奪われ、あちこち彷徨っているうちにいろんな人とその思いに触れて気づきを得る話。

「滅びる(た)存在に価値はないのか」という、高校生があまり好きそうではない迂遠なテーマ設定に味わいがある。

歴史の栄枯盛衰に、休部になっていく文化部を重ねている。

「演劇部、つぶれた」という、肉声で聴くと悲しすぎるフレーズ。

生物部あたりを追加して、長篇にしたほうが題材的にあっているような気がする。

先生がOGだったとかで、元イモリヤモリ部が活躍するのもアリだと思う。

最後の方、急にみんないい人になってしまって唐突に感じる。

合唱部、色んな意味でゲス過ぎて改心していても飲み込みにくい。

1時間の制約はあるものの、目の付けどころはかなり好きなので、もうひと押しほしい気持ちになってしまう。

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群馬県立伊勢崎清明高校『(株)カンパネラ工業』(春フェス2023年度)

2024-08-15 00:24:46 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

群馬県立伊勢崎清明高校『(株)カンパネラ工業』

2024/8/13

職場体験中の高校生女子二人が控室で愚痴を言い続ける話。

会社の変な慣習イジリが楽しい。

「大谷のことばっかり言っているぴちぴちのスーツを着たソフトモヒカン野郎」という作中には出てこない社長。描写力が強い。

裏ではぐちぐち言っていても、社員の人が来ると機械的に姿勢を正す。古典的なリズムだけどおもしろい。

まさか朝の体操を見せてくれるとは。

実際見てみると、踊りに限っては意外と悪くないのかなと思ったりした。

似たもの同士の二人ではあるけど、温度差はある。

それに対して、ギスギスすることなくその違いを受け入れるのはよかった。大人。

お笑いのコントのような軽いノリの話ではあるけど、生き方を選べない就職間際の高校生の悲哀と重ねているところが本作の個性になっていた。

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岡山学芸館高等学校『ゴリコン』(春フェス2023年度)

2024-08-13 00:01:59 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

岡山学芸館高等学校『ゴリコン』

2024/8/13

数名の大学生が、渓流キャンプをしつつ、普段の研究対象であるヨシノボリを捕まえて調理したり、酒を飲んだりして親睦を深める話。

演じているのは高校生なので、自分たちのちょっと未来の姿を演じている。

大学生なのでお酒を飲むシーンや、ちょっと突っ込んだ恋愛のシーンもある。

同じ大学生でも研究対象によってふんわりした派閥ができているところがいいアクセントになっている。

どういう経緯でできた作品なのかは分からないけど、異性間の距離感覚や、専門用語を世間話に流用している感じが、ちゃんと等身大の大学生らしく見える。

あんまり飲み会のシーンをリアルにやられても困るけど。

大きな事件が起きるような話ではなく、人間関係のちょっとした変化を表現するような細部が見せ場になる作品だった。

あと、擬人化したトヨノボリがただただかわいらしい。

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福岡県立戸畑高校『私こしひかり』(春フェス2023年度)

2024-08-12 15:59:12 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

福岡県立戸畑高校『私こしひかり』

2024/8/12

美術の授業の補修で、学校祭の映像作品を作ることになった高校生四人が、一人しか部員のいない合唱部を題材に撮影を始める話。

タイトルは米米CLUBの曲名。

普段は無口、その無口に一目ぼれする生徒、映画好き、それらをテキパキと仕切る主人公。

わりとステレオタイプで個性のわかりやすい四人。

クライマックス一歩手前をプロローグに使う構成、嘘と恋愛を推進力にした進行で、ストレスなく見ることができる。

特に合唱部米田の独唱は、わちゃわちゃしていた周りの人間を急に静かにさせるだけの説得力がある。

設定の甘さや自分語り、状況説明でテンポを損なっていた印象はあるが、最後の合唱シーンで全部解決している感じ。シーン単体で強い。

最終的には創作の喜びみたいなものに着地して後味の良い作品だった。

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千葉県立松戸高等学校『ある海が見える丘の物語』(春フェス2022年度)

2024-08-09 14:18:37 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2023上演⑧千葉県立松戸高等学校「ある海が見える丘の物語」

2024/8/9

精神科医が不調気味の患者に自身の学生時代の体験談を語る話。

物語の大部分は医師の回想。1980年前後。

前時代的な不良が他校に嫌がらせしたり、コンビニ普及以前の個人経営店を舞台に選んだり、令和の高校生が全力で昭和後期の田舎の片隅を再現している。

不良チームのナンバー2が、今まで見た春フェス動画内で最も高校生に見えない。

見た目もそうだし声質も迫力がある。

今の感覚では非現実的なことでも、舞台を40年前に設定すれば組み込める。聞き手が犬として回想に参加するのもスマート。

笑えるシーンも多く、娯楽作品としての完成度が高い。

2023年の動画は総じて音質が悪いが、本作は安定している。

本作から大会3日目なので何かセッティングに修正があったのかも。

騒動のそもそもの動機がよくわからなかったのと、最後の展開が必要だったのかは疑問。

死ぬしてもほかに死因無かったのかな。

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山形県立置賜農業高校『獅子は踊る』(春フェス2023年度)

2024-08-05 18:27:55 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

山形県立置賜農業高校『獅子は踊る』

2024/8/5

郷土特有の舞踏「獅子踊」に携わっている高校生がどのように伝統を継承していくか思い悩む話。

主人公は郷土芸能に携わる一方、演劇部にも所属している。

部員が少なく、他の文化系部活が統合されて総合文化部になってしまう。

しかし、それぞれの技能を生かして、各活動を助け合ったり、演劇作品を作ったりする。

最初に少しだけ衝突はあるが、テンプレ的に文化伝統をバカにするような描写がなく、テンポがいい。

セリフや転換演出、話の展開では取っ散らかっている感が否めないが、郷土芸能という他では見ることのできない武器を活かして、唯一無二の作品を作っているのは確か。

特に伝統芸能ベースと思われる個々の体の使い方にひかれる。見ていてずっと心地よい。

主人公が最終的にどう折り合いをつけたのか、雰囲気で伝わるけどよくわからない。あえて言語化する必要もないのかもしれない。

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愛知県立松蔭高等学校『フートボールの時間』(春フェス2022年度)

2024-08-03 01:54:04 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2023上演⑤ 愛知県立松蔭高等学校「フートボールの時間」

2024/8/2

大正時代、フートボールに夢中になる女学生たちが、周囲の否定的な反応に苦しみつつ、遠い未来に思いをはせる話。

2018年の総文祭で最優秀賞になった演目。

そのときの上演映像を一度観ているので、話の内容は大体わかるものの、例によって録音環境から聞き取りにくいセリフが多い。

そのせいもあって舞台美術と衣裳の華やかさに目が行く。高校生がこの規模で準備を整えるのはとても大変そう。

袴姿の女学生たちがフットボールを楽しむ絵面のキャッチーさと、大正時代の露骨な女性差別。

表面的な楽しさと重いテーマが両立している。根本的に題材が強い。

差別克服の象徴としてのサッカーという捉え方もできるし、サッカーできるようになったくらいで差別を克服した気になるなよとという見方もできる。

考え出すと止まらないタイプの良い作品だった。

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神戸常盤女子高校『653-0824』(春フェス2023年度)

2024-07-29 13:36:47 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2024年上演5神戸常盤女子『653-0824』

2024/7/26

放課後の教室、校内ファッションショーに向け、生徒たちがウォーキングの居残り特訓しているうちに、一人が外国人技能実習生と付き合っていることがわかって言い争いになる話。

服飾系の話が昨年の春フェスから三作品目。

流行っているのか、前年の鶴岡中央『明日は救世主』の影響があるのかないのか。

ちゃんと演劇的に演出されたランウェイを見たいと思っていたのでよかった。

最後のほうに出てくる先生もかっこよかった。

高校生がああいう現場たたき上げ感のある先生を演じるのは大変だと思う。

異性装やトランスジェンダーの話にはならず、本作ではストレートな民族差別が題材。

差別意識と嫉妬がミックスしている友達。

迷惑な友達には違いないが、100%悪意とも言えず、単なる悪役を作らないようにする工夫を感じる。

観てるだけでイライラしてくる生徒たちから、だんだん愛嬌を感じるようになっていく話運びはうまくいっていたと思う。

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茨城県立下妻第一高等学校『TABOO』(春フェス2023年度)

2024-07-28 00:59:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2024年上演3茨城県立下妻第一

2024/7/25

高校の演劇部が、過労起因で療養している顧問の先生を題材にした作品を作って、葛藤しながら稽古を進めていく話。

あえて前説から始めるドキュメンタリー調の語り口が新鮮。

現実にもそれなりに似たような状況がありそうで、ちゃんと「どこまで本当なんだろう」と思える程度に臨場感がある。

忌憚のない言葉選びも強く印象に残る。

高校生に「教師は忙しすぎる」という内容の作品をやらせる構図はスリリングではある。

ただ、作中では学校という業界全体がダメなのか、この職場限定でダメなのかがよくわからない。

極端と思われるやりとりもあるので、たぶん後者だ思う。そうであってほしい。

真に受けるのもそれはそれで教師に対して失礼な感じもするので、そこまで普遍的な話として捉えるべきではないのかもしれない。

当然、高校生である彼ら彼女らに、慢性的な人手不足を解決する策はない。

それでも、第一歩として現状に「NO」を示すのは大事なことだと思う。

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北海道余市紅志高校『被服室の変』(春フェス2023年度)

2024-07-26 17:22:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

 

北海道余市紅志高校『被服室の変』

2024/7/25

学校祭準備中、課題作成に取り組む男子生徒と、脚本を書きたい演劇部の女子生徒が、たまたま同じ部屋を割り当てられて、世間話を始める話。

知り合いの男女ではあるが、恋人ではないし、恋人になりそうもない、友達ですらない、お互いに対してそこまで関心の無い者同士の気の抜けた世間話が楽しい。

女子のほうの、プロの俳優だったら逆にできないような、独特のイントネーションもだんだんクセになってくる。

舞台上で実際にカタカタとミシンを操作している様子が斬新。

男子が延々と服飾の課題をやっていることで、どういう方向の話かはわかる。

無意識の差別表現や、おそろしくへたくそな寸劇(でもシュールでちょっと笑った)で不和がウヤムヤになっていく様子に不快感がなく、シンプルでスマートにまとめられていた。

実際、彼が演劇部に入ったら、今の悩みについては結構克服できそうな感じはするけど、別のストレスは増えるんだろうなと思う。

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